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10.毎日皇太子が訪ねてくる

 ベルンハルト皇太子との勝負は引き分けとなった。


 どのみち勝てなかった勝負だ。引き分けただけでも大したものだと思う。


 まかり間違って勝てたとしても、戦争を止めてほしいという願いが叶えられるとは思えない。


 勝負をした相手はお母様が命を落とすきっかけになった人間だが、皇帝であればともかく皇太子だ。


 今、クリュタリオンの実権を握っているのは皇帝であり皇太子ではない。


 やはり第三次クレイナ戦役が勃発してお母様が戦場に立つことになったら、私もこっそりついていこうかな?




 ベルンハルト皇太子はあれからほとんど毎日と言ってもいいほど、私のところに遊びに来ている。


 クリュタリオンの皇宮まではかなりの距離があるはずだ。


 不思議に思って本人に尋ねてみれば、『転移魔術』で自分の部屋とローゼンストーン大公家の門を繋げているらしい。


 許可した覚えはないのだが……。


「皇太子とは暇なのですか?」


 目の前でのんびりと寛いでお茶を飲んでいる相手に問いかける。


「皇帝になるための学は修めてある。強いて言うのであれば、早朝の剣の稽古でまだ一本しかとれぬくらいだ」

「殿下は七歳とはいえ優秀なのですね」


 私も一口フルーツジュースを啜る。


「マリエルは淑女教育を受けないのか? 皇太子妃になるのだ。教育は早いうちに受けておく方が良い。ああ、まだ五歳だったな」

「何度もお断り申し上げておりますが、私は皇太子妃にはなりません」


 相手が誰であろうと、王族との婚約など二度とごめんだ。二度目は結婚しなくてもいいからスローライフがしたい。


「何度でも求婚する。俺の妃になれ」

「嫌です!」

「強情だな。スローライフでも何でも好きなことをして良いと言っている」

「はっきり申し上げます。殿下は私の好みではありません」


 きれいな顔立ちをしているとは思う。将来はイケメンになること間違いなしだ。


 しかし、私は俺様系男子は苦手なのだ。


「何だと? お前の好みとはどのような男だ?」

「そうですね。木の上から下りられなくなった子猫を助けてあげるような優しい男性が好みです。筋骨隆々で年上の男性でしたらもっと好みです」


 ベルンハルト皇太子は子猫を無視しそうなタイプだ。「下りられなくなるようなところに登るのが悪い」とか言って……。


「筋肉か。うむ! しっかりつけるとしよう。年は俺の方が二歳年上だぞ」

「七歳くらい離れている方がいいです」


 自分の二の腕の力こぶを見ているベルンハルト皇太子の横でなぜかルリアも同じポーズをしている。マネをしているのかしら? ふふ。可愛い。


「七歳と五歳の子供ガキの会話とは思えないな。お前らもう少し子供らしい会話をしろよ」


 ラシードはバルコニーの手すりで器用に寝転がっている。


「お前も毎日何をしに来ているんだ? ラシード」

「俺はマリエルの師匠だ。それにその小竜は俺の子だからな。様子を見に来ている」

「きゅい! きゅきゅい!」


 ルリアがパタパタと私のところに飛んでくる。そう。ルリアは飛べるようになったのだ!


 私がベルンハルト皇太子との勝負で爆風に飛ばされた時に。あの時は気がつかなかったが……。


「いい子ね、ルリア。『二人とも帰れ』とルリアが言っていますよ」


 少しずつ伸びてきたルリアの金色のたてがみを撫でる。


「ますます反抗期で可愛くなくなってきたな。マリエル、お前はルリアの言うことが分かるようになったのか?」

「何となくですが、分かります」


 特にラシードの悪口はね。


「そろそろお帰りください。私は夜出かけますので」

「どこへだ?」


 ベルンハルト皇太子の口調が不機嫌そうだ。


「王家との晩餐です」


 お父様は現国王陛下の弟なのだ。月に一度だが、王宮へ晩餐に招かれる。


 とても気が重い。

次回はベルンハルト視点です。

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