我が家の大魔王。
我が家には大魔王が住んでいる。
もちろん、妻の事ではない。
決して、妻の事ではない。
我が家の次女が、もうワガママで、こざかしくて、愛らしいのだ。
いつも、家事を手伝わずに、椅子にふんぞり返っては、愉しそうに家族を眺めている。
隙さえ見つければ、謀略なんかも仕掛けてくる。
そんな所も愛おしい。
この世界の本物の大魔王は、遥か昔に、女神様が、鮮やかに葬ったと伝えられている。
もう、なすすべなくブチ転がされたらしい。
私も次女には、なすすべがない。
もう、翻弄されてばかりなのだ。
こんな幸福があるだろうか?
次女は、やんちゃに過ぎて、いつも姉をからかって遊んでいる。
長女は長女で、可愛がり過ぎたせいか、天使みたいに純真に育ってしまった。
一体、同じ姉妹なのだろうか?
でも、じゃれ合っている時や、驚いた時なんかは、おんなじような表情を浮かべるんだ。
尊い。
最近の大魔王なのだが、私の精神をとことん痛めつけに来ているのだ。
まだ10歳にも達していないのに、一緒にお風呂に入りたくないって文句を言うし、洗濯物も分けて欲しいって言いだしたんだ。
泣きそう。
妻は微笑むだけで、仲介してもくれない。
長女の方も、最近は何かよそよそしくなって来ているし、大魔王の策略なのかも知れない。
天使にまで、洗濯物を分けて欲しいって、控えめに言われたらどうしよう?
私の人生から、天使までも捕られたら、何が残るのだろう?
大魔王がいるじゃないかってっ?
笑わせるなっ。
ちっちゃな大魔王の方が、天使よりも先に、私を捨てそうなのに、天使が残るものか。
もう、真の大魔王しか残らないじゃないか…。
この日記が、妻に見つかった。
ヤバい…。
こんな短い文なのに、1週間くらい毎日眺めている。
恐い。
天使の方は、ちょっとだけ気遣ってくれたけど、大魔王の方は、ニタニタと意地悪く嘲っている。
これもこれで良いな。
もう、構ってもらえるだけで嬉しい。
それから、数日が過ぎた頃、大魔王がデレた。
大魔王が、真の大魔王と密談をしていたのだ。
そろそろ殺されるのかなと、腹をくくっていると、真の大魔王が許してくれた。
妻いわく、お父さんが落ち込んでて可哀想だから、許してあげたらとの事であった。
涙出そう。
思わず、ちっちゃな大魔王を抱きしめてしまったら、思いっきり顔を殴られた。
まだ小さい拳だったけど、結構痛かった。
でも、嬉しかった。
さぁ、大魔王達に虐げられる毎日の続きをしよう。
なんと幸福なのだろう。
読んで下さってありがとうございます。
私自身が、前提のある短編を出す事に、難色を覚えてたんですが、思いついたし、さらりと書けたから、ゴーします。
たぶん、単体でもイケると思いますが、イメージの保管ができなければ、私のミスです。
この一家は、私が連載している「ロリータっていいですよね。」のヒロインの家庭の一場面です。
気になられたら、よろしくお願い致します。(控えめに言って、ダイマ)