表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/103

穏やかな日々に

――――翌日。


王宮から東の方へ進むと、風光明媚な湖水地方に出る。大小様々な湖が美しい水を湛える、王家の保養地でもある場所だ。近くに離宮の一つがあるが、泊りがけとなると事前の準備も必要であり、人も荷物も増えるし大変だろう、という事で今日は日帰りとなっている。


国王一行がその湖に辿り着いたのは、正午近くになってからの事。一台の馬車に国王夫妻と二人の子供たち。その後ろに続く馬車には、四人の侍女が乗っている。騎乗したラウロと護衛兵がその周りを固め、彼らは何の問題もなく目的地に到着したのだった。


道中、マティアスとエヴェリーナは嬉しそうにはしゃぎ、馬車から外を眺めては、初めて見る町を指差していた。同乗しているアイリやファビアーノに、気になる物があれば、あれは何、とすぐに問いかけ、好奇心いっぱいだ。


馬車から顔を出したりする事には、ひやひやしていたアイリだったが。そのおかげかどうか、苦手な馬車の揺れが気にならず、アイリにとっても、楽しい旅路となったのである。


真っ青な空を映した湖の側で昼食を摂り、その後は思い思いに過ごしていた。王家の人間しか入れない一帯にいるため、自然の音だけに包まれている。さらさらと梢を揺らす風が、湖に足を浸して涼むアイリの髪を靡かせ、日の光がそれを煌かせていた。


ファビアーノは木陰で目を閉じ、エヴェリーナは疲れたのか、侍女に凭れて眠っている。一方のマティアスは様々なものに興味を示し、元気に動き回っていた。それを見守る侍女の顔にも笑みが浮かび、ゆったりとした時間が流れていく。


ここ最近の忙しさが、これで癒される事だろう。戻ればまた忙しくなるけれど、今だけはそれを忘れてしまって平穏を噛みしめたい。そう思いながら、降り注ぐ日差しにアイリが目を細めた時だった。


「アイリ様!」


向こう岸に居たマティアスが、両手で何かを挟むように掲げ、嬉しそうに走りよって来る。何か見つけたのだろう。見た事のない植物か、虫や蛙か。ここ最近のマティアスはそういったものに興味を持ち始めたようで、図鑑を面白そうに眺めていることが多い。


ある時は虫を捕まえて来て、虫が苦手な侍女を震え上がらせ、アイリが注意した事もあったが。万が一そういう場合でも、ある程度は平気なアイリは、一体何を持って来てくれるのかしら、と微笑みながらゆったりと構えている。だが、怪我をしたりしては大変だ。そう思ったアイリは、注意を促す事にした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ