表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/47

24.竜の里にやってきた

 竜の里は伝承どおり東の大陸を超えた巨大な山にあった。


 山の手前にはオーロラのような膜がかかっており、まるで光のカーテンのような幻想的な光景だ。膜は結界らしい。


 結界を抜けると、天まで届くような山がそびえていた。この山自体が竜の里だという。


 その竜の里に半ば拉致されるように連れてこられた私だった。


「マリエル、お疲れ様でした。ここがわたくしたちの家です」


 山の中央の空に浮かぶ一つの島。それがエンシェントエレメンタルドラゴンの長であるラシードの家らしい。


 長の一族以外は山の斜面に住んでいたり、麓に住んでいたりと生活形態はそれぞれだという。


 空に浮かんでいるにも関わらず島は緑が豊かで、全体の景観を見なければ森だと思う。


 家はまるでログハウスのようで、とてもドラゴンの棲み家とは思えない。


 てっきりドラゴンが棲むのであれば、火山の火口とか巨大な鳥の巣みたいなところだと思っていた。


「おう! マリエル来たか?」


 家から出てきたラシードが手を振る。


「ラシード様。レイリさんに私を迎えに来させたのは貴方ですか?」

「いや。俺がマリエをここに連れてきてほしいと頼んだのだ」


 ラシードの後ろからベルンが姿を見せる。


「ベルン。貴方が?」

 

 ベルンは以前ラシードに勝負を挑みにやってきたと言っていた。彼がここにいたとしても不思議はない。


 だが、なぜベルンは私をここに呼んだのだろう?


 用があれば、いつものように転移魔術で大公家の屋敷に来ればいいことだ。


「話は中でしよう」


 躊躇いがちに家の中へ入ろうとした時に、「きゅい!」という声とともにルリアがラシードの顔面に蹴りを入れていた。



「チビ、お前な。親の顔に蹴りをかますとはどういうことだ? とんだ不良息子だな? ああ?」

「きゅい!」


 抗議するラシードにぷいと顔を背けるルリア。


 遅れて竜の里にやってきたルリアは到着早々ラシードに蹴りをかました。それは見事な蹴りだった。


 ラシードの顔には食い込んだルリアの足の爪痕が残っている。


「貴方がマリエルをかどわかしたのだと思ったそうですよ」


 優雅にお茶を飲みながら、レイリさんがふふと微笑む。


 ルリアはどうもラシードに対して反抗的だ。気持ちは分からないでもないが……。


「それでどうして私をわざわざ竜の里まで連れてきたのですか? ベルン」


 対面に座っているベルンに話しかけると、彼はカップをテーブルに置く。


「この間の埋め合わせだ」

「えっ? 埋め合わせですか?」


 埋め合わせとはどういうことだろう? ベルンに埋め合わせをしてもらうようなことはないはずだ。


「最初のデートの時に贈れなかった装飾品の埋め合わせだ」


 あっ! 宝石店で私が気に入るものがなかったからか。


 まだ気にしていたのね。私はすっかり忘れていた。


 私はくすっと笑う。


「意外と律儀な性格なのですね」

「意外とは何だ?」


 ベルンは照れくさそうに頬をポリポリとかく。


「くどいようですが、竜の里と装飾品と何か関係があるのですか?」

「この竜の里には良質な天然石がたくさん眠っているのですよ。ベルンハルトがマリエルに贈り物をするために天然石が欲しいというので了承しました」


 ベルンの代わりにレイリさんが私の疑問に答えてくれる。


「本来であれば、人間に分けてやる道理はないのだがな。俺たちからお前たちの婚約に対する祝いだ」


 ラシードの顔にはさらに傷が増えている。どうやら今までルリアと親子喧嘩をしていたらしい。

ルリアは今日もお父さんに対して辛辣です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ