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『ダイアモンド・ディスペンサー』第1話

作者: 原作者(漫画):二本柳亜美 著者(小説):凛るな

原作はこちらのURLになります

https://rookie.shonenjump.com/series/FlR8CfEGnrc

「俺はなるんだ、絶対になってやるんだ……!いつかこの地球の人類を護る存在に、憧れのあの人と同じように……!」


 時は遥か未来、西暦50115年。人類はかつてない危機に直面していた。自身が今日や明日、生き延びるのさえ危ういほど日常的に争いにまみれた漆黒の時代の到来。その渦中にある今回の舞台、ヴァニラ共和国は、地球外の惑星の生命体であるUMAに全てを滅ぼされた国だ。ヴァニラ共和国の人々は「絶望とは何たるか」を否が応でも目の当たりにさせられた。今や争うのは人同士や国同士なんてそんなちっぽけな規模ではない。地球外の惑星と地球との、”星”の運命を懸けた惑星同士の闘いなのである。人々はなす術もなく、ただ恐怖に支配される日々を送っていた。

 そんな瀕死の状態に思われたヴァニラ共和国だが、しかし漆黒の闇の中で人々は一筋の光を見いだした。UMAに対抗するべく、国家が設置した”緊急救助防衛隊”である。一際に優秀な人材のみで構成された彼らは人々の期待と憧れ、羨みを一心に背負い、法力をも以てUMAに最前線で立ち向かう戦力の要となった。そう、その精鋭部隊の彼らこそ人呼んで……「ダイアモンド・ディスペンサー」だ。

 ダイアモンド・ディスペンサー、通称DD。彼らは、突如として空から降り立ったUMAに滅ぼされようとしている国家や人々への被害を最小限に食い止め護る存在で、いわば運命の救世主である。

『たった今、速報が入りました!DDの活躍により…』

『まぁ…またDDお手柄ですって。凄いわねぇ…』

『本当だな。あの人らがおる間は国もひとまず安泰じゃ』

『あのねママ、僕、大きくなったらDDになりたいんだ~!』

『まぁ…じゃあ学校でたくさんお勉強しないとね~』

『そんな期待させてやるなよ。どんなに秀才でも、試験に受かるだけで丸何年も掛かるって言うんだぞ。それからいざ実務を積もうとしたって、そう簡単には…』

『あら、あなた。大丈夫よ、子供の言うことだもん。そのうち分かるでしょ…』

 日々、多種多様な攻撃を繰り広げてくるUMAに対抗できる唯一の希望としてDDの功績は連日、新聞やテレビなどといったメディアを賑やかに華々しく飾っていた。人々は老若男女問わずその吉報に喜び安堵し、DDへの称賛は尚更に高まり、また特に若者たちのDDへの期待や憧れは一層に強まるのであった。無論、そんな憧れだけで就けるほど甘くは無いことは全国民が周知だったのだが。


 主人公の青年ロイもDDへ憧れているのは例外ではなく、いや想いの強さは例外的なのかもしれないが、本気でDDを目指している。そしてある日ようやっと想いの強さが功を奏して鍛錬の成果が実った。ダイアモンドを錬成できたのだ。その足ですぐリビングへ下りて高らかに宣言した。

「やっと錬成ができるようになったぞ!俺、DDの試験を受けてくる!DDになるんだ!」

 周囲は楽観的……と言うより誰も本気にしていない。当たり前だ。国家のため、地球存続のために自分の命さえ全く顧みない立場のDDなど、そう容易くなれるはずがない。だがロイが昔からの夢であるDDを本気で目指していると知っている幼馴染だけは頑なに反対していた。

「ダメよ。ロイには夢は必要ないわ……良いじゃないDDになれなくたって……ここに居てよ、行っちゃダメ!だって……もし死んだらどうするの!?ロイ、ここに居ても仕事はあるわ、そりゃDDにはなれないけど、でも……」

 説得も虚しく、言い終わる前にロイは家を飛び出していた。分かっていた、いつかこの日が来るのは……ロイと離れる日が来るのは。本音は勿論、命を懸ける仕事になんか就いて欲しくない。そりゃあDD無くしてこの時代は過ごせないのは分かりきっている。ただ、だからと言ってロイをその場に送りたくなかったのだ。応援したいが留まって欲しい。対極する二つの想いはどちらも大きく、幼馴染の心をグラグラと揺さぶっていた。

 一方のロイはDDの試験を受けるべく街を出ようとしていた。友人も理解がある者は応援してくれた。背中を押してくれた。

「離れていても、ずっと遠くに居ても……友達だからな、ロイ」

「ありがとう。元気でな」

「姉さんにはせめて、一言ちゃんと挨拶してから行けよ」

「ああ……」


 ロイがそもそもDDに憧れたのは、幼少期に姉がUMAに襲われたことがきっかけだった。まだ幼い少年だったロイは姉を護るべくたった一人でUMAに立ち向かおうとしたのだが当然、敵いはしない。身動きできない姉、姉を庇うロイもろともUMAに襲われかけたその時、敏腕な現役女性DDの水嶋が現れ救助してくれたのだった。

「この馬鹿者っ!自分の命すらまともに守れないような子供が!一歩間違えたら死ぬところだったんだぞ!!!」

 そう怒鳴りロイを平手打ちした水嶋、だが幼いロイは怯まず懇願する。

「お願いです……姉さんを、助けて……!」

「……!!」

 ロイの必死の表情に何かを感じ取った水嶋は、自身の髪を束ねていた髪留めをロイの手に握らせた。

「悪いな。今こんな物しか無いが……持ってろ」

 ロイに微笑みながらそう言い残すと、仲間とともに水嶋は去っていった。幼いロイの瞳を見て何かを感じ取っていたのかもしれない。そしてロイはその時から強く望むようになっていた。一般人の、まだ子供のロイでもその活躍っぷりを知っている水嶋は皆の永遠の憧れだった。自分がその水嶋の力になりたい。人類を、大事な人を護る存在のDDになりたい……


「そう……決めたのね、ロイ」

 姉はロイに優しく微笑んだ。目の前に居るのは、かつて姉の後ろにずっと付いて行動していた幼い弟ではなく、自立して将来の決心を固めた凛々しい青年だ。

「行ってくるよ、姉さん……もう会えないかもしれないけど……」

「気を付けてね。応援しているわ」

「ありがとう。行ってくる」

 姉はロイの姿が見えなくなるまで見送っていた。その背中は決意に満ちていて眩しかった。


「うわぁ、すげえ……!!」

 ロイは感嘆の声を上げた。ここはトビウオ空港。DDへの第一関門、難関試験を受ける者たちだけが乗り込む「トビウオ君」が発射される基地である。ついにここまで来た。やっと試験を受けられる……ロイは今後へと胸を躍らせていた。

「はは!何アイツ!」

「うわ~ガキが居るよ~(笑)」

「お子ちゃまはお家へ帰りな?パパとママが待ってるよぉ~?」

 周囲の若者たちが嘲笑うが、ロイはサラッと聞き流す。確かに自分は受験生の中では年少の方だが、そんなのは来る前から分かりきっていた。それに受験資格を満たせていれば関係ない。そんな周囲のガヤなんて気にならないほどロイは本気なのだ。トビウオ君の発射アナウンスが鳴り響き、ロイは慌てて座席に座りベルトを締める。

 いよいよだ。あの人に一歩近づける……俺は絶対なってやるんだ、あの人と同じDD、ダイアモンド・ディスペンサーに……!!



=第1話 完。第2話へ続く=

お読みになっていただきありがとうございました。

こちらの小説は 凛るな様に 書いていただきました。

ありがとうございました


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