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期待は虚しいと知る

三ヶ所にある離宮のひとつ、琥珀の宮。海を望む小高い丘の上に建てられた、琥珀色の外壁が美しい宮殿だ。


王が滞在中であれば、ご機嫌伺いに貴族がひっきりなしに訪れ、賑やかなものである。けれど、そうでない今はとても静かで、アイリと一握りの使用人たちにとっては、広すぎると感じる宮殿だった。


そんな宮殿内の一室で、アイリは鳥の囀りに目を覚ました。


僅かに重くなった体をゆっくり起こし、窓の向こうへ目を向ける。綺麗な青空に微笑んでベッドから降りると、裸足のままバルコニーへ出た。


アイリが使っている部屋は二階の東側にあり、昇る朝日と月、そして煌めく海が一望出来る。もうすっかり見慣れてしまった光景であるが、何も見えないよりはずっといい。


朝日は既に昇り始め、海を輝かせている。


「……あなたも、飽くほど見るようになるのかしら」


目立ってきた腹部を撫でながら、アイリはひとりごちた。


離宮へ来てからアイリの妊娠が発覚したわけだが、城へは連絡していない。どちらの子だ、などという、馬鹿げた質問を受けたくなくて。


一度も訪れないファビアーノに、アイリはもう、期待するのをやめてしまった。


だからアイリは、この部屋を使っていると言ってもいい。王妃の部屋は最上階の、王の部屋の正面にある。今いる部屋は本来、王女の為の部屋だった。


上まで上がるのがきつい、というのを今は理由にしているが、アイリはまだ妊娠が分かる前から、使うつもりは無かったのだ。


あんな屈辱的な夜の後で、王妃である事に何の意味があるというのか。信じていない王妃など、いてもいなくても同じ。


それがアイリの考えだった。


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