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王弟の祝福

膝を突き、エヴェリーナを抱き留めたエヴァルドは微笑んだ。滅多に会わないのに、慕ってくれる姿が嬉しい。ついつい甘やかしてしまいそうになるが、それもまた自分の役目では無い事は知っていた。


「おはようございます、エヴェリーナ殿下」

「おはよう!」


体を離して挨拶をすると、元気な挨拶が返ってくる。笑った顔が太陽のようで、兄王様にそっくりだなとエヴァルドは思った。


「おはようございます、叔父上。今からお仕事に行くのですか?」

「はい、マティアス殿下。昨夜の雨が止みましたので散歩をしてから」

「僕たちと同じですね」


遅れて歩み寄って来たマティアスも、小さく笑って挨拶をする。マティアスの控えめな笑みは、幼いながら、優雅さと賢さが垣間見えた。この様子なら、きっと立派な王となるだろう、と今から期待させる。


「ごきげんよう、エヴァルド様。よいお天気で散歩日和ですわね」


笑みを含んだようなアイリの声に、静かに顔をあげる。微笑みを浮かべるその姿を見れば、幸せに溢れている事は疑いようもない。本当に良かった、と自然と笑みが零れた。


いつか、ザヴィカンナス侯爵に会ったことを思い出す。彼は礼儀正しく、謝罪の言葉を述べた。別にそんなものはいらなかったのだけど。さらにザヴィカンナス侯爵は、娘は心身共に立派な王妃となった、と意味ありげな視線を投げ掛けて来た。


おそらく、だから変な事を考えるな、と言いたかったのだろうが。そんなつもりは毛頭無いエヴァルドは、苦笑するしかなかった。自分は周りから見て、そんな風に見えているのか、と。


エヴァルドは立ち上がると、王妃に対する最敬礼をする。優雅に笑ってそれを受けるアイリはまさに、王の妻に相応しい。そんな事を思いながら、エヴァルドは口を開く。


「本当にそうですね、王妃様。こんな天気の日には、散歩しない訳には参りません。そのおかげで、次に描く絵の題材も決まりましたし」

「まぁ、それはよい事を聞きましたわ。殿下方もあなたと似たようなものですの。おかげでお勉強は後回しになってしまいました」

「それはそれは。昔の兄王様にそっくりでございますね」


幼い頃、天気がいいから、とわざわざ遊びに誘いにエヴァルドの元へ来たものだ。今はほとんど仕事の上でしか関わりが無くなってしまったけれども、第一王妃だったファビアーノの母もこっそりお菓子をくれたりして、二人はいつも仲良く過ごしていた。


懐かしんで笑うと、アイリも笑った。そっくりだと言われた二人も、嬉しそうに笑っている。


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