第百十四夜 その怒鳴り声で旦那が着て 縁を結んだ 運だな
30秒考えて 先代のもとに行く
「先代 10代前半ならまっ更で、覚えも早く着崩れたら
自分から 着付師さんにお直しを頼みに行く
ひょっとして着物も始めてでしたら、手に余るのですが」
「どうした」
「順子さん 今日はゆったりで判り難いのですがボン・キュ・ボン
必ず着崩れますから立て直しが必要
30代のボン・キュ・ボンが自慢の奥様 見せびらかしに来る
まずは洋服からなのですが 初めてお会いした時も膝上丈
ミニでも行けるボン・キュのボン」
「順子殿 着物の経験は?」先代
「計二くんのお見合いに着て行ったのが初めて」順子
「着付けは?」計二
「着付けってなに?」との碌でもない返事をする順子
「どなたかに着せて貰ったのですよね」98%諦めた計二
「義母と須磨子さんのの二人ががりで あちこち縛られてタオル巻いて
立ってるだけで 疲れ果てたわ」
「順子さん それで純金OG会の付き合いも 貫いてきたと」確認したい香織
「そうよ どこでもドレス ボン・キュ・ボン で同級生は下を向いたわ
ほら、アカデミー賞のレッドカーペット ワンショルダーもタイトスリットも
ミニは26から着ていないけど 当時のドレスをまだ着れるわよ」
「確かに お子さん三人産んでのでその ボン・キュ・ボン・・・・・・」
格の違いを魅せられ 下を向く香織
協議が開始される
「料理は明さんが頑張って、半歩ずつでも前に行ってます
人には向き不向きがある と言い訳して逃げましょう」計二
「それで、通ればよいが」先代
「この10年 ボン・キュのボンを維持して 通してきたわよ」順子
「尾張流ですし 居候しているさよのさんも茶名餅 ぶん投げましょう
あの ボン・キュ・ボン ワンショルダーの深スリットでは手元が狂います
そもそも順子さんのお抹茶 巻き込まれ案件で家は尾張流
ウチノ流派とそっくりなのに落とし穴多数では 混乱します」計二
「そうするか」色々想定して 脱走を認める先代
「お二人は さよのさんとお姑さんに習う 見合いの口の代金でキチンと習う」
「香織殿は見逃すしかないの 順子殿と二人で谷上家で”練習”」
態と”お稽古”と言わず”練習”と言う先代
「香織さんには さよのさんの指導とか お先に の後で辛いかもですが
午前の料理もパスですし 谷上家で谷上のお姑さんに習うのが一番かと
こっちは茶名から先を目指す 最前線の戦場になりますから」計二
「二人は谷上家で別途のスケジュールで 練習で御願いする」と宣言をして
「少し昔話をして良いかな」先代
「俺の昔のやらかしは、やめてくだい」計二
「それは おいおいで パンチのアキラ 師匠は藪州流の料理人の板
じゃが、型に嵌らぬ男でな 流れの板になりおったが藪州流も離せない
呼べば来ておったようだが、5年ほど前から音信不通でな
うちは竹屋がおってくれるので、良いのじゃが 藪州流が探しておっての
アキラ殿がなにか知っておれば と」先代
「山本さん という方ですか?」香織
「そう 山本さんだ」
「明が言うには ダイビングの伝で フランスに渡り
若っかい仏人に口説かれて結婚したそうで、マルセイユの嫁さんの実家の
レストランでシェフに修まって☆を5個にして帰国する気がしないらしいです
とのことです」
「そうか やはりアキラ殿は知っておったと
それで 5年前に毎週のように藪州流の板場で 教えをしたのか
4年前 大学の卒業と共にアキラ殿は藪州流から姿を消した
お抹茶業界では噂になった
その後は 奈良と広島の流派の茶事での板の代打で聴こえて来る程度」
先代の話を聞いて 嫌な予感が押し寄せてくる香織
「パンチのアキラの表舞台への復帰 お誘いもあるからの
香織殿は 立って歩いて座って拝見まで しっかりと谷上家で覚える
方丈家も谷上家も尾張流 実家に隠れて習うなら谷上家へ」先代
「それは あちこちの流派から 茶事へのお誘いがあると言う意味ですか」
「計二 樫村の茶事でアキラ殿と二人で香織殿の両脇を固めたと聞いておる
嫁も連れて一緒に行くが良い 茶名から先への肥やしになる」
「歩美さんへのフォローは」計二
「一切するでない 岩山流 引き出し餅 出来るはずじゃ
分家の茶名餅も連れていけ 他流を見てくるのも良い勉強じゃ
山本さんの辺りから廊下で聴いておるよな 計二について行ってきなされ」
「師の仰せ 歩美さんと和恵さんは 現場ではフォローできませんが
現場に行く前に きっちりと教え鍛えを致します」計二
「うむ 計二に任せっぱなしではいかんからな
儂も出来る限りの手伝いはする」先代
ん? これひょっとして 料亭へのお誘いでも両脇ガード?
「計二くん 竹屋と瑞穂のお誘いがあるの 歩美さんと和恵さんも
一緒にご飯を食べに行かない」香織
「竹屋は家元邸への出前でしか食べていないから 行ってみたいですね
瑞穂は先日の見合い+祝言のお店 お礼も言わないと
明さんと 両脇は固めますから 行きましょう」計二
廊下の三人 婆は今の所 名前が出ていないので離脱していくが
歩美に袖を捕まれ 逃げれない婆 困った顔になるが
能面の椿姫並みの眉間に縦じわの和恵
一番若い歩美の眉間の縦じわは、もっともっとなクレパス並
婆の両脇をがっちり抱えて リビングへ入っていく
「順子姉さんは、参席をしないとのことで」棘を出しまくりの和恵
「そもそも俺の後ろ盾をしてくれた男ボンズの夢の詰まった順子さん
しかもド素人で家は尾張流 誘う根拠がないので誘いません」計二
「計二が言っておったが 人には向き不向きがある
順子殿には畳で正座は不向きであろう
まずはアキラ殿の料理教室に専念して、お子さんのお弁当を」先代
順子の離脱を確定させる二人
「順子さん汚い 順子さんの旦那さんも避け続けてきたお抹茶と聞いている
無理無茶無謀の三重奏を奏でる必要もないのかぁ どこかでツケは廻る
その時にツケを払って貰えればいい」と声に出る香織
「あ そのツケは和恵義姉さんが払う羽目になってるから辻褄は合うわよ
私と同期の大田が柏木さんの後妻に収まる 柏木さんは光宏さんの仲間
光宏さんはウキウキで運輸の家は中華ディープの総本山になったと」歩美
「そうそう 大田は柏木さん親子と相性抜群 大田が浮気しない限り安泰
大田も調理師の専門学校の仲間を呼んでの中華ディープ炸裂で浮気はしない
会場は八ヶ岳から兄貴の家になっている 縁と運を運んだお駄賃よ」順子
「うそ 太田が調理師と正引き出し餅と聞いて帰れと怒鳴ったのは順子姉さん」
「その怒鳴り声で旦那が着て 縁を結んだ 運よ」順子
まったね