転生聖女になって逆ハーキタコレウワヤッター!と思ってた時期が私にもありました
祝福するようにキラキラと煌めく光が溢れだすその瞬間
――前世の記憶も思い出した。
これ、転生ってやつか!
え!?私一回死んだの!?
ああ、もしかしてこれが主神の祝福というやつだろうか。もっと他にあっただろうとつっこまざるをえない。
定番の意識がブラックアウト!とか高熱!とかそんなことはなく、ただ周りの聖女候補や高位神官様方におめでとう、と云われて混乱なんて悟らせないように微笑んだ。
儀式は終わったのだ。私は正真正銘、聖女になったのだから。
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エレオノール・ブランシェ。それが今の私の名前だ。侯爵家の末っ子として生まれて早15年。艶やかな薄紅色の髪と黄金の瞳。のんきに暮らしてれば将来適当な貴族に嫁いで悠々自適な生活ーーかと思いきや、光属性の魔法が使えるってだけで聖女候補となりうっかり聖女になってしまった。つまりは魔王を殺しにいかなくてはならないのだ。命がけである。どうしてこうなった。
「エレオノール様」
サフィナ・ド・フィレンフィア様。トルスタィア王国のフィレンフィア王家の第二王女で、聖女候補だった人だ。光属性の魔法を、私よりも自在に操っている。私は正直サフィナ様が聖女として選ばれると思っていた。
「あら、サフィナ様。サフィナ様たちも暫くされたら浄化の旅に出られるとうかがいましたわ」
そう、聖女に選ばれなかった者もまた、世界を浄化するために旅にでる。騎士や冒険者、傭兵たちも魔物を討伐するが、その上で浄化をしなければ邪気をその土地に残してしまい、新たな魔物を産んでしまう。だから護衛を引き連れて巫女は特別な神官として旅にでるのだ。というかそもそも魔王が現れた時にのみ聖女候補は集められる。魔物は日常的に居て、しかし平時はそこまで脅威にならない。けれど魔王が現れると、行動も魔物の数も桁違いに増えるのだ。だから普通は光属性の魔力の持ち主であっても希望者しか巫女にならないけれど、聖女を選ぶときだけ、その年の成人者から出た光属性の魔力の持ち主は絶対に集められるのだ。実は聖女と言っているけれど、男の人であっても集められる。その場合は巫顕と呼ばれるけれど、聖女に相当する聖人が選ばれたことはまだ一度もないらしい。そして今回の聖女候補にも男性は居なかった。絶対数が少ないのだ。
「ええ、私は祖国を回る予定ですわ。エレオノール様方勇者御一行をお見送りしてからですが……。明後日には五大国からエレオノール様含めた精鋭が一人ずつ集められるそうですわね」
「そう伺っておりますわ。それが今回の勇者とのこと……。どのような方々なのかしら」
「実は……一人は私の婚約者ですの。どうかよろしくお願い致しますわ」
えっ。確かにトルスタィア国は五大国だし、あり得なくはないけど。サフィナ様の目の奥が笑ってない気がした。なんか言外に他の女を寄せ付けるなって言われてる気がする。あとすり寄ったら承知しないって言われてる気もする。こっわ。
「それはそれは、お心苦しいことですわね……。もちろんですわ。みな欠けることなく、きっと何事もなく必ず帰って参ります。」
一言二言交わして別れた。そういえば、大抵の聖女って生還した暁には大概勇者メンバーの誰かと結婚してたんだっけな。そりゃあ心配もするか。ん?待てよ?そしたらもしかしなくっても
逆 ハ ー レ ム
作れちゃうのでは?
そんな……!そんなことがあって良いというの……!?
作れなくたって勇者一行はとんでもない名誉。たとえ平民から選ばれてるにしろ、間違いなく貴族に養子に入っているはず。将来めちゃくちゃ安定じゃない!
……もしかしてこれ、ゲームか何かなのだろうか。巷でそんなアニメや小説が流行っていた気がする。よく考えてみると、剣と魔法の世界だし、私聖女だし、魔王倒しに行くし……。勇者ってのが一人じゃなくて魔王倒しに行く各国選りすぐりの少数精鋭の討伐隊全員のことを指すのはちょっと違うかもだけど、私の髪色をはじめとする国民皆髪色も瞳の色もカラフルだし。さっきのサフィナ様も艶やかな深緑だ。
いくら社会人になって気力がなくなってきてたからって、ちゃんとアニメとか漫画とかちゃんと追っておくんだった!もしかしたら逆ハーに必要な条件とか、そもそも魔王の倒しやすい条件とかあったかもしれないのに!生きて帰りやすいことだってあっただろうに!
……うん、まあ、とりあえずサフィナ様の婚約者以外で、いい人がいたらいいな。あわよくば逆ハーもどきでちやほやされたいけど、まあ現実的にありえないよね。よっぽど抜きんでて優秀とかでもない限り、聖女の血を入れるために男ばっかだろうし、あっちもそのつもりでいるだろうし……。サフィナ様の婚約者除く三人の中から結婚相手を選べたら良いな。
どんな人たちがくるんだろう。
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どうしてこうなった
「悪いが、エレオノール様。俺が愛するのはビゼットただ一人。」
「クリス……!俺もだ!」
「おや、エレオノール様じゃないかッ!僕の美しさに見惚れてしまったのかな?」
「申し訳ありませんが、私はサフィナ様一筋ですので。この面子には同情申し上げますが……。」
うん。
そうだよね……。
「私もつれていってください!この大陸では珍しいかと思いますが、私は妖術というものをつかう魔術と似て非なる妖術士です!」
女の子が増えて癒しができたと思ってたこともありました。
「はあ……魔将軍ソリアン様。この大陸まで追いかけてきた甲斐がありました。なんと麗しい。でもその麗しいお顔を苦痛で歪めるのはこの私です……!」
ほんっっとうに!
どうして!こう!なった!
途中で心が折れました……。需要があれば心を入れ換えたいと思います。