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14.誰が火種をつけたのか?

 瀬戸内鞠絵だった頃、マリエルの記憶はなかった。


 二度目の人生ではなぜか一度目のマリエルと瀬戸内鞠絵の記憶が残っている。


 鞠絵は祖父母へのサプライズのために無駄使いはしなかったのだが、月一回の『もふもふを愛でる日』の費用と唯一の趣味には貯金とは別でお金を分けていた。



「ルナ、危ないからちょっと離れていてね。ルリア、ルナを見ていてね」

「きゅい!」


 私は暖炉でたき火を起こしている。


 なぜたき火をしているかというと、野外でキャンプをする練習をしているのだ。


「また奇天烈なことを始めたな?」


 今日も当然のように遊びに来たベルンハルト皇太子が後ろから声をかけてくる。


「たき火の練習をしているだけですよ」

「暖炉でか?」


 屋外でたき火をしようものなら、煙が出るので火事と間違われる。


 まずソフィア辺りに止められるのが関の山だ。


「ここが一番安全なのです」


 暖炉は煙突から煙が排気されるから、屋内でたき火をしても一酸化炭素中毒を起こすことはない。


「たき火を練習して何をする気なのだ?」

「キャンプです」


 鞠絵だった頃の唯一の趣味がキャンプなのだ。


 しかもソロでキャンプをする。つまり「ソロキャン」が好きだったのだ。


 祖父には女性一人のキャンプは危ないから、寝る時は車の中で寝なさいと言われていたが、それではキャンプの意味がない。


 テントの中でシュラフに包まれて寝ていた。


「キャンプ? 将来軍人にでもなるつもりか?」


 こちらでは個人でキャンプを楽しむという風習がない。遠征でテントを張るというのが一般的なキャンプだ。


「違います。個人で楽しむのです」


 自然の中に身を置いて、自炊を楽しんだり、好きなだけぼうと過ごしたり、もふもふたちと遊んだり、これぞスローライフ! と私は勝手に思っている。


 手始めに裏の森でルリアたちとソロキャンをしようと計画しているのだ。


「ほお。俺もキャンプに付き合ってやろうか? テントを張ることができるぞ」

「皇太子の教育の中にはテントの張り方まで入っているのですか?」

「いずれ軍の指揮官として戦地に立つこともあるだろうからな」


 皇太子が旗頭になることもあるのか。


「まさか子供のうちから戦地に立たれるのですか?」

「いや。成人してからだろうな。しかし、俺は皇太子だからな。後衛で実戦を見せられることはあるかもしれん」


 一度目の第三次クレイナ戦役でなぜ皇太子が戦地にいたのか疑問だったのだ。そういうことであれば納得できる。


「カルクシュタイン王国とクリュタリオン帝国は長年争いをしています。今は平和ですが、いずれ敵同士になる可能性もありますね」

「……そうだな。だが、父上はカルクシュタインとは友好関係を提唱している。俺も同じだ。カルクシュタインにはマリエルがいるからな。争いは起こしたくない」

「……私ごときのためとは。一国の皇太子らしくありませんね」


 クリュタリオン帝国の現皇帝はカルクシュタイン王国と争いを起こすつもりがないのか。では、一度目の時は誰が争いの火種をつけたのだろう?

きな臭くなってきました。

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