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武蔵野国営ダンジョン

「ふぅ、やっと着いた。結構漕いだな。最近運動してて良かった。」

「そうだな。俺も前より体力ついた気がする。」


 三十分程自転車を漕いで武蔵野国営ダンジョンに着いた僕と翼は、ダンジョン攻略による自身の成長を噛み締めていた。とその後ろから少し遅れて四人が到着し、荒い息を吐きながら愚痴を溢す。


「はぁ、はぁ……お前ら最近運動してるとこ見てなかったのになんで俺たちより速ぇんだよ。」

「こちとらほぼ毎日放課後運動してんだぞ!?」

「ははっ、自転車の性能かな。」

「そうだな。自転車の性能差だ。」

「ぜってぇ違うだろ。なんか隠してんな?」


 む、鋭いな。まあもうすぐネタばらしするから怪しまれても別にいいんだけど、取り敢えずはまだ誤魔化しておこうか。


「まあまあ、もうダンジョンはすぐそこなんだしさっさと行こうぜ。」

「そうそう、細かいこと気にしてると禿げるよ?」

「ハゲへんわ!」


 そうして気を逸らさせつつ自転車をダンジョン前に停め、すぐ近くの受付にライセンスを提示しに向かった。


「すみません、ここのダンジョンに入りたいのですが。」

「探索者ライセンスはお持ちですか?」


 お、ここも綺麗な人だ。これ多分全部のダンジョンとダンジョン課の受付嬢が綺麗な人のみで構成されてるな。うちの国美人多いのか?まあ取り敢えず今はライセンス出さなきゃ。


「これで良いですか?」

「はい、問題ありません。ダンジョンの入口はあちらです。」

「分かりました。」


 受付のお姉さんに見送られダンジョンの入口へと向かうと、そこには僕の知るダンジョンと似たような洞窟があった。


「これが武蔵野のダンジョンか。」

「外見は似てるけど中身はどうなんだろうな。やっぱスライムとかなんかな。」

「あ、翼も受付終わったんだね。まあ詳しいことは入ってからのお楽しみってことで。」

「だな。」


 それから悠たちの受付が終わるのを待って、全員でダンジョンに足を踏み入れた。その瞬間、


[ステータスを獲得しました]


 久しぶりの声が響いた。それを聞いた悠たちは歓喜の声をあげている。


「おお!こんな感じなのか!」

「本当だったんだな!」

「早速ステータス見てみようぜ!」

「そうだな、どうやって見るんだ?」


 懐かしいな。僕もあれくらいはしゃいでたっけ。最近では慣れたものだな。


「「ステータス。」」


 僕と翼が皆の前で普段通りにステータスを開くと、それに倣って悠たち四人もステータスを開いた。


「おお、それでいいんだな。じゃあ」

「「「「ステータス。」」」」


 声に合わせ、それぞれの目の前に空中映像が浮かび上がる。



名前 神崎 悠

Lv 1

職業 【闘士(ファイター)

HP 25

MP 10

AT 20

MA 10

DF 10

MD 10

職業(ジョブ)スキル 『身体機能向上』

通常(ノーマル)スキル

魔法 

称号 《初級探索者》



名前 守山 春樹

Lv 1

職業 【盾士(シールダー)

HP 30

MP 10

AT 10

MA 10

DF 25

MD 15

職業(ジョブ)スキル 『不動座標』

通常(ノーマル)スキル

魔法 

称号 《初級探索者》



名前 久藤 涼

Lv 1

職業 【騎士(ナイト)

HP 20

MP 15

AT 15

MA 10

DF 15

MD 10

職業(ジョブ)スキル 『護衛剣術』

通常(ノーマル)スキル

魔法 

称号 《初級探索者》



名前 相原 虹介

Lv 1

職業 【魔術師(ソーサラー)

HP 15

MP 20

AT 10

MA 20

DF 10

MD 15

職業(ジョブ)スキル 『瞬間魔力回復』

通常(ノーマル)スキル

魔法 

称号 《初級探索者》



「皆どうだった?」

「創にはこれ見えてないのか?」

「うん、そこら辺のプライバシーは守られてるんだよね。他の人に見せる場合はステータスを見せるイメージで表示してみて。」

「そうなのか、分かった。」


 間もなくして周囲にも見えるようにステータスが表示された。それを見て創は首を傾げる。

 

 あれ?スキルは一つなんだ。四人ともそうってことはこっちの方が普通なのかな。もしかすると僕と翼のジョブは珍しいものなのかもしれないな。名前も悠たちのとは違って一般的じゃないし。となるとステータスにはまだ僕の知らない仕組みがあるのかも。


「創どうした?なんか変なとこでもあったか?」

「いや、ちょっと考えごとしてただけ。」

「そうか。で、創のはどんな感じなんだ?」


 お、遂にお披露目か。


「翼。」

「おう、やっとだな。」

「うん。」

「「ステータス。」」



名前 遊城 創

Lv 36

職業 【遊戯開拓者(ゲームクリエイター)

HP 720

MP 540

AT 540

MA 360

DF 540

MD 540

職業(ジョブ)スキル 『作成』『実装』

通常(ノーマル)スキル 『隠密』『精密射撃』

魔法 土魔法Lv3

称号 《初級探索者》



名前 桐生 翼

Lv 29

職業 【疾風決闘者(スピードプレイヤー)

HP 870

MP 290

AT 580

MA 290

DF 580

MD 290

職業(ジョブ)スキル 『縮地』『剛脚』

通常(ノーマル)スキル 『加速』

魔法 風魔法Lv2

称号 《初級探索者》



「「「「おお!」」」」

「ってなんでそんなレベル高ぇんだよ。」

「それはもちろん。」

「ダンジョン潜ってるからだな。」


 期待した通り四人が驚く様に満足しつつ、ダンジョン発生からの二か月間僕と翼が何をしていたか説明していく。


 ダンジョン発生の次の日に早速ダンジョンに入ったこと。その日から、ほぼ毎日学校付近のダンジョンでモンスターを狩りレベル上げをしていたこと。それ故に放課後はすぐに家に帰り遊びに顔を出していなかったこと。その他ジョブの説明等も詳しく話した。


 そして僕と翼の説明を聞いた悠たちは、


「道理で俺たちより体力ついてる訳だよ。」

「流石に土日の間殆どダンジョン篭もってる奴には勝てねぇわな。」

「てかダンジョン行ってんなら教えろよ。」

「そしたら俺たちも参加したのに。」


 と各々納得と抗議の入り混じった感想を述べた。


「いやぁ、特に話題にも出なかったから興味無いんだと思って。それに結構危険だからね。ダンジョンに着くまでの森で遭難する可能性もある。」

「あとはまだ正式に国が認めてなかったからな。あんまり大人数で行くと行動しづらいってのもあった。わりぃな。」


 実際誘おうか悩んだんだけど簡単に死ぬような場所に一緒に行こうとは言えなかったんだよね。翼は最初から覚悟が決まってたから一緒に行ったけど、本来国の御墨付きが無い状態では翼も連れて行くべきではなかったんだ。僕以外の皆には居なくなったら悲しむ家族がいるんだから。危険に飛び込むのは僕のような独りの人間だけでいい。


「ん、まぁそう言われるとどうしようもねぇな。実際こうして国から大丈夫って言われるまでは俺も結構びびってたからな。誘われても即行くとは言えなかったと思う。親にも止められただろうし。」

「俺もだな。ダンジョンって聞くと面白そうだけどモンスターと戦うって覚悟はそう出来るもんじゃない。殺す覚悟もな。正直普通にダンジョン入れてるお前らの度胸が凄ぇと思う。」


 そうだよな。普通の人はいくらモンスター相手とはいえ人型の生き物の命を奪うことやその時の感触には抵抗があるものだ。翼も完全に何も感じない訳じゃないみたいだし、最初から躊躇いも無く討伐が出来た僕が狂っているんだ。ゴブリンを初めて倒した時もレベルアップする喜びと疑問への思考しか頭に無かったもんな。やはり僕の精神には何か足りないものがある気がする。何処で捨ててきたんだろうな。まぁ考えてどうにかなるものでもないから今は後回しにしておこう。自覚してさえいれば普通の人のように振る舞うことは出来るのだから。


「まぁそういう抵抗もあると思うから、まずは僕たちが先導して案内するよ。安全面も考えてね。」

「そうだな。そういうことなら頼んだぜ、先輩。」

「うん。」


 時間も無限にある訳ではないから、半ば強引にだが話を切り上げて皆でダンジョンの中を進むことにした。



 探索を進めて少しすると、早速このダンジョンのモンスターに遭遇した。どうやら武蔵野国営ダンジョン一階層のモンスターは兎のようだ。まぁ兎といっても牙付きのどう見ても肉食の兎もどきなんだけど。


「ここはスライムじゃないんだな。普通にミスったら死にそうなんだが。」

「だね。僕たちだけならなんてことないけど悠たちは危ないかも。どれくらいの危険度かちょっと確かめてくるから悠たちをお願い。」

「分かった。創も大丈夫だとは思うけど気は抜くなよ。」

「ありがとう、行ってくるよ。」


 翼に悠たちの安全確保を頼んで、僕は一人兎もどきに向かって行った。一応念の為近接用のナイフと遠距離用の拳銃を両手に装備する。


「さてと、お手並み拝見といかせてもらおうかな。」

「キュイィー!」


 僕がある程度の距離まで近付くと、鳴き声と共に助走を付けて突進して来た。明確な殺意の込もった、とても真っ直ぐな突進だ。一回試しに受けてみたい気もするけど、ここで怪我する訳にはいかないもんね。手早く仕留めさせてもらおうか。


 軽く横へと移動して突進を躱した僕は、すぐさま拳銃の引き金を引く。頭部を狙った即殺の一撃だ。


 パァン!


「キュイッ!」


 放たれた弾丸は躱されること無く頭部へと吸い込まれ、そのまま兎もどきは動かなくなった。どうやら問題無く仕留められたようだ。


 速さも普通に避けられる程だし悠たちでも武器さえあれば戦えそうだ。イレギュラーな個体もいるだろうけど、そこは僕か翼なら余裕だろう。


「ただいま。」

「おつかれ。問題なさそうだな。」

「うん。すぐにでもレベル上げに入れるよ。」

「それなんだが……あいつら固まってるぞ。」

「ん?」


 翼に言われて悠たちの方を向くと、確かに口を開けて静止した四人がいた。首を傾げつつ目の前に行って声を掛ける。


「どうしたの?」

「………いや、今銃撃ってなかったか?」

「撃ってたけど。」

「そんな当たり前みたいに。それもスキルで作ったのか?」

「そうだよ。偶々作成可能アイテム欄にあったから。」

「さっきも思ったけど、お前のスキル反則じゃね?」

「ゲームで何を作るかは製作者の自由ですから。」

「そうなんだけどなぁ……理不尽だ。」


 悠は一人現実に打ちのめされてしまったので、残りの三人に先にこれからの説明をすることにした。


「さっき兎もどきと戦ってみて皆でも大丈夫そうだと判断したから、早速レベル上げを始めようと思う。今は皆武器を持ってないから僕が『作成』した武器を使ってもらうことにして、取り敢えずモンスターを倒すことに慣れてもらおうかな。」

「剣とかあるのか?」

「いや、刃物はナイフとカッターくらいかな。皆に使ってもらうのは基本的に打撃武器になると思う。それなら色々あるから。」


 そうして金属バットとスコップ、バールのようなものを並べた。


「どれがいい?」

「こんなかなら金属バットだよな。」

「俺は面広い方がいいからスコップかな。」

「じゃあ俺は軽めので……これバールか?」

「バールのようなものだよ。」

「バールだよな?」

「いや、バールのようなものだよ。アイテム欄にそう書いてるから。ほら。」


 言って実際にステータスの作成可能アイテム欄を開いて虹介に見せる。


「ほんとにそう書いてるんだな……」

「そう。だからこれはバールじゃなくてバールのようなものなんだよ。特に使う上では関係無いけど。」

「じゃあバールでいいじゃねぇか。」


 虹介に呆れられつつ、少し前に復活した悠に武器を見せる。


「おかえり。あとは悠だけだけど、どれにする?」

「そうだな。じゃあ金属バットで。」


 即決で悠が武器を決め全員の準備が整ったので、改めて一人一人を見渡し確認を取る。


「皆、心の準備は出来たかな。」

「いつでもいける。」

「俺も覚悟は決まった。」

「俺も大丈夫だ。」

「俺も。」

「そんじゃいつも通りに。」

「はじめますか。」

「「「「おう!」」」」


 それぞれが武器を握り締め、悠たち四人のレベル上げを開始した。斥候は脚の速い翼が、悠たちの安全確保は手数が多く柔軟に対応しやすい僕が担当し、ダンジョン内を滞り無く進んで行く。


 先程遭遇した位置から五分程進んだ所で、先を進む翼から声がかかった。


「創、あそこに五体くらいの群れがいる。」

「じゃあ一体ずつ分断するから悠たち四人でそれぞれ倒して。」

「分かった。」

「はいよ。」

「おう。」

「りょーかい。」


 僕は全員が戦闘態勢を取ったのを確認して、戻って来た翼と入れ替わりに群れの中心に向かって突っ込んで行く。あと少しで接触するという所で僕の存在に気付いた兎もどきが一斉に僕に向かって突進して来たので、一体ずつ躱して横から銃身でそれぞれ別方向に殴り飛ばした。四体より多い分は悠たちの方に回す訳にはいかないので突進直後の身体を空中で掴んで首を捻って倒しておき、完了と共に声を発する。


「そっち行ったからトドメはよろしく。」

「任せとけ!」


 狙い通り一人一人の目の前に転がった兎もどきに各々が鈍器を使ってダメージを与えていく。体勢を整える暇なく一方的に攻撃された兎もどきは間もなくして動かなくなり、四個の魔石を残した。


「倒した、のか?」

「俺がやったんだよな。」

「俺は感触がまだ手に残ってて気持ち悪い。」

「俺は割と大丈夫そうだな。この調子で行けそう。」


 やっぱり何人かは抵抗あるか。そこは数を熟して慣れてもらうしかないな。まぁ無理させることもないから一旦気持ちを整理する時間を設けようか。


「皆ゆっくりでいいから次行けそうになったら教えて。」

「それまでは俺らが安全確保しとくからよ。」

「悪いな、多少時間かかるかもしんねぇ。」

「俺も。」

「気にしなくていいよ。最初はそんなものだから。」


 悠と春樹は結構精神にきてるか。上手く割り切れるようになったら一緒にパーティ組んだり出来るんだけど。


「俺はちょっと緊張はしたけど普通にいけそうだ。」

「俺も結構割り切れてるわ。兎を狩ってると思うと微妙だけどモンスターならな。やらないと怪我するし。」


 涼と虹介は普通に大丈夫のようだ。この感じなら僕たちがいない時でも自分でダンジョン攻略しに行くだろうな。ちょっと心配だから出来るだけレベル上げさせておかないと。


 それから暫く悠と春樹が落ち着くのを待って先へ進み、次にモンスターに遭遇したのは十五分程歩いた時だった。今度は丁度四体だったので、先程と同じく四方向に分け、各一体ずつ倒してもらった。


 涼と虹介は一度目で慣れたようで、涼しい顔で武器を振っていた。そして精神面で懸念のあった悠と春樹だが、表情はまだ固いものの覚悟を決めてしっかりとモンスターに向き合っていた。恐らく時間はかかるだろうが、確かな克服の兆しは見えている。いずれは一緒にパーティを組んで戦える筈だ。


 間もなくして死体がダンジョンに吸収され魔石が残ったと同時、悠たち四人にとっては待望の声が響いた。


[レベルアップしました]


 来たか。


「おお!今レベルアップしたって言ってたよな!」

「俺にもそう聞こえたぞ。」

「やったな!」

「おう!」


 つい先程まで強張った表情をしていた悠と春樹を含め、四人全員が歓喜の声を上げた。


 複雑な気持ちとか色々あるけどやっぱりこの瞬間は誰だって気持ちいいよね。これをきっかけに少しは克服が進んでくれればいいんだけど。取り敢えず今は祝うのが先かな。


「皆、初レベルアップおめでとう。」

「ああ、レベルアップってこんな感じなんだな。」

「モンスター倒すのはまだ慣れねぇけど、これは気分良いわ。」

「やっぱこういうのがダンジョンの醍醐味だよな。」

「やる気出るよな。」


 うん、皆いい表情してる。この調子で今日のうちに五か六くらいまではレベルを上げておきたいところだな。その為に分かりやすい目標を教えておいた方がいいかも。


「嬉しそうで何よりだよ。この調子で次はレベル十を目指して頑張ろうか。」

「レベル十だとなんかあるのか?」

「まだ翼と僕しかデータが無いけど魔法を使えるようになる筈だよ。」

「それはロマンだな。どんな感じの魔法なんだ?」

「人それぞれ属性は変わるけど、基本は本当に初級の魔法かな。拳大の玉を飛ばすとかのよく見る感じの。それとレベルが十上がる毎に魔法レベルが一上がって、その分威力も強化されて行くシステムになってる。」

「そうなのか、それ聞いたらもっとやる気出てきた。もう次狩りに行こうぜ。」

「そうだね。時間も無いし進もうか。」


 それから再びモンスターを求めて探索し、見つけた瞬間に分断して倒すを只管繰り返した。結果として全員予定通りレベル五までレベルを上げることが出来た。


「そろそろ日も暮れて皆の親が心配するだろうから、今日はここまでかな。」

「そうだな。もう少しレベル上げしたい気はするけど家までの距離も結構あるから早めに帰んないとな。」

「ああ、今日一日でダンジョンの楽しさは良く理解出来たから、明日にでもまた来るさ。」

「よし、じゃあ帰るか。」

「おう。」


 という事で、来た道を戻りダンジョンの外に出た。その足で受付に向かい、行きと変わらず座っていたお姉さんに帰還の報告をする。


「全員怪我無く帰ってこれました。」

「お疲れ様でした。皆さんご無事で何よりです。」

「ありがとうございます。そういえばここのダンジョンは何階層まで探索が進んでいるんですか?」

「調査班は現在四階層まで探索を進めています。」


 お、僕と同じとこまで行ってるんだな。ソロの僕とは違って調査班は多分パーティを組んでる筈だけど、その割には思ったより進んでないな。まぁ僕程ダンジョンに篭っている人もあまりいないだろうし妥当なところか。う〜ん、もう少し情報が欲しいな。平均のレベルとかも分かるとモチベーションアップに繋がる。


「ちなみに何名程で探索しているんでしょうか。宜しければどれくらいのレベル帯かも教えていただけると嬉しいです。」

「そうですね。あまり詳しくは存じていませんが、レベル三十前後の方が十五名程だったと思います。」

「成程、貴重な情報をありがとうございました。」

「いえ、この程度であれば情報の公開は許可されていますので。是非今後目指す目標にでもしていただければ。」

「ははっ、そうですね。」


 実際は僕の方がレベル上なんだけどね。いずれ受付で調べられる様になる頃までこの情報は温めておこう。その方が面白いからね。


 そうして受付を離れ皆のもとに戻ると、悠が不思議そうな顔で尋ねてきた。


「創って受付のお姉さんと話す時緊張しねぇの?」

「特には緊張しないけど。逆に皆なんで緊張するの?」


 人と話すのに緊張なんて久しく感じてないんだけど。


「いや、綺麗なお姉さんって緊張しねぇか?ましてや初対面だし。」

「あ〜確かにね。僕の場合は話すことが好きなのもあるけど、特にそういう関係になれるとも思ってないからじゃないかな。そこら辺のことを何も考えないと受付が男の人の時と何も変わらないよ。あとは単純に慣れだね。」


 余計なこと考えなければそこまで大変なことじゃない。何かを求めるから色々気になって緊張してしまうんだ。


「そうなのか。俺にはまだ無理そうだな。」

「まあそういうのは社会に出てから沢山機会を経て出来るようになるものだと思うから、特に気にすることもないんじゃないかな。」

「それを既に出来てるお前は何歳なんだよ。」

「十六歳ですが何か?」

「中身おっさんの間違いじゃねえのか?」

「ヒドいなぁ。他人よりちょっとばかし色々経験してるだけだって。」


 悠たち普通の高校生は経験しなくてもいいことを色々と、ね。だから皆は一生経験しないまま幸せに生きてくれたらいい。なんの足しにもならないんだから。


「ほら、もう結構日も落ちて来たし急がないと家着く頃には真っ暗だよ。そろそろ帰ろう。」

「そうだな。よし、とばすぞ!」

「おう!」


 こうして自転車を全力で漕いで市役所付近まで戻り、そこで別れてそれぞれの帰路に就く。


「じゃあまた明日学校でな。」

「うん、じゃあ皆気を付けて。」

「おう。」

「またな。」


 ふぅ、今日は僕のレベルは上がらなかったけどそこそこ楽しめたな。多分明日もレベル上げに付き合うだろうから自分の分は土日かな。


「あ〜思いっ切り攻略進めるのが待ち遠しい!目指せ最速のレベル五十到達!」


 一人目標に向かって意識を高め、家までの道のりを走り抜けた。


 家に着いてからは特に普段と変わることなく諸々のことを済ませてベッドに入った。皆の安全の為に予想以上に気を張っていたらしく、横になった僕は間もなくして眠りに就いた。

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