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プロローグ

新連載です。

よろしくお願いいたします。

 冷たい。


 手が、足が、冷たい。


 体がどんどん体温を失っていくのが分かる。


 ああ、そうか。私、交通事故に遭ったんだ。


 今日は月一回恒例の『もふもふを愛でる日』だったのに、ついてないなあ。


 意識が薄れていく。


 もうすぐ死ぬのかな? 嫌だ。死にたくない……。


 来月夢が叶うはずだったのに悔しい。


 ああ! くそっ!


 生まれ変わったら、犬と猫とフクロウが飼いたい!


 あと、ドラゴンとかいたら最高!


 ん? ドラゴン?


 死ぬ間際の願い事で何でドラゴンが出てくるの?


 そこで意識が失われた。



 顔に冷たいものが滴り落ちる。 


「マリ……マリエ……マリエル!」


 頬が軽く叩かれる。


 うるさいな。


「目を開けてくれ! お願いだ!」


 私、さっき死んだんだよね。このまま静かに眠らせてほしいな。


「……わたしの愛しい娘。目を覚ましておくれ」


 愛しい娘? 私のこと? じゃあ、さっきから叫んでいるのは親かな?


 まさかね。私の親は毒親だ。愛しいなんて言うわけがない。


 両親とはもう何年も会っていない。


 でも娘が死んだと聞いて、飛んできたのだろうか?


「おとう……さ……」


 えっ! 声が出た!?


 生きてるの? 私……。


「マリエル!」


 マリエル? 誰それ?


 私の名前は鞠絵だ。


 だが、どこかで聞いた覚えがある。


 どこで聞いたんだっけ?


 あっ! 思い出した!


 マリエル・ローゼンストーンか!


 だが、それは瀬戸内鞠絵せとうちまりえとして生まれ変わる前の人生の名前だ。


 マリエルとしての人生は終わったはず……。


 恐る恐る重い瞼を開ける。


 最初に目に入ったのは、懐かしい顔だった。


「リゼロッタを呼んできてくれ! マリエルが意識を取り戻したぞ!」


 マリエル……つまり私の父であるローゼンストーン大公ルドルフの姿。


 記憶にある父よりずっと若い。


 最後に見た父は三十八歳という若さにも関わらず、金髪は白髪に変わり顔も老けて、まるで老人のようだった。


 心配そうに私を見つめる父のきれいな碧眼は涙に濡れている。


「あなた! マリエルは!?」

「ああ、リゼロッタ! マリエルが目を覚ましたぞ」

「マリエル。わたくしの愛しい娘。本当に良かったわ」


 黄金色のストレートな髪にアクアマリンの瞳の美人が私を抱きしめる。母のリゼロッタだ。


「おかあさま?」


 待てよ? 母は確か私が六歳の時に亡くなったのだ。


 ということは……。


 まさか!?


「わたしはいまいくつなの?」


 幼い声が聞こえる。私から発せられた声だ。


「マリエルは五歳になったばかりよ。今日は貴女の誕生日なの」


 やっぱりだ!


「はっ! まさかマリエルは記憶喪失になったのでは!?」

「落ち着いて、あなた。混乱しているのよ。高い所から落ちたのですもの」


 混乱しているのは父の方だ。


 私は高い所から落ちたのか? 


 そういえば、頭上にローゼンストーン大公家の城が見える。


 よく助かったな。ああ、お母様のおかげか。


「だって、君が治癒魔法を使ったのにマリエルは目を覚まさなかったんだよ」

「治癒魔法を使ってもすぐに目を覚ますとは限らないわ」


 決定だ。


 私は瀬戸内鞠絵としての人生を終えて、もう一度マリエル・ローゼンストーンとして生まれ変わった。


 しかも五歳の幼女として……。

本日もう一話更新します。

引き続きお楽しみいただけますと幸いです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 前世に転生って、新しいパターンですね。
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