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第十一話


久々の更新の上、真冬なのに真夏の話……。

それってどうなのさ?と思いつつ、華麗にスルーしていただけると助かります。

気がついたらもう夏休み。


夏だ!海だ!リゾートバイトだッッ!!

年に一度しかない貴重な長期休暇!

こりぁもう、稼ぐしかないだろっ!!

今年は何がいいかな…。

煌く太陽の光をガンガン浴びながら海の家で接客?

それとも涼を求めてやってくる避暑地のホテルで給仕?

遊園地のプールで監視員とかなんかもやってみたいなぁ~…。

やっぱ交通費が掛かるのは嫌だし。

んー、やっぱ地元で探すかな。

常時入れている居酒屋のバイトも時給はいいんだけど、時間が短いからなぁ~。

朝か昼に出来るヤツで、時間に融通利くのがいいなぁ。

出来ればまかない付きで、交通費は支給されるかチャリで行ける場所で、時給がそこそこイイやつ!


「ねぇねぇ、凛ちゃぁん、次はコレやってねっ」

「………」


ってぬわぁんで俺は生徒会室(こんなトコ)文化祭の準備(こんなコト)をやってるんじゃぁあぁあ!!

ようやく減ったと思っていたところに渡されてしまったのは、これまた大量の資料の山。

しかも会計付き。

……俺、数学はあんま得意じゃないんですケド。

お金の計算は別だけどな!!

ちらと中身を見ると、予算案の計算とその項目内容のチェック……

それが本当に妥当かどうかの確認を金銭感覚のトチ狂った金持ちブラザーズ(会長&副会長)じゃなくて、ザ・庶民派である俺に回すなんて…

四柳院(しりゅういん)のヤツ、おそるべし。

仮にも会計担当だったんだな。と妙に納得してしまった(書記と会計は兼任だそーな)。

いや、一応はセンパイである人を呼び捨て&タメ口ってどうよ?と思わなくもないが、なんかもうそんな気が失せるくらいムカつくから気にしない。

いつまでたっても『ちゃん』付けしやがるし、止めろって言っても止める気配がまるでない(ってゆーか聞く気がない)ので、こっちもそれなりの態度になってしまうのだ。

その上腹立つ程アホらしい項目が多すぎる!


「センパイ、何なんですかこの『交遊費』ってのは! アンタが遊びたいだけなんだろっ、こんなバカなもんは認められません! しかも何すかこの金額!! ネズミーランドでも半日貸切るつもりですか!! そんなバカなこと考えてる暇があったらとっとと学院長からハンコ貰ってきてください!!!」

「えぇ~、だってみんなと仲良くしといたほうが、イロイロ便利でしょ?」

「んなもんは勝手に個人的にやってください! 予算なんか出さなくても、アンタと遊びたがる暇人はそこらにいっぱいいるんですからっ。しかもセンパイ、金持ちなんだからわざわざ貴重な予算使わなくてもいいじゃないですか!」

「だぁって、他人の金を使うのって楽しいじゃん?」

「…………」

「わっ、ゴメンそんな怒んないでよ~。しょうがないなぁ…じゃあ、公式的な名目があれば良いよね? 何か全員が参加出来るようなイベントとかさっ」

「…まぁ、それならいいですけど」

「じゃーホテルでも貸し切って…「予算はこれの1/2000しか出せません。わかったらサッサと院長室行って来てください」……ハイ」


俺は思いっきり睨みつけて静かに指示すると、センパイは大人しく渡された書類を持って行った。

まったく、本当に手が掛かる人だな。

センパイとはアレ以来、普通の先輩・後輩の関係を続けている。

こちらが戸惑っている暇など与えてなどくれないほど、至って普通に接してきたからだ。

夏休みに入って、結局補講の代わり生徒会の手伝いをさせられているから毎日顔を合わせなくちゃいけないし、俺だけ動揺してるのもなんだか悔しいからアノことは知らない振りをすることに決めた。

生徒会の手伝いと言っても拘束時間は思っていたより多くないし、よっぽどの機密事項は知らされないから専ら雑用ばかりやっている。それに何より会長お手製のお昼ご飯付きってのがかなり嬉しい!(これがまたちょー美味い)

急なバイトが入れば休ませてもらえるし、新しいことを覚えられるしで結構楽しんでやっている。

特に金の計算については…そんじょそこらの主婦よりウルサイんだぜ、俺。

悟られぬよう普通に作業しているように気をつけてはいるものの、四柳院にはしっかりバレていたみたいだ。

さっきからそ知らぬ顔で会計の仕事ばっか回してきやがる。

認められているようで嬉しいような、見透かされて悔しいような……

でもやっぱ何かムカつく。

俺は予算案と勘定科目を見比べつつ、つい四柳院を睨んでしまう。

当の四柳院はというと、俺の様子には全く気づかずにニコニコと笑いながら過去の議事録と最近の議会の内容を確認していた。

くぅ~っ、ノンキにヘラヘラしてんじゃねぇーーーっっ!!

逆毛の立った猫みたいに苛立ちを隠さずにいると、ふいに頭の上をポンと撫でられた。


「!」

「凛…少し疲れたろう?お茶にでもしようか」

「英センパイ…」


さらりと(なだ)める様に俺の頭を撫でるセンパイの手が優しい。

俺はうっとりとその手に委ねて、大人しくセンパイの声に従った。

何か、いっつもそうなんだよなぁ…英センパイって。

俺が腹が減ったりイライラしてたり不安になったりしていると、不思議と分かっちゃうみたいだ。

すぐに俺に声を掛けて来てくれて、やんわりと穏やかにさせてくれる。

自分が短気なのは分かっているけど、どうしても治せないんだよぁ…。


「英センパイ、ありがとうございます」


ちょっとでも感謝の気持ちが伝わるように笑ってみせると、英センパイは満足げに微笑みを返してくれた。

やった、またラッキーなもん見ちゃったな。

英センパイは仕事中は無表情か静かに怒っていることが多い。

まぁ怒らせてる原因は…あの二人しかいないんだけどね。

他の委員会のヤツらが来ても常に冷静にしてるし、ここにいるメンバー以外の人間がいたらまず表情が窺えない。

だから、俺にまで笑顔を見せてくれるっていうのは、それなりに気を許してもらえているような気がして単純に嬉しい。

英センパイとソファに並んで座って、ゆっくりとお茶を楽しんでいるとガチャリと扉が開いた。


「あぁーズルイ。何二人だけいちゃいちゃしてんの!? 僕がこぉーんなに頑張って働いてるってゆーのにっ」


学院長室から戻ってきたセンパイが開口一番に不満を口にする。

誰が働いてるって!?

しょっちゅう隙をみてはどこかへ遊びに消えていくクセに!

ムカっときた俺に気が付いたのか、英センパイは俺の頭を抱き寄せて冷ややかにヤツに視線を向ける。


「ほぉ…誰が頑張っているって…? それじゃあもっとキリキリ働いてもらおうか。お前が持っているイベントの準備、全部任せたからな」

「なっ、ちょっ、そりゃないだろ英!」

「もちろんやるよなぁ…? じゃないと…」


英センパイは含みを持たせて悠然と笑みを浮かべると、そっと俺の頬に手のひらを滑らせる。

ふっと耳元に吐息を吹き返られて、くすぐったくて思わず肩を(すく)めると鷹司センパイがグッと噛み締めるように英センパイを睨んでいた。

…?

しかし、すぐに諦めたようにため息を零す。

この二人にしか分からないやりとりが終了したらしい。

今回は(も?)鷹司センパイが負けたようだった。


「ちっ、仕方ないね。ねぇ叶芽、僕の分も早くお茶出してっ!」

「えぇ~…なんで僕が……………………………………………………すぐやりマス。」


視線で脅されて渋々と室内の簡易キッチンへと向かう四柳院を尻目に、鷹司センパイは不機嫌さそのままにドカッとソファへと腰を下ろした。


「英センパイ、イベントって何のヤツですか…?」

「ん? あぁ、キミは去年は参加してないのか。文化祭の前に生徒たちのモチベーションアップと交友関係の強化を(はか)ると称して生徒会主催のイベントを毎年やっているんだ。今年は肝試しだったか?」

「そぉだよ。こうなったらとびっきりのお化けを用意してやるっ」


目が据わったまま不敵に笑う鷹司センパイに、英センパイは呆れたような苦笑を浮かべた。


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