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ある娘の笑い

『お前は王妃になるのだ。その為に生まれたのだ』


物心ついた頃から、来る日も来る日も、両親からそう言い聞かされて育ったオネルヴァは、それを信じて疑う事が無かった。大好きな両親が言うのだから、そうなのだと。


ヴェシサーリ家から王を出す事が、一族の悲願だった。これまでは政敵に後れを取ったり、王妃となっても男児を産めなかったりと、未だ叶っていないその願望。だからこそ両親は、そう言い聞かせ続けてきたとも言う。本人に自覚を持たせるのが、一番だと考えて。


だがオネルヴァは、そんな事は知らない。ファビアーノの肖像画を眺めながら、早くお会いしたいと、ただただ想いを募らせていた日々。それがオネルヴァの、変わることの無い日常だった。


やがて、ようやくその日は訪れたが、一番では無かった。そもそも、皇太子時代に既に妃がいたなんて、知る由もなかった。それでもオネルヴァは、愚鈍なまでに素直であったから、あれは無理矢理押し付けられたのよ、という母の言葉を信じた。


二番目になった事には多少の憤りを感じなくも無かったが、結局は王の子を生みさえすればいい、と考えるようになる。そうすれば王の愛を勝ち取れる、という侍女の言葉を信じていた。


ただ、理由はどうあれ、ファビアーノが自ら選んだのはアイリだけで、オネルヴァも亡きマリッカも、前国王がそれぞれの家からの要請を断りきれなかったが故に王妃になったのだが、その時のオネルヴァが知るはずもない。


後宮に入ったオネルヴァは最初の夜に、いかに自分がこの日を待っていたかをファビアーノに雨のように浴びせ、夢のような夜を過ごした。と、少なくとも本人はそう思っている。


ところがどうだろう。


王は、オネルヴァの元へは一度きり訪れただけで、一向に姿を見せない。それどころか、すぐにマリッカの二回目の妊娠が発覚する始末。


何故そうなるのか、オネルヴァはまったく分からなかった。王妃となるために育てられた自分が、マリッカに劣るはずがないと、思っていたのだ。初夜の自分に王が引いた、などとは思い至る筈もない。自分に非があるとは、夢にも思っていないのだから。


マリッカに追従するふりをしていたのは、弱味を見つけたかったから。あわよくば、追い出してやる、と考えていた。そんな事出来るはずもないのに、自分なら出来ると信じきっていたから。


そしてアイリが輿入れして来たとき、オネルヴァは好機が来たと思った。それを思い付いた時、これですべて正しい道に進むのだと、思わず笑い声をあげてしまったほどに。


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