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27.洞窟に響く声(ベルンハルト視点)

 突然、マリエが消えた。ラシードの姿もない。


 マリエの願い事を尋ねていた直後のことだ。視界が突如反転したかと思うと、今いる場所に放り出された。


「とりあえずマリエを見つけないとな。ラシードが一緒だといいが……。ああ、別行動のようだ。俺と同じように一人で放り出されたんだな。あいつは怖がりだから心配だ。ラシードのやつを探すのは後回しでも構わない」


 暗闇で怖がっていたマリエのことを思い出すと自然と笑みが零れた。普段は妙に大人びているくせに、あんな一面を見ると、やはり俺より年下の子供だと思う。


 洞窟内は明るいが、きっと一人で不安に思っていることだろう。早く見つけてやらなければならない。


 この洞窟は道が入り組んでいるわけではないが、妙な魔力が働いている。普通の人間であれば、とうに迷っていることだろう。


 俺は魔人だから探知能力が高い。微弱だがマリエの魔力を感じることができる。


 マリエの魔力を追いながら、慎重に進む。やはりラシードとは別行動のようだ。ラシードのバカでかい魔力は全く別の方向から感じる。


「この洞窟は自然にできたものなのか?」


 鉱山でもこれだけ良質な天然石はそうそう見つけられるものではない。何せ洞窟全体にびっしりと天然石が埋まっているのだ。それらは見る限り全て良質の天然石だった。


 洞窟の上はエンシェントエレメンタルドラゴンの里だ。彼らの魔力でこうなったのだろうか?


 いや。違うな。魔力の波動がドラゴンとは異なる。


 どのみちこの洞窟を欲しいとは思わない。欲しいのはマリエの願い事が叶うものだ。


「……マリエの願い事か」


 願い事がどのようなものであれ、俺はマリエが望むのであれば、どのような願い事でも叶えてやりたい。


 たとえそれが困難な願い事であってもだ。


 考え事をしていたら、いつの間にか広い空間に出た。


 こんな広い空間にも天然石が辺り一面に埋まっている。


「うん? マリエの魔力が残っている。先ほどまでこの辺りにいたのか? だとすれば近くにいるかもしれないな」


 先に進める道を探していると、天然石が急に光り出す。眩しくて咄嗟に目を手で覆った。


「神の血をひく尊き者よ。願いはありますか?」


 空間全体に女の声が響く。


「何だ? 誰かいるのか?」

「願いは何ですか?」


 もう一度声が響く。


「俺の願いは……マリエの望むことを叶えてやりたい。どのような願いでも。いくつでも。マリエが幸せになるのであれば……」

「祝福されし者よ。貴方の願いは必ず叶うでしょう」


 天然石の輝きが収まっていく。目を開くと何もない空間が佇んでいるだけだった。


「今のは何だったのだ?」

「お~い! マリエル! ベルンハルト!」


 ラシードの声だ。俺たちを探しに来たんだな。


 声がする方に気を取られて手に握っている物に気づかなかった。

ベルンハルトが手に握っているものとは?

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