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太陽も負ける

その事故があって以降、ファビアーノのアイリへの寵愛は眩しいほどであった。


貴族たちは勤務中でも、手が空けばその話題を口にしている。第二王妃を差し置いて第一王妃となった日から、愛されているのだな、という事は誰もが気がついていたが。


しかし、現在の寵愛ぶりは彼らの想像以上である。


少しでも手が空けば会いに行くし、夜は、本来なら瑪瑙の宮へ使いをやって来させるところを、待つ時間も惜しいとでも言うかのように、自らの足で真珠の宮へ迎えに行く。


公務が立て込んでいる時などはさすがに控える事もあるが、夕食の席にアイリを呼べば必ず玄関先で出迎えた。これは、それまでのファビアーノには考えられない事だ。


そもそも、貴族たちのファビアーノの印象は、仕事人間である。オネルヴァを王妃に迎えて以降、瑪瑙の宮へ王妃を召し出す事もなく、仕事ばかりしていた。国王となったばかり、という理由もあったが、皇太子であった頃から、その傾向はあったのだ。


子をなす事も王の義務であり仕事である。そう考えていた節のあるファビアーノを知っている者たちにとって、今回の事は予想外の出来事と言える。真実かどうかは疑わしいが、王もついに愛を知ったのか、などと涙する者もいたとか。


それとは裏腹に、そんな国王が愛するのだから、王妃はきっと大層な手練手管を弄しているのだろう、と悪しざまに言う者も中にはいるものだ。ザヴィカンナス侯爵家をよく思わない人間や、オネルヴァの実家がそれである。


しかし、そんなものは寵愛ぶりを前に霞んでしまうのだった。むしろファビアーノの態度は、そういった者たちにも見せつけてやれ、と言わんばかりなのだ。


舞踏会でも常に隣に置いて離さないし、お忍びで出掛けたりもする。ある侍女が語ったところによると、王は以前よりも柔らかい表情で笑うようになったとか。その変化は見ていて微笑ましいものである。


それでも愛欲に溺れる事もなく、これまで通りに、いや、これまで以上に仕事をこなすのだから、文句のつけようもない。そしてそれは、それを支える存在が常に傍らにあるからこそ。


一緒に笑い合う二人の姿は、理想の夫婦像だと言われるようになるまで、大して時間はかからなかった。次第に庶民の間にもそれは広まり、二人を投影した劇が演じられるなど、ファビアーノの支持を高める結果となったのである。


そして、最も間近でアイリの王への愛を感じたのは、他ならぬ、元婚約者のエヴァルドであろう。


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