第33章──それぞれに…Ⅳ
Ⅳ
その日は香神ミツの誕生日だった。
ミツのリクエストは寄せ鍋だ。鈴子は夕方から仕込んで腕を振るった。
「お誕生日おめでとうございますお母さん。また一年楽しく過ごしてください」
「おばあちゃん…長生きしてね!」
「みんなありがとね…まぁ、死ぬまでは生きるさ…ふっふふふ…」相変らずのミツだ。
「グツグツいってきたわね」鈴子が土鍋のふたを開けた。
「お──!これはこれは…鈴子、早くビールだ」
「わ──っ!美味しそ~っ…いっただきまーす!」龍門も錫もミツの誕生日の祝いより一瞬で気持ちがそっちにイッた
待ちきれない錫が箸を鍋に突っ込みかけたその時、着信メールの音が流れた。鍋で踊っているお目当ての具を睨みながら錫はメールを開いた。
「あっ、いとこの静姉ちゃんからだ…読んでみるよ」
〝スーちゃんお久しぶり!
私もママになったよ。
元気な男の子なのだ──可愛いでしょう!
名前は〝保〟だよ!
いつでも遊びに来てねぇ~
鬼塚静香より〟
「…だってさ。写真も届いてるよ──ねぇ、見て見て…ホントに可愛いよ!…保君かぁ…」錫は何かに思い当って、ふっと宙を見つめて考えた。
──「保……鬼塚……保…………保…鬼塚………ん?」もしやと思った錫はチャクラを開いて写真を見た。
「ああ──────っ!この子だわ!」赤ん坊の頭にはちっちゃな角が二本〝ちょこん〟とついていた。
鬼塚保──きっとこの子は錫を慕ってくるだろう。
それはどこかの神様のお茶目な悪戯のせいなのだ。