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28.竜の血

 ドームのような広い空間を抜けるとすぐに、私の名を呼ぶラシードの声がする。


「マリエル! どこだ!? 聞こえたら返事をしろ!」

「ラシード様! ここです!」


 呼びかけに呼応すると、数瞬の後、ラシードの姿が現れる。ベルンも一緒だ。


「マリエ! 無事だったか。良かった」


 言うが早いか、私は駆け寄ってきたベルンに抱きしめられた。


「……ベルン」

「きゅい! きゅきゅい! きゅい!」

「何!? 何でしっかり守っていない。この役立たずだと! 親に向かって何だ! その言い草は!? てか! 何でチビがここにいるんだ?」


 相変わらずルリアはラシードに対して辛辣だ。一応、お父さんなのに……。


「心配して後から追ってきてくれたのです。ねえ、ルリア?」

「きゅい!」

「ふ~ん。まあいいか。とりあえずここから出るぞ。ん? お前ら何を持っているんだ?」


 ラシードに指摘されて初めて自分の手が何かを握っていることに気がついた。


 手のひらを開くと、雫の形をした赤く輝く石が現れる。小ぶりだがとてもきれいな石だ。


「何? これ?」

「それは『ドラゴーネ・サーブル』だな」

「この石の名前ですか?」


 ラシードはこの石のことを知っているようだ。


「そうだ。別名『竜の血』とも言う」

「俺も同じ石を握っていた」


 ベルンも自分の手のひらに載っている石を私たちに見せてくれる。


「お前ら、どこでその石を手に入れたんだ?」


 あの空間に誘われて行ってみると、ふいに声が聞こえて気がついたら石を持っていたことをラシードに説明する。


「俺もだいたいマリエと同じような経緯で石を手に入れた」

「へえ。『願いの洞窟』が答えたのか?」


 ラシードが面白そうに口の端を吊り上げる。


「どういうことですか?」

「まあ、お前らの願いとやらは叶うってことだ。肌身離さずそれを付けていろ」


 そんな答え方ではさっぱり分からない。


 それにしても『竜の血』か。同じような別名を持つ天然石があったような?


「あっ! 辰砂シンナバーか。確か『賢者の石』っていう愛称もあったはず」


 辰砂は赤い色の鉱物だ。本で読んだことがある。顔料に使われたり、確か漢方薬としても使われていたはずだ。


「マリエは『賢者の石』が欲しいのか? それならばラシードをさっくり殺れば、たくさん『賢者の石』が作れるぞ」


 ベルンが何やら物騒なことを言い出した。ドラゴンは頭から尻尾まで全身無駄なく使えるものね。


「おい! 俺を材料にする気か!?」

「きゅい!」


 ルリアが「そのとおりだ」と頷く。


「チビ! お前は親を売るのか!?」


 ラシードの叫び声が洞窟内に響き渡った。

ラシードはそのうち市場に出回るかも?(笑)

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