第十二話
大変お待たせしてしまい申し訳ございません。
(待っていてくださる方がいらっしゃるのかも疑問ですが…)
しかも短い…。
終盤まで今しばらく掛かりますが終わらせる気はありますので、最後までお付き合いいただければ幸いです。
あぁ忙しい。
だから何だって俺がこんな目に…っ! と一瞬思うが、もういい加減そんなことを思うのもアホらしくなってきたくらい、時間に追われまくっていた。
通常の手伝いに加えてさらに鷹司センパイのイベントの準備を任された上に、それらをすべて本人に報告しろとか無茶を言われて仕事が増えてしまっていた。「報告なんてメモとかでいいじゃん、めんどくさい」という意見は却下された。
何でも、「直接顔を合わせて詳細に迅速に聞きたいから」だそーだ。
しかし毎回毎回、報告しようと鷹司センパイを探す時には何故か狙ったようにどこにもいない。
またどこかでサボっているのだとしたら、今度こそ怒鳴るだけでは気が治まらないだろう。
あまりにも効率が悪すぎて、俺はいつも以上に苛立っていた。
(つーか殺す! 縛り付けて部屋に監禁して転がして置くっ!)
そんな物騒なことを本気で考えながら、バタバタと廊下を走り抜けていく。
「あんにゃろ~…どこ行きやがったっ。さっさとコレ渡してバイトに行かなきゃなんないっつのにっ!」
生徒会室にはもちろんいるはずも無く、職員室、保健室、食堂と出没しそうな場所を当たってみるけれどやはりいない。
英センパイに教えてもらった、掛けたくはなけれど仕方なく渋々と必要に駆られて嫌々ながらも(本当にスッゴイ嫌だったのだ)鷹司センパイの携帯を鳴らして見たが、反応はナシ。
(電源切ってまで何やってんだよアイツは~~~っっ!!)
ストレス度がMAXに達しそうになりながら、今度は人気がなさそうな場所を探していく。
渡り廊下から体育館へと続く道を走っていくと、何処からか声が聞こえたような気がした。
「まさか…ね」
嫌な予感が頭をよぎるけれど、気のせいだと思うことにしてそっと近づいていく。
今日はどの部も活動をしていないので、体育館の周辺には誰もいない。
ドアには鍵が掛けられ、中には入れないようになっているはずだ。
気のせい気のせい…―――というかそうでなくては困るんだけど―――と自分にそう言い聞かせて、誰もいないことを確認したらもう今日は諦めて英センパイに伝言してもらおうと勝手に決める。
「…ぁ、ぅん…っ…」
「…っ!」
小さいけれど、情事の最中のような声が聞こえて思わず硬直する。
それ以上進むこともなく、微妙に漏れ聞こえる声を耳にしながら、どうしようかと迷ってしまった。
声と人の気配からして、この角を曲がったくらいの場所に誰かいる。
(…どうしよう。アイツじゃなかったら邪魔しちゃ悪いよな…。いや! そもそも休み中とは言え校内でそーゆーことするのってどうなんだ…? あぁでもでもそうじゃないかも知れないし…)
オロオロとしながらそこでナニをしているのか想像してしまうけれど、このままここにいても状況は変わらない。
むしろ、ただの盗み聞きをする野暮なヤツになってしまう。
(自分が変態扱いされるのはさすがにイヤだ…)
うぅ~っと半泣き状態の心境だが、ヤツを捕まえなければ帰れない。
見つからないからと言ってバックレようものなら次の日が怖いことこの上なかった。
結局は我が身可愛さ故に確かめるしかない。
(ヘンなコトしてませんよーにっ!)
祈るような気持ちでそっと壁に身を寄せ、音を立てないように様子を窺った。
「――――ッッ!!」
思わず悲鳴を上げなかった自分を褒めてやりたい。
壁の向こう側で見たものはとても信じがたいものだった。
弛緩したようにだらしなく壁に寄りかかり、足を絡ませるようにして抱き合っている二人の生徒がいた。
一人は全く知らない男子で、可愛らしい顔に恍惚とした表情を浮かべている。思わず見てしまったこちらが恥ずかしくなるくらい色気を振りまいていて、その扇情的な雰囲気に寒気が走った。
(気持ち…悪い…っ)
俺はたまらず吐き気を覚え、すぐさま顔を背けてしまった。
口を手で押さえ込み上げる悪寒に耐えていたけれど、一向に治まる気配がない。よろめきながら壁伝いに身体を移動させ、少しばかり離れた場所で座り込んでしまった。
「何なんだよ、あれ……っ」
ただの情事の最中などでは無かった。
いいや、その方がまだマシだったと思う。
見たくはないものではあったが、それでもまだ、アレよりは現実味を帯びている。
「ぁ…っ」
ズキリと酷く頭が痛い。次第にガンガンと耳鳴りがしてきて、まともに考えられなくなってくる。自分でも自分の状態が分からず、泣き喚きたいような、叫び出したいような衝動に駆られた。
「だ…、め」
その人は俺のもの。
「いやだよ……」
誰も、触らないで。
「どうして――――?」
睦言の最中にいたもう一人の生徒は。
「なんで、俺じゃないんだよ……」
――――――桜華学院の制服を着た、シューランその人だった。