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第33章──それぞれに…Ⅱ

 Ⅱ


「なんだって──!!?…お前本気で言ってるのか!?」

「こんなことジョーダンで言えるわけないよ…」綿は顔を赤らめて小声で答えた。

「し…しかし…。そんなこと…」今までゆったりしていたいしは、急にうろうろと落ち着きがなくなった。


 〇


 信枝を訪ねた綿は、自分の主人になってくれとストレートに伝えた。信枝の返事は、即座(そくざ)に〝いいわよ〟だった。けれど一つだけ条件を言い渡された。

「私だって女よ。あんたがどんなに()()()()()()()ちゃーんと気づいていたわよ。人間だって狛犬だって同じだよ──きちんと向き合っておいで!」

「はい……。でも……もしも断られたら…」

「なーにぃ~…?いつもの強気の綿様はどこにいっちゃったのかしら?」これほどウジウジした綿は珍しい。「──とにかくあんたの気持ちを伝えるのが家来(けらい)になる条件だからね!」


 〇


「あたいは信枝殿の下僕(しもべ)になりたい──そんな信枝殿は雌狛(めすこま)の気持ちを…いいえ、女の心を分かってくれていて、そのことを解決することを条件に、主人になってくれる約束をしてくれた。これほどまでにあたいのことを理解してくれている信枝殿にますます(つか)えたくなった」

「そ、そうなのか…」いしはそわそわ落ち着かない。

「で…あんたはどうなの?返事を聞かせて」

「そ…それは………わたくしは……………」ますますそわそわするばかりだ。


「いし、ちゃんと返事をしなさい!」そこへ割って入ったのは錫だった。立ち聞きしていたようだ。

「ご主人様!」いしはバツが悪そうに錫を見た。

「ごめん──さっき帰ったんだけど、疲れてるせいか、チャクラのコントロールができなくて聞こえちゃったの…」話の内容を聞かれたとあって、ますますいしは気まずい。「煮えきらない家来の代わりに主人の私が返事をするわ!」錫はクッションを抱えて自分のベッドに座るとニッコリ笑って綿といしを交互(こうご)に見た。

「綿──返事はオッケーよ!」

「ご、ご主人様!」いしのそわそわが二倍速になった。

「文句があるの?あんただって本当は好きなんでしょ?──綿のこと!」

「それは…その…」ついにそわそわ三倍速だ。

「女の綿が勇気を出して告白したのよ。男らしく自分の気持ちをしっかり伝えなさい」

「はい…わたくしは…わたくしは…」もう何倍速か分からない。

 綿はこの時やっと人間の心理を理解できた。愛しているはずの(しゃく)()(のみこと)のことを、どうして信枝が〝ばかばか〟と言っていたのかを──。

「いし──うじうじしてたら勘当(かんどう)だよ」()えきらないいしに錫は(かつ)を入れた。

「それはなりません、それは…。分かりました。男になりますけん」いしは勇気を出して本心を伝えた。

「綿──いつも火花(ひばな)()らしていたが、わたくしもお前が気になっていた。お前のような狛犬は他にいないだろう…。先に言わせてしまって悪かったが、改めてわたくしから言わせてくれ」いしはきちんとお座りして綿を見た。

「わたくしと結婚してくれ!」

「…………………はい!」

「うわぁ~~~~~~~やっっった──っ!勘当(かんどう)感動(かんどぅ)に変わったわ!」

「ご主人様…わたくしはこの綿と一緒になりましても、ご主人様への(ちゅう)誠心(せいしん)は変わりませんけん」

「分かってるわよ。でもさすが信枝だね──あんたたちを見事に引っ付けちゃうなんてさ」

「あたい、信枝殿に報告してきます!」

 こうしていしと綿はめでたくゴールインしたのだった。


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