表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/103

気遣いの者たち

次の日、アイリは笑顔でいようと決意した。子供達に、笑顔の自分を覚えていて欲しかったし、最後かもしれない思い出を、悲しいものにはしたくない。


王宮では、アイリは療養のために離宮へ行くという事になっている。


一緒に行きたい、としばらく駄々をこねていたエヴェリーナも今は大人しく遊んでおり、マティアスは幼心に何か気がついているのか、何も言わずに一人で黙々と本を読んでいる。


時々、チラチラとアイリに視線を向けるが、目が合うと逸らされた。


それに一抹の寂しさを感じながらも、これでよいのだ、と思った。自分がいなくても、彼らは大丈夫だろうと。


問題児でもないのだから、その点も安心である上に、彼らはこの後、瑪瑙の宮で暮らす事になる。その日の午後、ファビアーノの従者が伝えてきたのだ。


それもまた、アイリの安心できる事柄の一つである。


ミーナから事情を聞いた侍女たちは、王の行動に憤り、全員が一緒に行くと言ってくれたものの、大袈裟にしたくないから、と断った。


供は数人。それで十分だ。


私が悪いのよ、と儚く笑うアイリに、彼女たちは何も言えない。私の代わりに殿下方をよろしくねと言われては、頷くしかなかったのだ。


ただ、ファビアーノの行動に憤っているのは、瑪瑙の宮の侍女たちも同じであった。


彼女たちは、怒った様子のファビアーノが玻璃の宮へ行った後に、泣き腫らした顔のアイリが出て行く様子を目撃している。


何かがあったのだな、と思うのも当然の事。侍女の一人がミーナに事情を伺った。


それを聞いた彼女たちは、本来の業務を全て放棄する、とまで言っていたが、流石にそれはミーナが止めさせた。


アイリはそんな事を望まない。今のアイリに必要なのは、静かな場所での休息である。ただ、ミーナも瑪瑙の宮の侍女たちの態度までは、変える事は出来ない。


瑪瑙の宮の侍女たちは、全員が年配で、アイリは自分の子供とあまり変わらない、という者も多い。


陛下はアイリ様の何を見ていたのだ、とアイリに同情する声が多いのも無理はなく、態度が冷ややかになるのはしょうがない。自分が何をしたか思い知ればいい、と侍女たちはこっそり、決意を固めていた。


そんなわけで、アイリの味方は多い。それが救いだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ