祝福
アイリが王宮へ戻ったのは、それから一年後の事だった。
すでに王妃の出産は広く知れ渡っており、お祝いムード一色である。
生まれたのは王子で、ヨエルと名付けられた。マティアスもエヴェリーナも大喜びで、毎日毎日、ヨエルがいる珊瑚の宮へ様子を見に来ては、早く大きくならないかな、と成長を楽しみにしている。
一時期、ザヴィカンナス侯爵が、密かにではあるが、ヨエルを東宮にと推そうとしていた事もあったが、アイリが、マティアス殿下に決まっています、と突っぱねてからは、おとなしくしている。
そして、ファビアーノの最重要課題であった三王妃制廃止は、アイリが戻る三か月前に可決された。
オネルヴァは最後まで、陛下を信じていますわ、としか言わず、抗いもせずに王宮を後にした。今も、屋敷でそう口にしているようである。いつか必ず、陛下が迎えに来ると。
しかし、アイリを嵌めようとしていた事を、一族の者は知らされているため、哀れみこそすれ、その言葉を真に受ける者はいなかった。一族追放にならなかっただけ良かった、と安堵するばかりだ。
そんな様子である為、再婚も望めず、やがて精神を病んでいるとされ、施設に送られたようである。
それはアイリは知らず、ファビアーノだけが知っている。