第25章──真の支配者Ⅰ
真の支配者
Ⅰ
「私もバカだった、最初からこうすればよかったのだ…」
「本当にコイツと一つに?」
「そうだ、コイツの力を手に入れてやる…ぐははは」蚣妖魎蛇は渦を巻く穴の中を覗き込んだ。深い闇の中で、鬼灯ような真っ赤な眼だけが不気味に光っている。「見ていろ辰夜代、真堕羅のオロチ復活は即ち、私が真の支配者になることを意味するのだ!」その姿を蜈蚣と蛇に交互に変えながら、蚣妖魎蛇はオロチの待つ深い深い穴へと消えていった。
Ⅱ
一松譲二刑事は、錫の口から飛び出してくる話の内容に戸惑うしかなかった。
「刑事さん大丈夫?まだ序盤なのに目がヨロヨロ泳いでるよ…」
「だ、大丈夫…君たちは僕たちとは違う特殊な力…霊能力がある。それはただ幽霊が見えるというようなありきたりの力ではなく、自分の魂をも自由にできると……まぁそういうこと…だね…?」
「まぁ、俗にいう幽体離脱ってやつね。これが可能になることで、幽霊になってどこにでも行けちゃうわけ!」
「し、信じられないのはその後の話だ…。どこにでもの行き先が天国とか地獄だって聞こえたけど?」
「うん、そう言ったの。確かにそう言った!因みに何かの間違いで幽体離脱しちゃった人でも、行動範囲は自分の肉体の近くをウロウロする程度だよ」
「僕をからかっているとしか思えない…」
「だから………最初に言ったでしょ!…全部本当のことだって…」
「あ~ゴメン…。ちゃんと受け止めるから続きを聞かせてくれ」一松は慌てて謝った。
「…たとえば私の場合、幽体離脱をしたら体が軽くなって肩のコリがなくなるのをハッキリ感じるの…肉体から離れることで重力や痛みから解放されるからよ。でも舞子さんはその程度じゃない。もっとスゴいの………それはね…」
「まさか…幽体離脱することで完全な肉体の魂になるとか…!?」
「おかしな表現だけど正解よ!」錫が大きな目を向けてそう言うと、一松は右の手のひらで自分のおでこを〝パチン〟と叩いて呟いた。「そうだったのかぁ…」