カザロフ兵団副団長、選抜試験!その9
お疲れ様でございます
寒い日のおでん ―――
私の幸せの一つです
カラシが無い ―――
悪い冗談です
さておき、本日のキララ、どうぞ
その時、アランは悩んでいた ―――
どうしよう…
あんな化け物と当たったら、確実に負ける…
それだけならばまだいいが、下手をすると派手に死ぬ…
となれば答えは一つ、当たる前にわざと負けてしまえば良い
どうせ剣術の順位が一つ下がるだけだ
確か総合で上位5名が残ってしばらくポチ殿の副官になり、それから最終的に副団長を決めるって話だったはず
その5人の中に、俺くらい悪知恵が働いて口が上手いヤツなんていないだろう
あとは弓術と面接でその中に入ってさえしまえば、副団長は俺で決まりだ
アランの方針、ここで固まる ―――
その時、キュレーネは悩んでいた ―――
どうしよう…
このおっさんに勝っちゃったら決勝であの化け物と当たる…
夢幻なんとかでズバッと斬られて私が死ぬ未来しか思い浮かばない…
そうだ、その役はあのおっさんに譲って、ここで負けてしまえば良いじゃない
弓術なら得意中の得意、面接だって私なら問題ないはず
フフ…冥界に堕ちた私が副団長やってましたなんて知ったら、あのクソ上司どんな顔をなさるのでしょうか?
お会いしたらついでに私の反逆の逆十字架で貫いて差し上げましょう
クスッ、っと微笑んだキュレーネの方針、ここで固まる ―――
「それでは準決勝第二試合、アラン対キュレーネ!両者前へ!」
前へと歩み寄り、構えを取る二人 ―――
「では、始め!!」
ゴクリ…
二人の静かな立ち上がりに、息を飲む観衆達 ―――
だがその実は、どちらも相手の初撃をわざと受けてその場に倒れ込む気満々だったりする
先に異変に気付いたのは、アランだった
どうもおかしい…
槍の方が間合いが長いんだから、普通まず先手を取りに来るはず…待つ意味がない…
いや待て…ひょっとしてまさかコイツ、俺と同じ事考えてるんじゃないだろうな?…
そのまさかである
ジリジリとにじり寄り、槍の間合いに入ってみるアラン
するとどうだろう、キュレーネはジリジリと下がり始めた
ウン…やっぱり打って来ないね…
その一発で俺がダウンしちゃったら困るから?…
良いだろう、そっちがその気ならこっちはこうだ…
カラーン、と剣を捨てて挙手し、審判へと向き直るアラン
「審判、棄権を宣言します!私にこの方は打てません…」
「どういう事だ?」
「はい、キュレーネ選手と対峙している間、彼女には何度も打ち込む機会がありました。ですが一度も打ちませんでした…どういう意味かお分かりでしょうか?」
ざわ…ざわ…
観客達も隣同士で話し始め、騒めき始めた
「分からん。説明してくれ」
「彼女はもう、見抜いていたのです。私の足が既に、この戦いに着いて来れない事を」
そう告げるとアランはブーツを脱ぎ始め、破れた血マメや割れた爪で血まみれになった足を見せつけた
ああ、痛そう…
見ているだけでも痛々しい足を見せつけるアラン
「一つ打ち込まれる度に、私はこの足を踏ん張ります。優しい彼女にはそれが出来なかったのでしょう…情けをかけられた身で、どうして勝ち名乗りを受ける事など出来ようものか…私は既に負けているのです」
「分かった…では勝者、キュレーネ!!」
「「ワァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」」
「ウム…戦士たる者、向き合っていれば言葉以上に伝わるものがある。潔い男よ、アラン。騎士道に恥じぬ男だ」
そんなシグナスの言葉もあり、株を上げつつ決勝を辞退する事に成功したアラン
ちなみに地獄のマラソンで血マメが出来ていたのは事実だが、罠で捕えた鳥の血を足に塗りたくって大げさに仕立て上げている
なん…だと…?
ちょっとおっとりしているキュレーネはこの流れに着いて行けず、あれよあれよという間に自分の勝ちにされてしまった
それからガベルに肩を担がれ、家路に着いたアラン ―――
「おい、足は大丈夫か?」
「ガベル…お前とは長い付き合いだが…」
そう告げるとガベルの肩を借りていた腕を解き、トンと突き押すアラン
「まだ騙されているのか?だったら成功だな」
しばらく口をあんぐりと開けてアランを見ていたガベルだが、漸く事情を察し始めた
「…なるほど、お前シグナスと当たったら負けるからここで下りたって訳か。道理で言ってる事がおかしいと思ったぜ」
「あたぼうよ。下手すりゃ死ぬ勝負なんて誰がやるもんか。第一、俺が死んだらお前が寂しくなっちまうだろ?」
クッソこいつ…全然そんなつもりじゃないくせに…
疑い半分、友情半分で言葉に詰まったガベル
「そら、さっさと帰って飯にしようぜ。罠で獲った鴨がそろそろ食べ頃なんだ。今日は鳥のシチューにしよう」
ねむい…




