質問の意図
数分後、連れて来られたエヴァルドに、緊張した様子は見られない。
アイリが離宮へ行った理由を、療養だとエヴァルドも信じている。倒れた事も知らないのだろう。
顔を見たくないと一時は思ったが、知る必要がある事は多い。
「お呼びでしょうか、陛下」
「王としてお前を呼んだわけではない。聞きたいことがある」
そう言いながら、座るように促す。従者は気を利かせたのか、部屋を出て行った。
「なんなりと」
「お前は、アイリをどう思っている?」
微笑むエヴァルドを見つめ、ファビアーノが口を開く。自分でも思っていた以上に自信の無い声で、思わず笑いそうになった。
言われたエヴァルドは、キョトンとした顔をしている。突然の質問に、驚いているようだ。
「……第一王妃様だと思っておりますが?」
「そうじゃない。今でも好いていると言うならば、考えなくもないという事だ。アイリもその方がよいのでは無いだろうか」
「兄上?何を言って……」
「王妃にも息抜きが必要だろう」
重々しくそう口にすると、エヴァルドが勢いよく立ち上がった。見た事も無いほど、真っ赤な顔をして。
「あなたは!彼女を馬鹿にするにもほどがある!」
吐き捨てるように言った言葉に、今度はファビアーノが驚いた顔をする。これほどに怒るエヴァルドを見たのは、生まれて初めての事だった。
そのエヴァルドは一瞬で、アイリが離宮へ行った、本当の理由を悟ったのだ。