表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/103

オネルヴァ・ヴェシサーリ

瑠璃の宮へと帰り着いたオネルヴァは、侍女へお茶の用意をするように指示をすると、居間のソファへ腰をおろす。柔らかすぎず硬すぎないそれが、彼女のお気に入りだった。


そこへすかさず、侍女たちがやって来て口を開く。皆同じような顔立ちのせいで、オネルヴァは名前も覚えていないが。覚えなくても特に問題はないため、そのままにしている。


「第三王妃様はいかがでした?」

「ああ。大した事は無かったわよ。髪の色が珍しいだけなんて、陛下もきっとすぐ飽きるわ」

「それはようございました」


微笑みながら言った侍女に、オネルヴァは肩にかかった髪を後ろへ払いながら、満足そうな表情を浮かべる。


オネルヴァの侍女たちはいつも、望む答えしか返さない。主人の気持ちを察せない者はいらない、というのがオネルヴァの考えだ。ゆえに侍女の入れ替わりが激しいが、気にするオネルヴァではなかった。


それが当たり前だったのは、父がそういう者たちを選んだから。だからオネルヴァの周りにいるのは、いつも笑って頷いてくれる者たちばかり。


端からみれば奇妙な光景でも、これが日常なのだ。否定しない者しかいないのは、居心地が良い。誰も彼女を咎めない、怒らない。小さい頃からずっとそうだった。だからこれが、オネルヴァには当たり前。


自分がどれほど世間知らずかを、オネルヴァは知らない。


「それにあんな小娘では、陛下も満足できないでしょう。見るからに不健康そうだったもの」

「もちろんそうでございましょう。我らがオネルヴァ様こそ、王妃と呼ばれるに相応しいお方」

「そうですわ。あのアハティアラの娘などよりもずっと」

「こんなにも美しいあなたの魅力に、陛下もお気づきでしょうに。焦らすのがお上手ですわ」


次々に褒めそやす侍女たちに、オネルヴァはさらに笑みを深くする。初夜以来、王からのお召しが無いことなど、忘れ去っているのかのように。オネルヴァにはもはや、それはどうでもいい事。自分が国王を愛してさえいれば。


「そうね。けれど、それを黙って受け入れるのも、わたくしの務めよね」


ふう、と訳知り顔で息を吐いて、運ばれて来たお茶を口にする。と、すぐに笑みを浮かべて、お茶を淹れた侍女を見つめた。


「あなたのお茶は最高だわ。あちらのお茶は苦味が強くて」

「恐れ入ります」


ニコリと笑って、侍女は一歩後ろに下がる。


新たな王妃が来ても、オネルヴァの日常は変わらない。楽しい囀ずりを聞かせてくれる小鳥たちの中で、ただ笑っていればいい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ