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エピローグ

 青く澄み切った空の下、大聖堂に鐘が鳴り響く。


 神の御名の下、祝福を受けたベルンと私は盛大な歓声に包まれる。


「ベルン」


 私は隣にいるベルンに囁くように話しかける。


「何だ?」

「これって婚約式よね? まるで結婚式みたいなんだけれど……」

「俺は結婚式でも構わないんだがな。クリュタリオン皇族の中には幼くして結婚した者もいる」


 クリュタリオン帝国に限らず、カルクシュタイン王国でもそういった実例はある。


 今日のベルンと私はまるで花婿と花嫁さながらの衣装を着せられ、招待客は国中の貴族を集めたとか。


 おまけに夕方からは盛大な舞踏会が開催されるらしい。結婚披露宴か! と突っ込みたくなる。


 いくら大国の婚約式とはいえ、これではまるで結婚式だ。


「皇太子妃の教育はこれからなのに、気後れしちゃうわ。粗相をしたらどうしよう」

「アロイスの報告ではマリエなら問題ないと言っていた。まるですでに教育を受けているようだとな」


 ぎくりとする。一度目の人生で嫌々ながら妃教育を受けたが、まさかまだ身についているのだろうか?


 それよりアロイスからベルンへ報告がいっていたということは、皇宮に入った時から品定めされていたということだ。クリュタリオン帝国の諜報恐るべし!


「そっ! そんなわけないわ。アロイスの過大評価よ。オホホホ……」


 笑ってごまかしてみる。


「俺は初めてマリエと話した時から気づいていたぞ。其方には皇太子妃としての才覚があるとな」

「褒めすぎよ。私はもふもふたちとスローライフを謳歌したいのだから、引きこもり皇太子妃になるわ」

「分かっている。マリエが快適なもふもふスローライフを送るための準備はしてある」


 その時は何の事なのか、さっぱり分からなかったが、後日その意味を知ることになる。



 大聖堂の外に出ると、人々が空を見上げて叫んでいる。 


「見ろ! ドラゴンが三頭飛んでいるぞ!」

「あれは! まさかエンシェントエレメンタルドラゴン!?」


 空を見上げると、瑠璃色のドラゴンと白いドラゴンと小さなドラゴンが大聖堂の上を旋回して飛んでいる。


 エンシェントエレメンタルドラゴンの一家がベルンと私を祝福しているようだ。


「ラシードたちか。あいつら人前に姿を現して大丈夫か?」

「大丈夫だと思うわ。竜の里には誰も辿り着けないと思うから」


 竜の里といえば、『願いの洞窟』での願いは叶ったと思っていいのだろうか?


 第三次クレイナ戦役の立役者だと思われる貴族たちが捕まったのだから。


 クリュタリオン帝国の貴族は、『皇帝派』と『貴族派』に分かれているのだが、今回のローゼンストーン大公一家暗殺を目論んだのは『貴族派』の者たちだった。


 首謀者のアッシェンバッハ侯爵を筆頭に加担した貴族たちは芋づる式に捕縛されたという。


 驚いたことにカルクシュタイン王国にも共謀した者たちがいて、今頃彼らも捕縛されているはずだ。


 一度目の人生で両国間の関係を破綻はたんさせたのも彼らだったのだろう。


 そのせいで私のお母様は命を落とすはめになったのだから、しっかり罪を償ってもらいたいと思う。


 二度目の人生では第三次クレイナ戦役を回避することができた。これでお母様は命を落とさずにすむ。


 私はまだ親に甘えたい盛りなのだ。ベルンに嫁ぐまでは両親に思い切り甘えたい。



 エンシェントエレメンタルドラゴンが私たちの婚約式に現れたことで誰かが言った。


「皇太子殿下が皇帝になられた暁には、きっと平和な御世が続く」と――。

 


◇◇◇


 婚約式から二日後、私はベルンに誘われて皇太子宮の近くにある建物へと案内される。


 素朴な佇まいの建物は田舎の一軒家といった感じで妙に落ち着く。


「ここはどういった建物なの?」

「今は誰も使っていないが、皇太子妃宮になる予定だ」

「えっ!?」


 皇太子妃は普通皇太子宮で暮らすものではないのか?


 不思議に思って首を傾げていると、ベルンが優しい笑みを浮かべた。


「皇太子妃となった暁にはここに住むといい。好きな動物を飼っていいぞ。裏手には林があるから好きなキャンプもするといい」


 私が嫁いでくる頃には改装されているという。スローライフを謳歌したいという私の希望を叶えてくれようとしているらしい。


「皇太子妃としての執務は無理にこなさなくてもいい。まあ、後継者は生んでもらわないといけないがな」


 私がプルプルと身を震わせると、ベルンはおろおろとする。


「マリエ、どうした!? 気に入らないか? 皇宮の外に離宮を建てた方がいいか?」

「……バカね。税金の無駄遣いをしないで……」


 ここまでしてくれるとは思わなかった。


 ふいに俺様系男子が見せる優しさは案外萌える。


「気に入ったわよ。でも、改装する時は私にも相談してね」

「あ、ああ。もちろんだ」


 十六歳になったら私はベルンに嫁ぐ。ルリアたちと一緒にここで暮らすのだ。隣には愛する人になるかもしれないベルン。


 あと十年。その日が楽しみだ。

これで完結とさせていただきます。


最後までお読みいただきありがとうございました(*^▽^*)

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[良い点] 続きが!気になる!! こっから溺愛モードかな!? もふもふがさらに増えるかな!? 大好きな、幼女設定!ごちそうさまです!
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