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21.ベルンハルトのセンス

 デートで最初の場所として連れて行かれたのは、『ペイ・ド・メルヴェーユ』というお店だった。


『ペイ・ド・メルヴェーユ』は貴族令嬢に人気があるブティックだ。


 ドレスに使われる生地やレースはどれも一級品で、非常にお高い。


 鞠絵であれば尻ごみしてしまうところだ。何せお値段がリーズナブルなウミクロやPUの服を愛用していたのだから。


 しかし、今の私は大公家の令嬢だ。しかもクリュタリオン帝国の皇太子の婚約者でもある。堂々としていよう。


 あ。でも、今日はお忍びか。


 まあ、着ている服は裕福な家の令嬢と見る人が見れば分かるし、門前払いはされないだろう。


 ベルンとともに店内に入ると、店主らしき年配の女性が慌てた様子で私たちの下にやってきた。


「予約をしていた者だが」

「ようこそお越しくださいました。専用の試着室にご案内いたします」


 予約していたのか!?


 店主の様子からベルンの身分を知っていることが窺える。



 案内されたのは試着室というのにはあまりにも豪華な部屋だった。


「ただいま、お茶のご用意をいたしますのでしばらくお待ちくださいませ」


 そそくさと店主が部屋を出て行ったので、私は呆然と部屋を眺める。


 上品な趣向を凝らしたインテリアだ。貴族専用の試着室といったところだろう。


 一度目の人生の時もこのお店でオーダーメイドをしていたが、屋敷まで出向いてもらっていた。お店に来たのは初めてだ。


「殿……ベルン。わざわざ予約をしてくれたのですか?」

「婚約者への初めての贈り物には、俺が見立てたドレスと装飾品を贈りたくてな」


 正確には初めての贈り物は子猫のルナだ。カウントをされていないようだが、婚約前のことだからノーカンとしよう。


「装飾品ということは、もしかして?」

「ああ。この後、宝石店にも予約をしてある」


 さらにレストランも予約してあるらしい。


 貴族令嬢であれば喜びそうなエスコートぶりだ。本当に七歳の子供だろうか?


「マリエはどこか行きたいところはあるか?」

「ペット用品専門店やキャンプに必要な品物を扱っているお店に行ってみたいです」

「……それは別の日に行こう。他には?」


 ルリアたちにお土産を買っていこうと思ったのだが、却下された。


 まあ、別の日につきあってくれるらしいから、今日は諦めよう。


「ええと。それではカフェに行きたいです。今、評判のお店があるのです」

「店の名は?」


 お店の名前を告げると、ベルンは部屋の外に控えていた従者を呼び出した。


 どうもカフェにも予約を入れるらしい。


◇◇◇


 色とりどりの様々な種類の生地が目の前に並べられたが、目がちかちかしただけだ。


 最高級の品物であることは分かる。手触りも最高だ。


 一度目の私であれば喜んでいただろうが。


「マリエはどの色が良い? 其方であれば金糸雀カナリアのようにはなるまい」


 ベルンは黄色の生地を手にしながら、最後にぼそりと呟いた。


 金糸雀とは何のことだろう? 黄色の生地だからだろうか?


「とても可愛らしい方ですので、どの色もお似合いですよ」


 店主はにこりと私に微笑みかける。上品で優しそうな感じの年配の婦人だ。


「なるべく淡い色でかつ動きやすいデザインがいいです」


 そのうちコルセットで締め付けるようなドレスを着なければいけなくなる。


 せめて少女のうちは動きやすいドレスがいい。

「そうか。実用性が伴ったものが好みなのか。それならばこれが良いかもしれないな」


 ベルンは私の意見を取り入れつつ、店主と相談をしながらドレスを見立ててくれた。


 上品なデザインの実用性がありそうなドレスに仕立てあがりそうだ。


 ベルンはわりとセンスがいいのかもしれない。

俺様ベルンハルトは意外と紳士です。

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