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5.フクロウ? を手に入れた

 ラシードは毎日いろいろなことを教えてくれた。おかげで私の魔術の才能はどんどん開花していき、ポンコツの域から抜けた……と思う。


「日本語とかいう言語とお前の魔力は本当に相性がいい。これならポンコツと言われなくてもすむぞ」


 ポンコツは余計だ。ポンコツだけれど……。


 まさか魔力が逆に循環しているせいで、魔術が上手く使うことができなかったとは驚きだ。


 しかし、『ファイヤーブラスト!』じゃなくて『炎の爆風!』とか詠唱するのは、いまいち格好良くない。


「そろそろおやつにしましょうか」


 最近はラシードとルリアと遊ぶからと言って、両親から外出の許可をもらっている。


 エンシェントエレメンタルドラゴンと一緒であればということで、すんなり許可してもらえた。


 ソフィアが毎日軽食にとサンドイッチやお菓子をバスケットに入れて持たせてくれる。重いバスケットは五歳児には持てないので、私を迎えに来るラシードに持ってもらっているが……。


 エンシェントエレメンタルドラゴンはどんな物でも食べられるらしいので、ラシードとルリアは普通に私と同じ物を食べている。


 どんな物でもというのは怖いが……。


「ルリア、はいどうぞ」


 ルリアの口に一口大にちぎったサンドイッチを放り込んでやる。まだ小さな牙しかない口をもぐもぐと動かすと、ルリアは「きゅい~」と嬉しそうに鳴いた。


「ふふふ。美味しいのね」

「しかし、人間の食い物は美味いな」


 ラシードはサンドイッチをもぐもぐと美味しそうに頬張っている。


「ええ。本当に」


 ラシードの背後から白い手が伸ばされると同時に女性の声がする。


 ぎょっとして振り返ると、青銀の髪をした女性が笑顔でマカロンを頬張っていた。すごい美人だ。


「げっ! レイリ! 何でここに!?」

「お知り合いですか?」


 女性はラシードが知っている人のようだ。


「……俺のつがいだ」

「初めまして。いつもうちのバカ……じゃなかった。主人がお世話になっております。妻のレイリです」


 ラシードの奥様!? ということはルリアのお母さんだ!


 人間の姿をしているけれど番ということは、この方もエンシェントエレメンタルドラゴンなのよね?


 そして、ラシードのことをバカって言いかけた!?


 レイリさんは私に挨拶するとラシードの隣に腰を下ろす。


「お初にお目にかかります。マリエル・ローゼンストーンと申します」


 会社員時代のくせで懐から名刺を出そうとして慌てて手を引っこめる。


「よろしくね、マリエル。あら? マリエルの膝の上にいるのがうちの子供かしら?」


 二つ目のマカロンを手にすると、レイリさんは私の膝の上にいるルリアに目を留める。


「そうです。ルリアと名付けさせていただきました」

「きゅい~」


 ルリアはレイリさんに対して甘えるような可愛い声を出す。やっぱりお母さんが恋しいのかしら?


「おいこらっ! チビ。俺の時と態度が違うぞ」

「きゅい!」


 ルリアはぷいとそっぽを向く。


「そう。いい名前を付けてもらって良かったわね、ルリア」

「きゅっ!」


 ルリアは私の膝の上から動かない。せっかくお母さんに会えたのに。


「ルリア、お母様のところに行かないの?」

「きゅきゅい!」


 首を横に振るルリア。


「いい子ね。お父さんに似なくて良かったわ」


 サンドイッチに舌鼓を打ちながら、レイリさんはにっこりとルリアに笑いかける。


「でも、せっかくお母様に会えたのに……」

「一度親から放した子は自力で竜の里に帰ってくるというのが掟なのです。こうして親から子に会いに来るというのは本来は掟に反します。それなのに……」


 レイリさんはじろりとラシードを睨む。


「し! 仕方ないだろう。卵を落としてしまったのは俺なんだからな」


 なるほど。ラシードが落とした卵を私が拾ったというわけだ。


 それにしても、自然の掟は厳しいな。ルリアはまだ生まれたばかりなのに親に甘えることができないなんて。


「エンシェントエレメンタルドラゴンには帰巣本能があります。孵化すれば自然に帰ってきたでしょう。それにルリアがマリエルと一緒にいたいというのであれば、無理やり連れ戻すのは酷というものです」

「ぴぎゅ!」


 レイリさんの言葉に頷くようにルリアは相槌を打つ。


「マリエル、ルリアをよろしくお願いします」

「はい!」

「そうそう。ご馳走になったお礼をしなければいけませんね。マリエル、もふもふは好きですか?」

「好きです! 大好きです!」


 大事なことなので二回言った。


 レイリさんは頷くと、ぴぃと指笛を吹く。


 しばらくすると、白い鳥が飛んでくる。


 鳥は空から降下してくると、レイリさんの肩に止まった。その姿を見て私は興奮する。


「シロフクロウだ!」


 呼応するようにシロフクロウは「ホッホー」と鳴く。良く見ると羽角がある。確かシロフクロウには羽角がないはず。突然変異かな?


「このような姿をしていますが精霊なのですよ。わたくしたちは『伝書フクロウ』と呼んでいます。この子を貴女に差し上げましょう。ですので……」


 そこで一旦言葉を切ると、レイリさんはウィンクをして続ける。


「時々、お便りをください。そう、例えばルリアがどう過ごしているかとか……」


 要するにルリアの様子を伝えろと言うことだ。ラシードとやり方は違うが、レイリさんも子供が心配なのね。


「分かりました。この子は何を食べるのですか?」


「これを一日一粒与えてください」


 レイリさんは皮袋を取り出すと、中に入っている物を取り出す。翡翠のような宝石だ。


「きれいですね。宝石ですか?」

「精霊石です」


 精霊石!? 売れば高額の値がつく代物だ。なんとも贅沢な鳥……いや精霊だ。


「精霊石が無くなりそうになったら手紙で連絡するか、ラシードに言ってください」


 どうやら精霊石はこちらで買い求める必要はなさそうだ。大公家うちは貧乏ではないけれど。


「名前をつけてもいいですか?」

「構いませんよ。何という名前にするのですか?」

「ブランです」


 ブランはフランス語で『白』という意味だ。



 こうして思わぬ形でフクロウ? を手に入れた。

ホッホー!

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