ある点においては未熟者
その後、従者は玻璃の宮へ戻ると、ファビアーノの執務室へ向かう。室内に入ればそこには文官がいて、書類を受け取り、従者に会釈をして出ていった。
「……今のは議会棟の者ですね。ということは、完成したのですか」
「書類はな。だが、肝心なのはこれからだ」
「それもそうでした」
従者はそう言いながら慣れた手つきでお茶を淹れ、執務机に置く。それを飲んで一息つくファビアーノに、それにしても、と口を開いた。
「三王妃制の廃止を考えているというのに、何故迎えに行かないのですか?」
三王妃制を廃止して、王妃はただ一人とする。三人王妃を娶る事は強制では無いが、空いている枠があれば、余計な争いを招きかねない。
アハティアラ家やヴェシサーリ家のように、強引に据えようとする家が出てくる可能性は、なきにしもあらず。
であれば、元から一人だけにすればいいのだ。この考えを初めて口にしたのは、三ヶ月ほど前では無かっただろうか。
ファビアーノは、痛いところを突かれたかのような顔をしたが、ほんの一瞬だった。
「まだ議会での承認が通っていない。それに……」
目を泳がせるその姿に、従者は苦笑した。
二十歳という若さでファビアーノが即位して、そろそろ六年になる。これまでがむしゃらにやって来て、ようやく、落ち着いてきたのだ。
王の威厳が備わった、というべきか。それなのに。
「我が王よ。あなたは王妃様をどうしたいのですか。このまま寂しく、余生を離宮で過ごせと仰せられるのですか?」
「そこまでは言ってないが……」