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その翌日の夜、アイリは真珠の宮に呼び出された。


侍女と一緒に向かうと、アイリだけが三階へと誘われる。不安そうな面持ちの侍女を残し、アイリは真珠の宮の侍女に先導されながら、マリッカの寝室へと通された。


夜なのだからいつもお茶会をする庭は無いとは思っていたが、さすがに寝室に通されるとまでは考えていなかったアイリは少し驚く。よくても一階の客間か居間だろう。寝室へ呼ぶのは大抵、内密の話である時だ。


王妃の為を思って王も遠慮している場所に、自分が入ってもいいのだろうか。この場所は、王妃が唯一何を気にする事も無い私的な場。同じ王妃という立場ではあるが、そこに招かれるほど親しくなったわけではない。


マリッカは寝台の近くに用意された椅子に腰かけ、アイリに向かいの席を示す。アイリは何が始まるのかと内心びくびくしながらも、平静を装って椅子に座った。


侍女が温かい飲み物を持って来て下がり、二人きりになったところでマリッカが静かに口を開く。


「急にお呼びたてしてごめんなさい。けれど、どうしても、話さなければならない事があるのです。貴女になら、お伝えしてもいいと思って呼びました」

「何をでしょうか?」


まったく見当もつかないアイリは、素直にそう問いかけた。自身には無いその素直さに、マリッカは淡く笑う。自分自身の性格に矜持を持ってはいるけれど、自分に無いものはやはり、羨ましいと思ってしまうのだ。


「……私はもう、あまり長くはありません」

「え?」


その告白は思いもよらず、思わず絶句してしまった。これは何かの罠だろうか、と考えたが、マリッカの顔は真剣だ。まさか、と微かな声で言ったアイリに、マリッカは儚げに笑って首を振る。


いつもは勝ち気なその顔に浮かぶ悲しみに、アイリは驚く。お茶会の時のマリッカはいつだって、自信に満ち溢れて輝いて見えていた。


「輿入れ前から言われていた事です。けれど父上はこれを陛下にも内密にし、無理矢理輿入れさせたのです。確かに薬で抑える事が出来、これまでは何の問題もありませんでした。けれど、それももう無理なようです」

「……何故、それを私に?」

「あなたなら、自分を殺そうとした女と、自分を助けようとした女の、どちらを信用しますか?」


その質問の答えは明白だった。アイリが同じ立場だったとしたら、おそらく同じ選択をする。なのでそれもそうか、とアイリは納得して頷いた。あの場でオネルヴァは、ただ見ていただけ。マリッカも頷いて、言葉を続けた。


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