いつだって心配
「……陛下は、いつまでアイリ様を、こちらに置いておかれるのかしらね」
侍女の一人が、ポツリと呟く。
部屋の中からテラスの方を見守りつつ、侍女たちも休憩をしていた。王宮に居た時よりも業務は少なく、こうして過ごす事が増えた。
時折アイリも一緒に過ごす事もあり、楽しくはあったが。やはり、変わり映えのしない生活は退屈である。
「……アイリ様も、王宮に戻りたいと思っていらっしゃるように、最近は感じるわ」
「そうね。来たばかりの頃は、体調が悪い事もあって、部屋に籠りがちだったけれど」
「落ち着いてからは、会いたいという思いが、甦ったのではないかしら」
口々に言う侍女たちに、ミーナも同意だと頷く。
国王へ宛てた手紙を、書いては捨てている。流石に読みはしないが、アイリがどんな思いでそうしているかは、想像がつく。
子供の事を知らせたいが、拒絶されるかも、と恐れているのだろう。
機嫌を伺う手紙の一通も無い事が、国王の冷めない怒りを物語っているのでは、と考えているに違いない。
期待しない、と自分に嘘をついて。
「何か、きっかけがあるといいわね」
誰かが呟いた言葉に、その場にいた全員が頷いていた。