プロローグ
「はーい、みんな5時だよ〜。仕事おわり!」
魔王がこの言葉を発すると魔王の部屋にいる各種族の長達が一斉に立ち上がる。そう。帰社の時間である。各々が帰宅の準備をしていると
「いやー、みんな今日もお疲れ。平和な1日だったね(^.^)」
と、魔王があざとい笑顔で言う。すると、オークの長であるラジールが
「おっさっしたー!!」
と、大きな声で返事をした。彼は今年入社して長の立場まで上り詰めた期待の星である。しかし、脳筋だ。まるでジョ〇ョに出てきそうな筋骨隆々な肉体である。
「お疲れ様です…魔王様…」
暗い返事をしたのは根暗なリザードマンの長のイスルだ。彼は表情も暗い。返事も暗い。とにかく暗い。だが仕事はとても上手い。
「今日も元気無いですね!悩みでもあるんすか?俺でよければ話聞きますよっ!!イスル先輩!」
この言葉をラジールは毎日イスルに話しかけている。しかし、イスルは、
「…なんでもないよ。大丈夫…」
と、答えるばかりだ。
「おいおい、ラジール。イスルはもともとこういう奴なんだ。あんまり激しい絡みをするな」
「あっ、そーでした。忘れてましたテヘ」
「テヘっじゃないだろぅ。まったく。」
ラジールを注意したのは死神の中の死神。死神を殺す死神ダリアである。彼は恐ろしい。死神の武器である鎌は魔王にも届き得ると言われている程だ。一般的な魔物であればビビってしまうのだが、脳筋のラジール。さすがにビビらない。
「はいはーい。3人とも早く帰るよー。出張に行ってる2人にもそのまんま帰宅していいよって伝えるから!」
「わかっやしたー!」
「はい…」
「お疲れ様です、魔王」
「うん、また明日ね〜」
魔王は手を振りながら3人を見送る。3人は魔王の部屋を後にした。
魔王は出張にいっているワーウルフのナベタ、サイクロプスのベニナに終わり次第帰宅するように連絡した。
「あ〜、なんにも起こらないなー。暇だなー。人間せめてこないなかな〜。」
「ハッハッハ。魔王様なにを仰るのです。いまの人間にそんな力ありませんよ。」
「ウオッ!ビックリしたぁ!ジジィやめてくれよー!」
魔王の後ろに現れたのは執事の二エルムである。彼は魔王の父親である先代魔王の時から執事をしている。
「ハッハ。申し訳ございません。魔王様。
さ、帰宅いたしましょう。タクシーは呼んでありますよ。」
「お、ありがとう。ジジィ」