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33.皇帝との謁見

 クリュタリオン帝国の宮殿は鳥が翼を広げたような形をしており、完全なシンメトリーだ。


 こういった建築方式をバロック様式というのだったか? 知らんけれど……。


 壮麗な宮殿はカルクシュタイン王国のおとぎの国のような城とは明らかに違う。


 両国とも大国ではあるが、なぜか国力の差を感じさせる。


 装飾に使われているのは……本物の金かな?


「本物だぞ。金が欲しいのか?」


 ベルンの声にはっと我に返る。ついつい宮殿の様式美に見とれて声に出ていたらしい。


「声に出ていました?」

「出ていたな。マリエはああいう装飾が好みなのか?」

「きれいだとは思いますが、はっきり言って好みではありません」


 日本のお城が一番好みだ。


「そうか。ではマリエ好みに建築し直すことにしよう」

「冗談です。大変荘厳で結構な宮殿だと思います」


 取り繕ったせいか、おかしな文法になってしまった。


「冗談なのか。まあ、俺もあまり好みではない。尤も正面に見えているのは外朝部分で、皇族の居住区は奥まったところにある。ローゼンストーン大公一家の滞在場所は皇太子宮に用意させてもらった」

「皇太子宮ですか?」


 外国からの貴賓客には普通専用の宮があるはずだ。


「貴賓客用の宮は皇太子宮から遠いのだ。マリエに会いに行くのに不便だからな」

「……お得意の転移魔術を使えばよろしいのでは?」


 遠く離れたカルクシュタイン王国まで転移魔術を使えるくらいだ。自国の宮殿内くらいはお手のものだろう。


「この宮殿には聖女だった初代皇后の結界が所々に生きているんだ。迂闊に魔術を使うと弾き飛ばされてしまう」

「でも、ベルンはいつもローゼンストーン大公家まで転移魔術を使っていらっしゃっているではないですか?」

「所々と言っただろう? 皇太子宮の結界はとうの昔に破ってある」


 それは……初代皇后様が浮かばれない。せっかく張った結界を子孫が破ってしまったのだから。


◇◇◇


 皇太子宮に用意された部屋に通され一息ついた後、皇帝陛下と謁見するために両親とともに謁見の間に向かった。


 ベルンの婚約者となる私のお披露目は婚約式の後なので、今日は皇帝一家とローゼンストーン大公一家のみの引き合わせだ。


 謁見の間に通されると、皇帝一家はすでに玉座についていた。


 私は御前に進む間にちらりと皇帝一家を観察する。


 玉座の中央に座っているのが、クリュタリオン帝国皇帝クラウス三世だ。ベルンの父親である皇帝は執政者というよりは武人といった風格を備えた人物だった。


 皇帝陛下の隣に座っている黒髪の美女がローザリンデ皇后陛下。ベルンの母親だ。ベルンは母親似なのね。


 皇帝陛下の後ろに立っているのがベルンと第二皇子リーンハルト殿下だ。リーンハルト殿下は確か私と同じ年だとベルンが言っていた。バカとも。ベルンとよく似た顔立ちで賢そうに見えるけれど……。


 カルクシュタイン王国の王族に連なる大公家といえども格下には違いないので、私たち一家は最上級の礼をとる。


「面を上げられよ。ローゼンストーン大公。大公夫人。マリエル公女。遠路はるばるよくぞ参られた」


 よく通る皇帝陛下のバリトンの声が謁見の間に響く。


 ベルンも将来こんな感じの声になるのだろうか?


「皇帝陛下。この度はご招待いただき感謝いたします」


 儀礼どおりの言葉が二言、三言交わされた後で、皇帝陛下がにっと笑う。


「それにしても久しぶりだな。ルドルフ。まさか貴公の令嬢とうちの愚息が婚姻を結ぶことになろうとは思わなかった」

「どこで縁があるか分からないものですよ」


 お父様も急に砕けた口調になる。


 二人はお知り合い?


 ベルンに目を向けると、彼は肩を竦めた。どうもベルンも初めて聞いたようだ。

パパ同士は知り合いのようです。

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