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「勿体ないお言葉、ありがとう存じます。お二方もなんとお美しいことかと、驚いておりました。何か秘訣があるのでしょうか?」


二人がどう捉えたかは分からないが、その言葉は嫌味でも何でもない。アイリから見て、本当に二人は美しいと思ったのだ。


輿入れする前に、二人に関して何の情報も得ていなかったため、先入観無しの純粋な心で見ることが出来たからだろう。余計な情報を与えてくれなかった父に、アイリは少しだけ感謝した。


ここで敵対するような真似は、アイリの望むところではない。王妃たちの争いは、そのまま実家同士の争いに発展しかねないからだ。


マリッカの実家のアハティアラ公爵家も、オネルヴァの実家のヴェシサーリ侯爵家も、古い歴史のある、王族の血を引く家系である。二人は王妃になるべくして育てられ、マリッカはファビアーノの皇太子時代に、オネルヴァは王として即位した一年後に、それぞれ嫁いできた。


噂では、両家が半ば強引に話を進めたという。それもあり、二家に劣らない家柄のザヴィカンナス侯爵家は、王弟の婚約者で妥協した、という話もあるが。真相は明らかになることはないだろう。


アイリの問いかけに、マリッカは優雅に扇子を弄びながら、思案する顔つきになる。その姿は、とても二人の子供がいるようには見えず、若々しい。


王子と王女だけ、と考えれば心許ないけれど、唯一王の子を生んだ王妃である。その自負が、見た目にも現れているのかもしれない。


「そうねえ。秘訣と呼ばれると困りますね。私は、私の思うままに過ごして来ただけですから……」

「それはもちろん愛ですわ。マリッカ様は陛下の寵姫ですもの」


考え込むようなマリッカに、オネルヴァが即答する。


「あらありがとう、オネルヴァ」


ふふふ、と笑ったマリッカは嬉しそうだ。その言葉は、本心からだと思っている様子である。しかし、アイリは違和感を覚えた。オネルヴァは、明らかに目が笑っていない。


果たしてマリッカは、本当に気が付いていないのだろうか、と訝しむ。この二人の関係性が、いまいち掴めない。


そんなアイリをよそに、マリッカは笑みを浮かべたまま口を開く。


「陛下もたまにはお疲れの日もあるでしょうから、そんな日はあなたが癒して差し上げてくださいね、第三王妃様」


そんな日は来ないだろうけれど、と言外に含まれているようにアイリは感じた。


気の強そうな見た目と同じく、自信に満ち溢れた人なのだ。流されるようにここにきてしまったアイリには、それが少しうらやましかった。


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