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上限解放

一旦の区切りです。

 能力開発実験をした日から十日が経過した。予想はしていたけれど、レベルが上がるにつれて必要な討伐数も増えたこともあってまだレベル五十に到達出来ていなかった。いや、正確な原因はそうじゃないんだろうけど。というのも、


「もう十分経験値貯まってるはずなんだけどなぁ。四十九に上がってからいくら倒しても上がらない。なんか特殊条件でもあるのか?」


 つい二日前に最後のレベルアップをして以降、倍以上の数を倒しても一向にレベルが上がらなくなっているのだ。今までの傾向から考えるとレベルアップにはモンスターを倒して経験値を稼ぐ以外の方法がない筈だ。そう思って只管に倒し続けて来たのだが、全く上がる気配が無い。これはもう特殊条件があると考えるのが妥当だろう。


 いわゆるレベル上限解放クエストみたいなやつか?にしたってヒントが何も無いからなぁ。一番簡単な条件としては……やっぱり特別なモンスターを倒すとか?う〜ん、まぁ考えるより実際に動いてみたほうが何か変わるかもしれない。五階を細かく探索してみよう。




「なんっも見つからない!」


 あれから二時間走り回って五階のほぼ全てを見て回ったが手がかりは掴めなかった。ここまで来ると流石の僕も気分が落ちてくる。このままの状況が続くと今後のモチベーションに影響が出てしまいそうだ。


 ……ふぅ。一旦求めることをやめてみようか。正直そこまで焦ることでもないしな。多分僕と同じ壁にぶつかっている人はそうそういないだろうし。ここは初心に戻って純粋に楽しんでみよう。


「ここはダンジョンなんだし隠し通路とか無いかな?よくよく考えると六階に続く道もまだ見つけてないんだよね。」


 現状から予測するにその二つは同じである可能性が高い。隠し通路を進んだ先にレベル上限解放のための何かがあって、それを乗り越えたら次の階層への階段が現れる。大まかな流れはこんな感じだろう。とするならばやることは一つ。


「のんびり散歩でもするか。」


 持ち前のセンサーに任せてふらふらと五階を進んでいく。今回は戦闘は無しにして、気の向くままにキョロキョロと色んな所を見回す。


 最近はレベル上げに勤しんでばっかであんまり楽しむことを意識してなかったな。いや、それはそれで楽しいんだけどせっかくのダンジョンなんだから空気感も楽しまないと。


「ん?なんとなくだけどこっちに行きたい気がする。」


 歩き始めてまもないが、早速僕のセンサーが反応した。ふわっとした期待感に惹き寄せられ分かれ道の一つに足を踏み入れる。


 ここはさっき通ったけど、何か見落としてたのか?例えばここら辺の壁とかに仕掛けが………


「おっ、ほんとにあった。」


 意外にあっさり見つかったな。最初からこうしとけば良かった。まぁ見つかったのはいいことなんだし、細かいことは抜きにして早速いかせてもらうとするか。


 壁の下の方に、よく観察すると少しだけ違和感を感じる部分があるので押し込んでみる。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……


「うわっ、結構凄い音するなぁ。……まぁ罠って訳ではなかったみたいだから取り敢えずはいいか。」


 音が止んだので付近を見回して見ると、仕掛けの向かい側の壁に大人二人が通れるくらいの道ができていた。


「さて、ここからは何があるか分からないし気を引き締めてかないとね。」


 使い慣れた拳銃とナイフを『実装』して装備し、万全の警戒態勢で道の奥へと進んでいく。先に進むにつれて段々と道幅が広くなり、大体五十メートル程真っ直ぐ行った所でひらけた空間に出た。その奥には、見るからに何かあるというような扉がある。洞窟のようなダンジョン壁とはまた異なる、しっかりと組み上げられた人工的な金属製の扉だ。大きさからもそうだが、漂う空気からも重みと厚みが感じられる。


「やっぱ大事な箇所はこういうのだよね。見た目の特別感あってこそ辿り着いたって気持ちになる。あぁ〜テンション上がってきたぞ〜!よし!もうやっちゃうか!」


 流石僕、せっかく引き締めたはずの空気が一瞬で緩みまくっている。こんなんでこの先大丈夫なのかと言いたくなるが、性分なので仕方ないと割り切ろう。それに悪いことばかりでもない。動体視力も反射速度もボディコントロールも、思考速度もひらめきも、楽しい時は全部が研ぎ澄まされて下手に落ち着いているよりよほど実力を発揮出来る。つまり何が言いたいかというと、


「こういう時の僕は、全てにおいて調子がいい!」


 言いつつ僕は意気揚々と目の前の扉を押し開けた。




「これは、なんというかあれだな。総復習ってやつかな?」


 扉の先に待っていたのは、僕が今まで各階で倒して来た上位個体の群れだった。ちょっと大きめなスライム、ゴブリンジェネラル、トロールのユニーク種、オークジェネラル、そして最後にミノタウロスナイトがそれぞれ二体ずつの計十体だ。


「ちょっと多いな。ソロで戦うとなると少し手数が心許ない。とはいえ多いなら多いでメリットもあるしなんとかなりそう、かな?」


 モンスターを前に悠長にもしてられないし、こちらから仕掛けさせてもらうとするか。


「『実装』!……取り敢えずこれから!」


 ピンッ、カラカラカラ……ドオォォォン!!


 戦い方を組み上げる余裕を作るため手始めに爆弾から投げさせてもらった。せっかくの広い空間なのに範囲攻撃使わない手はないよね。


「次は、そうだな。まだ数も多いし長柄のほうがやりやすいよね。んじゃあバトルアックスで!……よっと、っっらぁぁぁ!!」


 気合を入れて雄叫びを上げつつ群れの中に飛び込んで行く。それに呼応しモンスター達も次々に攻撃を仕掛けてくる。


「グモォッ!」

「グォッ!」

「ガアァ!」


 ブオンッ!ドガンッ!ガンッ、ガンッ、ギィン!


 が、それぞれある程度サイズが大きいせいで、小柄な僕相手では上手く連携が出来ていなかった。


 対する僕は身軽なもので、武器を消して『空歩』で頭上を跳んだり、再び武器を召喚して斬りつけたりと、さながら曲芸のような無型の戦法でモンスター達の周囲を躍り回っていた。


「よっ、ほっ、おっらぁぁぁ!」


 タンタンッ、グルッッ……ザシュッ!


「……やっ、とっ、ふんっ!」


 タタッ、ザシュッ、ザシュッ、ザシュッ!


「いやぁ、数多いとやりがいあるなぁ。どの階のモンスターも反射で動けるくらいには戦って殆ど脅威にならないから気も楽だし。ほんっと楽しい!」


 でもさ、正直早くレベル五十が見たいんだよ。だから……


「そろそろ終わりにしちゃおっか♪」


 徐ろに僕は『実装』する。


「爆弾、爆弾、爆弾!」


 ピンピンピンッ、カラカラカラカラカラカラ………ドオォォォォォォォン!!


「グォォ!?」

「グモォ……」

「それと……これ、マシンガン!」


 ダダダダダダダダダダダダダダダダッッ!


「グガアァァァァ!」


 連鎖する爆発、壁のように迫る弾丸の雨、モンスター達の悲痛な叫び、そしてその全ての元凶である輝く笑顔を携えた戦闘狂。そこはもう、地獄のような空間だった。




「ざっとこんなもんかな?」


 ふぅ…と軽く息を吐いて、手元のマシンガンを消す。僕の目の前にはもう間もなく魔石になるであろうモンスター達の死体が横たわっていた。スライムに至っては跡形も無い。


 ……これは流石に興が乗りすぎたかもしれない。さっきまでの僕はきっと人に見せられないような顔をしていたんじゃないだろうか。以後、気を付けよう。


「それで、問題のレベルはどうなったかな?」


[レベルアップしました]

[レベル上限が解放されました]

[レベルアップに伴うステータス加算値が上昇します]


「お?………おおおおおお!」


 ついに、ついに、ここ最近上昇を止めていたレベルが再び動きを見せた。これで念願のレベル五十だ。


「そうだステータスは……!!」


 昂ぶる気持ちのままにステータス画面を表示する。



名前 遊城 創

Lv 50

職業 【遊戯開拓者(ゲームクリエイター)

HP 1000

MP 750

AT 750

MA 500

DF 750

MD 750

職業(ジョブ)スキル 『作成』『実装』

通常(ノーマル)スキル 『隠密』『精密射撃』『空歩』

魔法 土魔法Lv5

称号 《中級探索者》《単独撃破者(ソロプレイヤー)》《魔物虐殺者モンスタージェノサイダー



「よっし!ちゃんとレベル上がってる!……それとなんか名誉なんだか不名誉なんだか分からない称号増えてるな。まぁ別に困ることも無いだろうし今はいっか。取り敢えず素直に喜んでおこう。」


 目で見てレベルアップを実感したことで、最近溜め込んでいたモヤモヤが一気に晴れた。これでまた心置きなくダンジョンを楽しむことができる。それにさっき聞こえた感じだと今後のレベルアップでは今よりもステータスの加算値が増えるみたいだし、ますますやる気出るなぁ。


「今日はいい日だ。甘いものでも買って帰るか。」


 満足感に浸りながら先程入ってきた扉へと向かい、手をかける。


「あれ?開かない……」


 んん?ここ開かなかったら帰れなくね?それとも出口は別にある感じか。


 改めて周囲を見回してみる。


「あっ、これってもしかして…」

取り敢えずここまでが一章となり、二章はまた書け次第投稿する予定です。

面白い、続きが読みたいと思った方、投稿遅くても待てるよという方、よろしければブックマークや評価などしていただければ幸いです。

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