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20.デートのお誘い

 結局、チェスの第二局はどうなったのかといえば、行われなかった。


 あの後、慌てて駆けつけた国王陛下によって止められたのだ。


 チェスの対戦云々の成り行きを見ていた侍女が国王陛下の耳に入れたのだろう。


 ちなみにエドアルト王子は、国王陛下にそれはもうめちゃくちゃ怒られていた。


 賓客であるベルンハルト皇太子にケンカを吹っ掛けたこともそうだが、その婚約者の私を賭けの対象にしたことに激怒していたのだ。


 国王陛下がまともで良かった。



 ベルンハルト皇太子はしばらくカルクシュタイン王国に滞在するらしい。


「婚約式も無事に終わったことだし、デートをしないか?」

「はい?」


 チェス騒ぎの翌日、いきなりベルンハルト皇太子にデートに誘われた。


 不本意ではあるが、一応婚約者となったのだ。断る理由はない。


 デート当日はベルンハルト皇太子が大公家まで迎えに来るというので、前日から侍女たちが張り切っていた。


「公女様、こちらのドレスになさいますか?」

「ベルンハルト皇太子殿下の瞳はグレーですから、装飾品はこちらで合わせましょう」


 衣裳部屋からとっかえひっかえドレスや装飾品を持ち出してくる侍女たちが楽しそうだ。


「……なるべく動きやすい服装でお願いするわ」

「公女様、趣味が変わられましたか?」


 ソフィアが胡乱な目で私を見やる。


「そうかしら?」

「そうですよ。以前は外出なさる時、ご自分でドレスを選ばれていたではないですか?」


 そういえばそうだった。外出する時は妙に気合いを入れていたわね。


 動きにくいひらひらしたドレスをよく着ていた気がする。


「実用性が重要だと気づいたのよ」

「……本当に変わられましたね。髪型はどうされますか? クロワッサンのように巻きますか?」


 エドアルト王子も同じことを言っていたが、ドリルヘアーはクロワッサン巻きという名前なのだろうか?


「これからクロワッサン巻きはやめるわ」


◇◇◇


 とてもいい天気だ。雲一つないとはこういうことを言うのだろう。


 青空が広がり、陽射しも暖かい。


 こんな日はルリアたちとピクニックでも行きたいところだ。


 しかし、今日はベルンハルト皇太子とデートをしなければいけない。


「慌ただしいなあ」


 ぽつりと呟いてため息を吐く。


「盛大なため息を吐くな」


 私の対面に座るベルンハルト皇太子が眉を顰める。


 目立たない馬車で迎えに来てくれたのはありがたいが、少し乗り心地が良くない。


 お忍びデートだから贅沢は言えないが……。


「殿下が我が国にいらっしゃってから、もふもふたちと遊べないので」

「ベルンだ」

「えっ?」

「婚約者となったのだ。殿下などというよそよそしい呼び方はやめてベルンと呼べ」

 

 王侯貴族は家族や親しい者以外は愛称で呼ぶことは許されない。


 以前はそう窘めたが、婚約者になったからには拒否もできないか。


「ベルン?」


 名を呼ぶとベルンハルト皇太子、いや、ベルンは嬉しそうに微笑む。


「マリエルは愛称はないのか?」


 両親は私を愛称では呼ばない。呼びやすい名前ということもあるが。


 あえて愛称で呼ぶとすれば――。


「マリ……いいえ。それではマリエと……」

「マリエか。分かった。そう呼ぶことにしよう」


 馴染みのある名前だ。この方がしっくりくる。

婚約後の初デートはどうなることやら?

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