第24章──出雲大社Ⅲ
Ⅳ
「まだ文字替えは中途半端のままだけど、出雲の神殿という場所が特定できたんだから、これだけ分かれば充分よ!おそらく扉の中に剣が隠されているはず」錫は得意げだ。
「それはいいけど、スン…どうやって三十分で行って帰れるのよ?」その浩子の質問に答えたのはいしだった。
「可能です…前にもやりました。ご主人様と秩父の和銅遺跡に行きましたですけん」
「そっ!…幽霊になって行くのよ」錫はニッコリ笑ってサラリと言った。
「そ…それなら時間もお金もかからないわね…」浩子は顔を引きつらせて笑った。
「んじゃ、浩子は急いで智信枝栄殿になってね。それから私を幽霊にするのも忘れないで」
「はいはい…。まったくスンには驚かされるわ…ふふっ」
肉体から抜け出した錫と智信枝栄は、いしの背に乗ると、一路、出雲大社へと向かった。到着までほんの数分だ。
「もう着いちゃった…。今度から旅行はこれで行こうか!?」
「もう…スンったら、冗談はやめてよ」
「てへへっ…。それにしても懐かしい」錫は出雲大社の境内をぐるりと見渡した。
「物見遊山じゃないのよ。のんびり見てないで確かめましょう──剣があるかどうか…」
「うん…錫ちゃんの予想だと、ちゃんと見つかるはずなのだ」
錫たちは出雲大社の本殿へと入り、大国主命の鎮座する御扉の前で立ち止まった。
「幽霊の特権…御扉を開けないで中を覗けること!…ドキドキするわぁ~」
「逆に幽霊は御扉を開けられなけどね…ふふっ。さっ、入りましょう」錫たちは御扉を通り抜けて入っていった。
「どう…スンの予想は的中?」
「う~ん…おかしい………無い…。確かだと思ったんだけどなぁ…」
「そうなると、やはりまだ並び替えていない文字に答えが隠されているのでしょうか?」
「うん……浩子、いし…ゴメンね…。フライングしちゃった…」錫はうなだれて謝った。
「気にしない気にしない。楽しい小旅行ができたじゃない!」
「そうですけん。それに間違いを一つ一つ潰していくことで、剣に近づくのですから」
錫は二人に励まされながら、すごすごと引き返した。