表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サザンクロスの花束を  作者: かのえらな
プロローグ【重い思い出】
4/13

男達と兎達①

「この道まっすぐの突き当りで・・・」


  都内繁華街、飲食店が立ち並ぶ夜の街、場所は事前にラインで送られてきていた。


「駅前集合はどこ行っ―――」


 集合場所は急遽現地集合になり、急ぎ足で向かってる最中だったのだが


≪ドスッ≫


 突然の鈍い衝撃が肩を打つ。

驚嘆とともにたまらず後ろに後ずさった。

どうやら人とぶつかったようだ。


「あ!すみません・・・」


「ケータイいじりながら歩いてんじゃねーぞ!馬鹿野郎が!」


スーツを着た強面の男立っており、ごもっともな罵声に目をつむり頭を下げる。

相手は立ち止まることなく、その場から去っていった。


 一難去って


「・・・ッ!?」


 下げた頭をそのままに目を開けると

アスファルトの路面に自分のケータイが落ちていることに気づいた



「おいおいおい!まじか」


 また一難。


 まるで弱り切った鳥の雛を救い上げるようにケータイを救出する。

ご臨終だった。

画面はことごとく割れ現代アートのようになっている。


電源は入るし操作も出来るが所々液晶が漏れ、かつての鮮明さは失われていた。


「ぐぬ・・・ついてない。なんてついてないんだ・・・」



〘目的地まで、35ふ―――目的地に着きました案内を終了します〙


「GPSも逝ったぁ!」




―――――





「よし、揃ったな選ばれし戦士たちよ。」


 合コンの舞台は都内の飲み屋街『きっちり』、

店内はちょうどいい空調とほんのりと色気づいた柔らかい電飾で飾り付けられ

雰囲気をワンランク上の和風居酒屋へと昇華させている。


 当然値段もワンランク上だが、完全個室で靴を脱いで上がるお座敷の間は合コン受け間違いない。

らしい。


「何が戦士たちだよ。女子一人も来てないじゃないか!」


 時刻は6時半、駅を降りてすぐの居酒屋の御座敷に集いし男4人。

自分と蒼汰以外には同世代の男が2人『山下』、『河野』

とそれぞれ名乗り自己紹介がてら入店前に互いの挨拶と話は済ませていた。


 山下も河野も出会いを求め参加したらしく、愛に飢えているのに野郎だけの個室は不服のようだった。


「待ちたまえよ山下君、合コンは7時から、男だけ先入りするのには訳がぁある!」


「な、なんだって!?」


 飲み会前でテンションが上がってる蒼汰と山下の茶番をよそに水の入ったグラスに口をつけた。


 帰りたくない気持ちで来てしまったが、

正直今の自分が軽い男のような気がして駅を降りてからここまで後ろ髪引かれる思いだった。


「いいか、合コンは戦場、そしてチーム戦だ!これより作戦会議を始める!」


おおぉ、という男二人の歓声、


「大佐ぁ、具体的にはどのような作戦ですかー!」


 河野は少しめんどくさそうに蒼汰のノリに付き合っている


  【合コン】


 それは出会いに飢えた男たちが、本来出会うはずがなかった異性との交流し

さらなる発展を目指し持ち得る話術を駆使し狙うハートを射止める人生のプレゼンテーション。

あわよくばそのまま夜の大運動会をも狙う、総合異種格闘技大会である。


そんなコロシアムの会場に理性のない男達をを野に放てば当然生まれる


 『美女争奪戦』


 そんな暴動が起ころうものなら飲み会はおろか、仲間割れによるみじめな姿を意中の相手晒し、

雄の両者が怪我をしてお通夜のような悲惨な会合で幕を閉じかねない。


だが今回の飲み会は幹事。箕島蒼汰

妙案による奇策が今宵の夜会に旋風と感動を巻き起こさんとしていた。


 「いいか、よく聞いてくれ。今回の合コンは可愛い子ばかりだという情報が私の耳に入った!。

そのため好きなタイプの子がかぶる可能性がある!そこでだ!

この和風の居酒屋をキャンプ地とし諸君等には心して任務にあたってほしい!」


「もっていぶってないで早く言えー」


 河野の野次が右から左に飛んでゆく。


こうして慰めの場を作ってくれたのはありがたいがもったいぶってるどや顔に少し腹が立つ。


「・・・いまこのテーブルに何がある?」


「えーと。箸と、お冷と、メニューと、おしぼりであります。」


 どこぞの軍兵のような問いに山下が素直に答えた。


 「おしい山下君!実はこの居酒屋は昔から割り箸を使っていない。

なぜなら箸置きを昔から使っているだ!、

見たまえ、人間に理不尽に虐げられその背に箸という名の罰を与えられた無垢なるウサギの姿を!

そして今回この箸置きウサちゃんこそが我らの夜戦の明星と心得よ!」


 蒼汰はスケールを大きく話したが、内容は単純にして明快なものだった。


  作戦名【ウサちゃん大作戦】


 居酒屋で事前に用意されている箸置き、

この居酒屋では動物をモチーフとした陶器の古風ある箸置きが人数分並べられ

男性側の席に4匹、女性側の席に4匹ちょこんとうつぶせに寝そべっている。


 当然、男性側と女性側が向かい合わせに座るのが一般的な合コンの基本。

そこでトークを進めていく中で好みの子がいたらその子の方向にウサちゃんの頭を向けるのである。


 そうすることで、男側は女性同士の取り合いがなくなり紳士な対応をしながら有意義な飲み会をすることができるというものだった。


 さらに男同士の怪しまれるお手洗い連れション

通称【トイレミーティング】の必要はほぼなくなりあるとすれば好きな人が被った時のみとなる。

会話をせずとも意思疎通が出来ることから

 さながらスパイの暗号のように場の雰囲気を悪くすることなく互いの利益のために協力できるのである。


 一通りの説明を受け、くだらないながらもあまりに有効な手段に樺月は感心せずにはいられなかった。



 「説明は以上!今夜は個人種目じゃない、チーム戦、団体種目だ!。夜の個人戦に向けて

精一杯、樺月を慰めようじゃないか!」


「完全に今思い出してとってつけたろ・・・」



 こうして、男たちの長い夜が始まる。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ