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43.エリアーナ襲来

 エリアーナは明日早々にカルクシュタイン王国へ帰すそうだ。


 故国に帰ったとしてもラトレイアー子爵家はガサ入れされるので、母親とともに市井で暮らすことになるだろう。


 ちなみにベルンとラシードにガサ入れという言葉を使ったら、通じなかった。


 日本の刑事ドラマなどで普通に使われているが、そもそも隠語なのでこの世界にはない言葉なのだろう。


 ガサ入れとは、「公権力のもとで捜索すること」と説明しておいた。


 ラトレイアー子爵が連行された後、中々寝付けなかったので庭園を散歩している最中にベルンとラシードに出会ったのだ。


 二人はガゼボで何やら話し合っていた。ラシードは私がいるのに気づくと手招きする。


「おう! マリエル。どうした? 眠れないのか? うちのチビは一緒じゃないのか?」

「何か寝付けなくて。ルリアはもう眠っているわ。起こすのはかわいそうだから、そっと抜け出してきたの」


 夜行性のブランだけを連れて、ルリアたちは部屋に置いてきた。


「マリエ、座れ。今、温かい茶を持ってこさせる」


 ベルンは自分の隣を手でポンポンと叩く。隣に座れということだ。私は誘われるままにベルンの隣に座る。


「今日は疲れただろう? 茶を飲んだら部屋に戻ってゆっくり休め」

「疲れすぎると眠れないのよ」


 今夜はいろいろあって疲れたが、そんな時に限って眠れない。鞠絵だった時は興奮したり緊張すると眠れない体質だった。遠足や修学旅行の前は楽しみすぎて眠れなかったものだ。


「三日後には婚約式なんだろう? 早く寝ないと美容とやらに悪いんじゃないか?」

「ラシード様。美容に気を使っているのですか?」

 

 ラシードは寝る前にお肌の手入れをしているのだろうか? 男性も美容に気を使う人がいるものね。くどいようだが、人ではなくドラゴンだった。


「いや。レイリが『寝不足は美容の敵よ』とよく言っているんだ」


 ああ。レイリさんか。納得!


 ふいに近くの木陰ががさりと揺れる。


「誰だ!?」


 ベルンが木陰に向かって叫ぶ。誰かが潜んでいるようだ。


「わたしです。皇太子様。マリエル公女様。お願いがあって来ました!」


 ややあって、木陰から現れたのはエリアーナだった。


「其方か。遣いの者に部屋から出さないように申し付けたはずだが、どうやって? ああ、変身してきたのか」


 エリアーナは鳥に変身することができる。大方、窓から鳥に変身して飛び立ち、ここまで来たのだ。


 思ったとおり、エリアーナはまた姿を現した。何となくそんな予感がしていたのだ。


「皇宮への立ち入りは許しておらぬ。だが、今すぐ宿に帰るのであれば見逃してやる」

「帰りません! お願いです! パパに! パパに会わせてください!」


 ベルンが咎めるが構わず、エリアーナはそう叫ぶ。涙をぽろぽろと流している。エリアーナの本心からの涙など初めて見た。


「ならぬ! ラトレイアー子爵……其方の父は罪を犯した。たとえ家族であろうとも会わせるわけにはゆかぬ」

「そんなの嘘です! パパは何も悪いことはしていません!」


 エリアーナはラトレイアー子爵が無実の罪で捕らえられたと思っているのだ。実に悲痛な叫びだ。


「嘘ではない。ラトレイアー子爵も罪を認めた。さあ、宿まで送らせるから帰るのだ」

「……こんなに頼んでいるのに……」


 エリアーナは俯いて拳を震わせている。


 次の瞬間、エリアーナの体が揺れたかと思うと、みるみるうちに姿を変えていった。

エリアーナはどんな姿に変身をしたのか?

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