表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

賽は投げられた

前作、師匠から習った内丹術で異世界脱出!〜旅はつらいよ〜を仕切り直して再び始める事にした作品です。

細部の設定が所々違いますが、初見の人や既読の人も楽しんで読んでください。

「この物語は或る好漢の冒険録である。その好漢は至って普通の少年であったが、ある時摩訶不思議な出来事に巻き込まれ、ある強大な力を手にしてしまった。果たして少年は轍鮒の急を乗り越えて、平穏を手にする事はできるのか。それでは始まり始まり………」



 ーーその日は至って普通の1日だった


 太陽の陽が落ちてきて、秋らしい肌寒い気温を感じさせる天気だった。

 街路樹が紅葉を見せているのを一瞥もせずに、制服を着た少年が一目散に走っていた。


「ふぅ〜急がないと時間が無くなるな」


 右手に鞄、左手に部活道具のスパイクの袋を持った少年は自身の目的の為にある店に駆け出していた。


 見た目は中肉中背であり、適度に筋肉がついていて、正にアスリートと呼ぶにふさわしい体系をしていた。走り慣れたフォームで、風を切るように走る姿は自然と様になっている。


 十分程走ると、ある店の前に辿り着いた。


「到着ぅ!これで本が買えるぞ」


 少年は読書という趣味があり、特に歴史小説や武侠小説などを好みとしていた。

 この日は部活が早く終わったお陰で店に寄れた日だったのだ。


 ーー30分後


「これで欲しかった本を買えたぞ、さて…家に帰って読むか」


 店から出た少年は、今度は歩きながら家への旅路を向かっていった。本を読みたい気持ちが強く、そそくさと歩いていたが、家の目の前の信号に引っかかり立ち止まってしまった。


(おおっと、あとちょっとで家だな。鍵でも出しておくかーー何だこの頭の痛みは!くっ!)


 信号を待っている間に鍵を出そうと財布を弄っていたが。突如頭痛に見舞われて、その場で失神してしまった。





「くっ………何だ……此処は?」


 目を覚ますと見慣れない土地で倒れていることに気がついた。其処は夕闇に包まれている場所であったが、辺りがあまり見えずに詳しく地形についてはわからなかった。


(この青臭い匂いは草の匂いか…て事は森か草原辺りだが多分森だろうな)


 周辺が森だと気づくと、少年はすぐさま明かりを手にする為に、ポケットに突っ込んでいたスマホを起動してライトを使おうとした。すると画面に写っていたある事に気がついた。


(この平成の世の中で、何故森の中で圏外が出るのか…普通1本か2本は最低でも立つはずなんだが?)


 しかしその疑問はすぐに消え去り、ライトをつけて足場を気にしながらその辺りを歩き始め、人を見つけようと探索を開始した。





「すみませーん!誰かいませんか?返事をお願いしまーす!」


 散策を初めて30分が経過しても人とは出会えなかったので、どうしようかとその場で途方にくれてると。


 ーーガサッ!ガサガサッ!


 周りの草むらから物音がしてビクッとし、取り敢えず逃げれるように構えていると。

 一点が赤く光る黒い影が少年の横に飛びかかってきた。


「チッ!コイツは狼か!」


 1匹の狼が喉元を狙って噛み付いてき、間一髪避けた少年は体勢を立て直し狼と正対した。


「ガルルルル……」


(困ったな…確か狼って背を見せたら殺しにかかって来るって本に書いてあった気がするけど、どうなんだろう?取り敢えずもう一度飛びかかって来たら避けれるようにしよう…)


 少年と狼の間で少しばかりの時間が過ぎた所で、事態は急激に佳境へと向かった。


「ワォォォォォォォォン!ワォォォォォォォォン!」


「げっ!ヤバっ!マジかよ…」


 狼が遠吠えを行い、仲間達を呼んできたのだ。

 そのまま動く事も出来ずに囲まれてしまい、八方塞がりのままどうしようもなくなってしまった。


(オイオイオイ…このままだと俺はこの狼達にムシャムシャされて死んでしまうのか。そんな死に方は流石にごめんだが、どうやら悠長に考える時間は無さそうだな)


 藁にもすがる思いで。知っている全ての神に祈ったが何一つ状況は変化しなかったので、以下仕方なく楽に死ねる方法を思い出そうとしていると。


「おーい?其処に誰かいるのか?」


 かなり近い所から男の声がしたので、一か八かで大声を出して呼んでみた。


「助けて下さい!狼に囲まれてます!」


 腹に力を加えて声を出すと。聞こえたのか、此方に男が一瞬にして少年の隣まで飛んできた。


「おい、何で今の時期の森にいるんだ!?今は繁殖期だから気が立ってんだよ。お前のかーちゃんから習わなかったか、あぁ?」


 見た目30代の男は少年に対して怒りと疑問をぶつけたが、知らないという事が顔に書いていたので。ため息をつきながら。


「ハァ……取り敢えずここから脱出するぞ。動くなよ、動いたら巻き込まれるからな」


 そう男は、少年に話しかけた後に一呼吸をした後に思いっきり声を出しながら右足で地面を踏みつけた。


「ハァァァァァァァァ!」


 すると地面から眩い幾つもの閃光が飛び出してきて狼達に襲い掛かり。一瞬の間に直撃して全ての狼を失神させた。

 それを見て少年が腰を抜かしていると、男はある事を尋ねてきた。


「お前さんの名前は何だ?」


 少年はそれを聞いて。素直に答えないと殺される可能性があると思ったので、正直に名前を言った。


「俺の名前は物部太一、物部太一と言います」




 太一はその男の家に連れて行ってもらい、事情を説明した。


「俺はこの世界の人間じゃないです!元の世界で失神したら、森で倒れてました」


「ハァ!?お前さんの言ってることがあまりよくわからないんだが。取り敢えずその証拠を見せてもらわない限りには信じられないな」


 意味がわからないと首を振られたので、太一はスマホなど持っていた教科書はスパイクを使って説明した。それを聞いて男は納得したらしく。


「ほ〜お…成る程、するとお前さんは本当にこの世界の人間という事なのか。俺もそこそこ生きてきたが、そんな人間初めて見たな」


「そうですか……」


 元の世界に帰ることが出来る手段も無く、どうすればいいのかと途方にくれて椅子に座っていると。

 男がある提案をしてきた。


「もし良ければ、お前さんに俺の使える内丹術と言う術を教えてやろうか?次の継承者もいなかった所だし、お前さんが次の継承者になってくれれば俺も助かるんだよなぁ…」


「はぁ……」


 太一は返答に詰まったが、ある一つの考えが頭をよぎった。


(内丹術を使えるようになれば、この世界で旅をして元の世界に帰れる手段を見つけられるかもしれない。面白そうだしやってみるのも吉か)


 少し考えた後に、太一は修行を行うことにした。


「わかりました、お願いします修行をしてください。もしよければ師匠と呼んでもよろしいでしょうか?」


「わかった、師匠と呼ばれる事は無いと思っていたが、呼ばれる様になってみると嬉しいものだ。それでは明日から修行を始めよう」


「わかりました、以後宜しくお願いします師匠」


「取り敢えず服と剣は渡しておくから明日からこれを着ていけ」


 師匠はそう言って、漢服らしき服と、剣を渡してきた。


「その剣は柳葉刀だ、取り敢えずそれで剣の使い方と気の使い方を教えてやる。さあ明日は早いから寝たほうが良いぞ!」


 布団を引いた師匠はすぐに寝付いてしまった。その隣で布団の上で明日の事、元の世界に帰れるのか。を考えていた太一だったが、布団が気持ちよかったのですぐに寝付いてしまった。


 少年物部太一は修行を始め、内丹術と剣術を身につけて立派な道士となった。

 特に気の出力が高く、気の総量なら師匠と同等の力を同じぐらいだった。


 ーーそして2年後


「師匠、修行を付けていただきありがとうございます。俺はこれからこの世界で旅をして元の世界へと帰れる様に頑張っていきます」


「くぅ〜〜〜弟子を送り出すのはこんなに悲しい事なのか!」


 師匠が泣きながら見送ってきたので、太一は慰めた。


「まあまあ。近くに来た時は会いに行きますから大丈夫ですよ。それでは健康に気をつけて」


 師匠を慰めた後に出発しようとすると、師匠が手紙らしき物と金色の道具を渡してきた。


「その手紙はアルヘーンの魔導師の役所に出せ、きっとお前の力になってくれる。金色の奴は俺の師匠から貰った御守りだ。さあ!行ってこい、俺の自慢の弟子よ!天下に名を轟かせる好漢になってこいよ!」


 最後に背中を押して、太一を送り出してくれた。太一は2年間の万感の想いを込めて思いっきり叫びながら森から出て行った。


「ありがとうございました師匠!大きな男になって元の世界に帰れる様に頑張ります!」


 ーーここから伏竜鳳雛の英雄、物部太一の旅が始まった。


ブックマークやポイントなどの評価を糧に頑張って行くので応援宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ