表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/103

水の泡とするには惜しい

ただ、それを素直に口にするのは癪だ。


そう思ったファビアーノは、腕を組み、言い訳を考える。本心では、心配で仕方なかったが。


この半年というもの、手紙ですらアイリと言葉を交わしていない。自分に非があるとはいえ、一通くらいくれても、と思わなくも無かった。


「アイリから手紙の一通もないぞ。子供たちには来るのに」


不機嫌さを取り繕って言うと、従者はため息を吐いた。やれやれ、と呆れたように首を振る。


「陛下。何を子供のような事をおっしゃっているのです。会いに行けばいいでしょう。謝罪も直接なさいませ」


尤もな意見だ。


小さい頃から自分を知る従者には、自分の思いなどお見通しなのだろう、とファビアーノは小さな笑みを浮かべる。


ファビアーノがさんざん言い訳を考えていたのは、怖かったからという一言に尽きる。アイリはもう二度と、自分に笑いかけてくれないのではないか、という恐れを抱いているからなのだ。


だが、いつまで逃げても、答えが出る訳もない。分かっていたのだが、こんなに時間がかかってしまった。


失ってからでは遅い。


アイリが湖に落ちたあの日に、そう思ったはずなのに。


「……そうだな。エヴァルドを呼べ」

「え?」


思っていた返事と違った従者が、珍しく驚いて目を丸くする。


「戻っているだろう。早くしろ」


さっさと行け、と言うと、従者は大人しく出て行く。一人残ったファビアーノは大きく息を吐き、祈るように目を閉じた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ