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35.帝国の闇(ベルンハルト視点)

 暗く湿っぽい通路の先から乾いた音が聞こえる。


 ここはいつ来ても鼻をつくような嫌な臭いがして好きではない。


 まあ、好きなやつはいないと思うが……。


 ここは重罪人を収容する牢獄の中だ。


「何か吐いたか?」


 格子の向こうに問いかける。


「これは! 皇太子殿下! わざわざこのような場所にいらっしゃらなくとも……」


 格子の向こうでは尋問官が、いままさに捕えた襲撃者を尋問している最中のようだ。

 

 相当痛めつけられたようで、襲撃者の男は床に転がっている。


 ローゼンストーン大公一家を襲撃した黒装束の者たちは残らず捕えたが、床に転がっている男はどうやら首領格らしい。


「いや。直接こやつらから真実を聞きたくてな。それで何か話したか?」

「いいえ。何も話しません。どうも訓練されている輩ですな」


 尋問官は残念そうに首を振る。


 カルクシュタイン王国一の魔術師リゼロッタ大公妃を手こずらせたくらいだ。相当の手練れなのだろう。


 おそらく、きつい拷問にも耐えられるように訓練されていると思われる。


 そんな奴らを一網打尽にしたマリエ。いや。通りすがりの魔法少女セトウチはもっとすごいが……。


「ここを開けろ。俺が直々に取り調べる」

「い、いえ。皇太子殿下にそのようなマネをさせるわけには参りません!」


 とんでもないと尋問官は首を振る。


「どれだけ拷問したとしても、こやつは吐かないだろう」

「く……くくく。皇太子の言うとおりだ。我らは何も吐かぬ。早く殺せ」


 転がっていた襲撃者が顔を上げて含み笑いをする。


「自白が無理であれば、直接お前の頭の中を覗くまでだ」

「何だと?」


 俺は格子を魔法でこじ開けると、襲撃者の頭を鷲掴みにする。


◇◇◇


「アロイス、こいつらを捕えろ。今すぐにだ」


 俺は皇太子付き侍従のアロイスにリストを渡す。襲撃者の首領から引き出した情報をまとめたものだ。


「今からですか? しかしもう遅いですよ。早朝になさっては?」

「朝になってからでは遅い! お前が指揮を取って極秘に動け」


 襲撃者を捕えたことはまだ公になっていないが、近衛騎士団にも通じている者がいる可能性がある。


 闇に乗じて逃げられては困るのだ。


 アロイスは大仰にため息を吐くと、「面倒くせぇ」と一言だけ残して闇に溶けていった。


 言葉使いは悪いが、一応承知したということだ。


 侍従としても優秀だが、アロイスには裏の顔がある。諜報部隊長という顔が……。


「とりあえず、父上には報告をしておくか」


 俺は早足で皇太子宮の庭園を突っ切ろうとしてマリエの姿を見つける。ルリアたちも一緒だな。


「散歩でもしているのか?」


 噴水の前で立ち止まって月を眺めているようだ。月明りに照らされたマリエの金髪が輝く。きれいだ。大きくなったら美人になるのだろうな。


 いや。姿形の美しさに惹かれたわけではないが!


 マリエに一言声を掛けようと近づくと、見知らぬ少女がマリエたちの対面に立っているのに気がついた。


「誰だ? あれは……」


「エリアーナ?」と呟くマリエの声が聞こえた。知り合いなのか?

ベルンハルトは本当に子供なのだろうか?

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