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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

かなしみろぼっと

今日日、貴方だけと、かっこいいロボットに乗りこんで波うる敵を一網打尽に打ち倒してほしいなんて言っても、どれだけの子達が目を輝かせるだろうか。話しを聞き入れてくれるだろうか。


そして、代償が必要とあれば更に減ってしまうだろうが、それでもその時の勢いでうんと答える子は少なからずいるものだ。



少年の目の前に能面で白一色のロボットが立っていた。

なんでも巨大な謎の不明ロボットが宇宙から襲来してくる。

それは世界中で出没するらしいのだけど、破壊の限りを尽くす。

今のところこの宇宙人に有効な殲滅手段は核兵器と、被爆国であるにも関わらず敵が来ればこれしか対抗出来ない現状では乱発する他ないのである。九州は焦土とかし四国、中国地方も戦火を拡げている。

ロボットのコクピットだろうか胸に人ひとりが入れるスペースが開き、足元までエスカレーター状の階段が親切に降りてくる。

少年はシュミレーションをしていたから驚きはしなかったが、すこし緊張した様子でコクピットへ上がってゆく。



外見はまるでヒーローロボットとはかけ離れた弱そうなロボットだが、中に入れば様にはなっている。至る所にケーブルが張り巡らされ意味のわからないいくつもの計器を眺めると、誰でも急造という言葉を彷彿とするだろう。武器は東京スカイツリーと同じ長さの巨大な剣と、慰め程度の肩に90mmのバルカン砲。

もちろん二足歩行なのだが、足はヒョロヒョロで腕もヒョロヒョロ。立てば富士山と同じくらいなのだがとても弱そうではある。


「聞こえるかねユウタ君、今日の起動は4度目でまだまだ慣れてもいないだろうが、敵は待ってくれない。真っ直ぐこちらに向け進行中だ。シュミレーション通りすればきっと君は勝てる!」


ノイズも無く通信が入る。声の主はここまでくるのにバックアップで支えてくれたスタッフの所長、皆は彼を尊敬の念を込めて先生と呼ぶ。


「先生ありがとう!きっと敵を倒すよ!」


感情の高揚が聞いて取れると、先生も回線は常時オンラインだからこちらでも万が一の時は言うように、最後に健闘を祈ると付け加えると静かになった。


晴天視界は良好。彼方で建物が一直線に破壊されながら何か近づいてくるのが見てとれた。2ヶ月この日のために剣道をしながら学んだ付け焼き刃

、切っ先は敵のくる方角へ向けられる。

暫くしんとした静けさに違和感さえ覚える。

刹那、耳を(つんざ)く鉄がぶつかり合う轟音と衝撃波、ビル群だった灰色の街は茶色の焦土と化す。


「おお!止めたか!」


先生の歓喜の声がこちらにも届く、ロボットに設けられたモニターにはダメージは軽微とあるからこのロボット見た目以上にだいぶタフらしい。

敵のロボットは飛行隊体系で通ってきた道筋は焦土としてきたらしく、敵との衝突に勢いでだいぶ押されたが今は拮抗している。

敵が飛行しながら押し込み、大剣で剣が競り合うように火花を散らしながら受け止める。

火花が周りの建物に被り、街はみるみる燃えてゆく、そこから燃えた芯が黒いものが動くのが微かに見てとれた。注意しないと分からないがそれは汚れや火花とはちがう挙動をしたのだ。

敵は目の前なのだが、物凄い恐怖にも似た悪寒に私は即座にそこだけを拡大した。

予感は的中した。

逃げ遅れたのか人が燃えているではないか。しかも拡大すればあちらにもこちらにも。風圧で身体下部だけ圧死した人。瓦礫に飲み込まれてゆく人。まるで避難なんてされて無かったかのように逃げ惑う人がゴロゴロいて、もう手遅れな人がゴロゴロしている。



ロボットの身体が黒くなってゆくのがわかった。

恐怖に、怒りに、悲しみに、寒くもないのに歯がガチガチして、膝ががくがくして汗が涙が止まらない。

これは感情に左右されるロボットだと聞いていた、コクピット側からの音声はなぜか切られた。






「いつまでもそうしてるつもりだい?」

敵はこちらのロボットより頑丈ではなかったのだろう。拮抗する互いは5分もしないうちにあちらから煙を出し始めると内部で数箇所の爆発。その後活動を止めると、そのままゆっくり離陸し、活動を止め、呆気ない決着となった。

しかし、パイロットはコクピットから反応がない。生命維持装置からは鼓動は高いものの肉体的不可は見受けられない。

先生の再三の呼び出しに音声は聞こえているはずなのだが、返事はなく、かれこれ5時間後強制的にコクピットは開かれた。

コクピット内はまるで地獄絵図だ。悲惨な街の惨状の続きかゲロまみれに気を失っている少年の目の焦点も虚ろに気づいているのだろうか、何も言わない。




それから1ヶ月後、不安定な精神も、カウンセリングを重ねるとやっと元通りかは分からないが笑顔がゆっくりと戻っていた。

なんでも偉い人が言うには、どうしても離れたくない、警報が鳴ろうと死んでも離れたくない市民が残っていたらしい。

それを聞くと少年の罪悪感も少しは和らいだのであろう、すこしほっとした表情を見せた。


「ユウタ君、1週間後に敵が四国に入る。いいかね?次はどうやら格闘戦となりそうだ。生半可な覚悟ではダメだよ。もう一度念を押して聞くがやってくれるね?」


先生のいつもの真剣な眼差しに、ユウタと呼ばれた少年も今では以前のように目を輝かせる。


「倒すよ!宇宙人の好きなようにはさせないよ!」


ユウタの言葉にああ、その意気だとだけ言葉を返し、ロボットとユウタは四国に向け出発した。


辺りは既に戦闘の傷痕ばかり、以前は何万人もの人々がいたらしいが、今ではぺんぺん草も生えない惨状となっていた。

そんなこと構うことなく、まるで人が歩くように一歩一歩のしのし歩いてくるそれは、敵のロボット。

GPSから速度は早くもなければ今ここに立っていて真っ直ぐ来れば明日の朝にはここに着く程度。薄ら姿は見えど、鈍足な敵がこちらに来るのが見えるのは、丈はこちらと同じように巨大だが、腕や足周りは倍以上。背格好から相撲取りを連想させる。



するとどうやらあちらもこちらに気づいたのだろう、それとも射程に入ったのか急に走り出す。徐々にスピードが増してゆくと明日どころかあと3時間と言ったところか、その知らせを聞いたユウタは大剣を構えると、大きく息を吸い込み敵の攻撃に備え、真っ直ぐに睨みつける。


しっかりとした視認できる距離まで来た。全体的に屈強なのだが右肩が異様に膨らみ、タックルの要領でそれを前面に盾のようにして走ってくる。

2体の衝突に合わせて大剣を振り下ろすと、敵の装甲は厚く凄まじく、剣は割れ、タックルの威力に吹き飛ばされてしまった。

どこまでも焦土となっているここでは吹き飛ばされても被害はないが、モニターには損害に致命的なダメージがあると危険を知らせるアラームがけたたましく鳴る。

剣を持っていた右腕は故障で動かない。だが、構うことなく敵が向かってきてまた吹き飛ばされる。危険を知らせるアラームが絶え間なく鳴り、気が動転しながらもユウタは状態を起こそうとするものの、右腕が故障しているからかバランスが悪くうまく立ち上がれない。

そこにまた敵が突っ込む。まるでサッカー選手と蹴られるボールか、ゴロゴロと遂には右腕と頭がもげる始末。


「先生!先生!助けてよ先生!どうなってるの!?どうしたらいいの!?先生!」


通信が度々途絶えると、先生から通信が回復する。


「み、民間人がそっちいる!守るんだ!守るんだ!」


「えっ!民間人!?先生!?」


その瞬間、探すことも要らなかった。視界の目の前、敵ロボットとユウタロボットの間にいつの間にか足を拘束された女性が立っていた。

ユウタは震えた。民間人の女性はこちらを向いていた。その人は大事な人にすごく似ていた。

その人は映像は上手く出せなかったが、どうやら泣いていてすぐさま消えた。

敵の右肩に小さい赤いシミが出来ていて、それがその人だったものだと理解するまでにすこし時間ががかった。


「お、おかあさーーーーーーーーーーん!」


みるみる真っ白なロボットは黒黒と闇に染まってゆく。

なぜ、お母さんがここにいるのか、ほんとにお母さんだったのか分からない。けど、本能がお母さんだったと告げる。

敵がまた黒黒となったロボットに突っ込むと、投げ飛ばされず、そのまま止まった。

重さが変わったように先程まで跳ねていたのに静止し、敵ロボットの自慢の右肩にひびが入り、崩れ出す。

ユウタは涙を流しながら、母が死んだことよりなによりも、

このロボットの事を思い返していた。


《前回、非難警報がならなかったのは、僕を絶望させるため?》


敵のロボットから前回みたいに煙が上がり小規模な爆発を始める。


《母さんが死んだのも、僕を絶望させるため?》


敵のロボットの胸の辺りが人ひとり分ドアのように開くと、出てきたのは人。大人だろうか、そそくさと逃げてゆく。


《あれは宇宙人じゃない。もしかして、ただの戦争?》


「大丈夫かユウタ君!おい!返事をしなさい!」


「…………先生、今からこの国を壊すよ」




読んで頂きありがとうございました。

不完全燃焼に感じてしまったのならばすいません。

またお会いするために腕を磨きます。

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