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7.敵国の皇太子がやってきた

 魅惑のもふもふには勝てなかった。


 フクロウのブランをもふってはいたけれど、鳥のもふもふと犬猫のもふもふはまた違うのだ。


 久しぶりにもふもふを愛でることができて満足した私だった。


 結局、一度目のマリエルとしての人生、日本人であったこと、二度目のマリエルの人生をやり直していることを洗いざらい吐かされたのだ。


「五歳の子供にしては大人びているとは思っていたんだよな」

「戦争を回避する方法などと言うからおかしいと思ったのです」


 この二人の前でうっかり口にしてしまったことを後悔している。


「お前の母親は魔物からクリュタリオンの皇太子を庇って命を落としたと言っていたな?」

「そうです」

「本当にそうだったのかな?」


 ラシードが顎に手を当てて考え込んでいる。豆柴の姿のままで。その様もまた可愛い。くるりと巻いた尻尾を触りたくなってきた。


「どういうことでしょうか?」

「クリュタリオンの皇太子は魔人だぞ」

「ええっ!」


 衝撃の事実だ! 一度目はベルンハルト皇太子と接点がなかったので、人となりは知らないが……。


「そのような話は聞いたことがありません! 魔人とは何ですか?」

「知らないのは無理もない。何せ魔人という事実を知っているのは本人だけだからな」


 クリュタリオン帝国の初代皇帝の皇后は魔神と人間の混血ハーフで、時々子孫にその血が遺伝するそうだ。


「魔人というのは魔物よりも力が強いし、魔力は桁違いだ。そんなやつが簡単に魔物に襲われるはずがない」

「でも、ベルンハルト皇太子は当時七歳ですよ」

「年齢は関係ない。あいつは俺に勝負を挑みにわざわざ竜の里までやってきたからな」


 ラシードが何故クリュタリオンの皇太子を知っているか、理解した。


 私はごくりと唾を飲み込む。


「どちらが勝ったのですか?」

「俺に決まっている。ボコボコにしてやった」


 ラシードは豆柴姿で偉そうに仁王立ちをする。そして私の膝に前足をかけた。尻尾がちょこちょこ動いている。


「お前は母親を助けたいんだよな?」

「はい。戦争回避かお母様を止めるくらいしか今の私には考えが及びません」

「俺に良い考えがある。任せろ!」


 そう言うとラシードはバルコニーに駆けていき、そのままドラゴン姿に変化して飛び去ってしまった。

「どこに行ったのでしょうか?」

「さあ、分かりません。それよりマリエル、マカロンのお代わりをください」


 猫姿のレイリさんがあざと可愛くおねだりをするので、私はため息を吐きながら呼び鈴を鳴らした。


◇◇◇


 ラシードの良い考えとはこのことか!?



 翌日、ラシードは客人を伴って私の下へやってきた。


 客人はなんと!


 クリュタリオンの皇太子ベルンハルトだった。


「お前か? 俺と勝負をしたいという無謀な輩は? ラシードの弟子だというが、まだ子供ではないか」


 さらさらの黒髪に澄んだグレーの瞳をした少年はまだあどけない。髪が長ければ少女と言っても通る美しい顔立ちをしていた。


 いや。貴方も子供でしょう? と心の中で突っ込みをする。


「拳で語り合ったほうが早かろう? お前らが勝負をして勝った方の言うことを聞くというのはどうかと思ってな。存分に戦え!」


 もしかして、ベルンハルトとの勝負に勝って戦争を止めるということか!?


 わははと腕を組んで笑っているラシードの頭をルリアがかじっていた。もっとかじってもいいわよ! ルリア。


「冗談ですよね?」


 隣で微笑んでいるレイリさんに尋ねる。


「本気だと思いますよ」


 くっ! 脳筋ドラゴンめ!


 私がラシードを睨んでいると、ベルンハルト皇太子に人差し指を突きつけられる。


「おい! 小娘。お前は何者だ?」


 ベルンハルト皇太子の偉そうな態度にカチンと来たが、淑女らしくカーテシーをする。


「お初にお目にかかります。ローゼンストーン大公が娘マリエルと申します。小僧皇太子様。いえ。ベルンハルト皇太子殿下」

「誰が小僧だ? ん? ローゼンストーン大公だと!? ではカルクシュタインの宮廷魔術師リゼロッタ・ローゼンストーンの娘か?」

「左様でございます」


 ベルンハルト皇太子は顎に手をあてて、私をじっと見る。


 目が合った瞬間、にやりと笑った。ぞくりと背筋に冷たいものが走る。


「ふ~ん。ラシードの直弟子でリゼロッタの娘か。面白いな。いいだろう。俺に勝ったらお前の望みを聞いてやろう」


 この皇太子は俺様系だな。

マリエルとベルンハルトの熱き戦いが始まる!?

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