第28章──真堕羅のオロチ復活Ⅱ
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奥へ奥へと進むと、ただでさえ不気味な堕羅の国は、そこから先に進みたくないほど気味が悪くなっていった。
「天甦霊主様…この霊気は?」
「間違いなく真堕羅から漏れている霊気でしょう…」
「こんなおどろおどろしい霊気を纏った化け物が本当にいるのですか?」
「真堕羅は長い長い年月封印されていた特殊な場所。その真堕羅にある深い穴の中に閉じ込められていた妖蛇の邪気は、少しずつ少しずつ漏れ出し、やがて真堕羅に蔓延したのでしょう。その真堕羅の封印が破られた今、邪気は堕羅へまで流れ出しこのような有様に…」
「……。このまま進むのですよね?」
「もちろんです。そのためにここまで来たのです…」
「すみません…野暮なことを…」
「そろそろ奴らも私たちに気づくでしょう。どう出てくるか分かりませんから用心して進みなさい」
恵栄文女之命は天甦霊主の宿った霊刀静丸をしっかり握りしめて真堕羅へと歩を進めた。
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「何者かが近づいている──辰夜代よ…もう少しで真堕羅のオロチを自由に操れるようになる。それまでこの悍ましい霊気の持ち主を食い止めておくのだ」
「承知いたしました。手懐けていたあ奴を使って必ず………グフフッ…」辰夜代は真堕羅にある石牢に幽閉している化け物を柵越しに覗き込んだ。「よいか…まもなくここに我らの邪魔をしようとする奴が現れる。蚣妖魎蛇様がオロチを完全に操れるようになるまで、そいつを食い止めるのだ──よいな…?」化け物はこっくりと頷き立ち上がった。
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「くれぐれも油断のないようになさい!」真堕羅の入り口付近まで来ると、霊刀静丸に収まった天甦霊主が文女之命に伝えた。
「はい!」文女之命はしっかりと剣を握り、真堕羅の奥へと進んでいった。奥へ奥へと進むにつれて重く不気味な霊気が強くなってくる。やがてその霊気の源が遠くに見えた。
「天甦霊主様、あそこに奴らが…」文女之命は、それでも足を止めずに進み続けた。
「来たか。もういいだろう…さぁ、思う存分暴れてこい」辰夜代は柵を開け化け物を放った。
「文女之命よ…霊気はまだ抑えておきなさい。相手の力を見極めるのです…」
「分かりました天甦霊主様。では…行きます」文女之命は今一度霊刀静丸をしっかりと握ると、化け物めがけて突き進んでいった。