表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/103

それは恋煩い

「アイリ様?」


しばらくぼんやりとしていたアイリに、いつの間にか戻ってきたミーナが声をかけた。陛下はもうお帰りで、とさらに問いかけると、力ない笑みが返ってくる。


アイリが、ファビアーノの帰った後、寂しげな顔をするようになったのは、いつからだろうか。少なくとも、ここ最近の話ではない。


だがそんな姿も、ミーナには微笑ましいのだけれど。あの小さかったお嬢様が、と感慨に浸るのも一度や二度ではない。


「殿下方はお昼寝に行った?」


その問いに頷きながら、ミーナはアイリの表情を窺う。


輿入れした当初はまだ、どこか幼さを残していた。そんなアイリが今や、花が開いたような美しさを備え始めている。


第一王妃としての責任、そしてファビアーノへの愛で、アイリは心身共に大人になったのだろう。ファビアーノがそれに気が付かない筈が無い。瑪瑙の宮へお呼び出しがかかるのも、きっと時間の問題だ。


と、ミーナは思っているが、本人はまだ無自覚のようだ。呼び出しが無い理由に悩んでいるのもお見通しである。しかし、あえて何も言わないというのもアイリの為だった。


「陛下がね、明日は皆で湖に行こうとおっしゃったのよ」

「それはよろしいですね。お昼の用意もしなければ。後ほど、殿下方の希望を伺いましょう」

「お願いね。そういえば二人にとっては、初めての遠出になるのかしら。マリッカ様はあまり遠出は出来なかったと聞いたから。でも、二人とも楽しみで眠れなくなるかもしれないから、知らせるのは明日にしましょう。きっと喜ぶわ」


それは殿下方だけではないだろう、とはミーナは口にしない。頬を紅潮させ、目を輝かせているアイリを、微笑ましく見つめている。


「なあに?何かついている?」


ぺたぺたと顔を触りながら言うアイリに首を振り、違うことを口にする。


「いえ。残念ながら、私は遠慮してもよろしいですか。最近、どうも足の調子が悪くて。長く馬車には乗れないかと」

「そうなの。それは本当に残念だわ。昔はどこへでも着いてきてくれたから」


今では想像も出来ない程、お転婆だったアイリには手を焼かされたものであるが、振り返ってみればいい思い出だ。


「……実は私は、アイリ様が輿入れをする時に辞めるつもりだったのです」

「初耳だわ」

「ええ。そうはならなかったので、話しませんでした。アイリ様が一緒に来てと、言ってくれたお陰ですよ」

「ここまで一緒に来てくれてありがとう。本当に、ミーナには助けられてばかりよ。これからも側にいてね」


微笑みながら言ったアイリに、ミーナはしっかりと頷いたのである。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ