10 転章 霹靂の少女 (攻略対象その1)
秋本和樹視点です。
父方の遠縁に当たるドラ息子が、呆れるほど愚かな事故を起こした。
大型のバイクに乗ってやらかした高速道路での派手なカーチェイス。制限速度を三十キロ以上もオーバーして静岡近郊を一時間近くも警察から逃げ回ったあげく、罪もない乗用車に体当たりし、多くの車を巻き添えにしてクラッシュしたらしい。被害車輌計八台、死者五名、重軽傷者は実に二十名以上にも及んだという。
事故の報告を受けた直後から、我が家は一時騒然となった。一家揃っての鼻つまみ者、ドラ息子の父親が以前大きな不始末をしでかして以来、うちとは縁を切っていたはずだが、こういった事故となるとそうとばかりも言っていられない。書斎にこもった父と兄は、深刻な顔で何やら話し込んでいる。おおかた、我が家との関係が公にならないよう、マスコミ対策でも行っていたんだろう。父の秘書をはじめ、多くの人々が一日中慌ただしく家を出入りしていた。
夜になってから、事故被害者の中に両親の友人である夫妻がいた、という事実が発覚した。不幸な偶然に父も母も強い衝撃を隠しきれなかったが、あの雰囲気からすると、その二人は亡くなった五名の中に名前があったのだろう。同乗していた娘ひとりが辛うじて助かったらしいが、意識不明の重体だという。泣き崩れる母を、父が抱きかかえたまま懸命に慰めていた姿が印象的だった。
その後、春休みが明け、学校が始まってちょうど一月ほどが経過した五月上旬。新年度の慌ただしさの中、事故のことなどほぼ忘れた頃になって、その娘の何度目かの手術が成功し、ようやく意識を取り戻した、という知らせが舞い込んできた。父は直ちに現地へ飛ぼうとしたが、仕事の都合がつかず、代わりに兄が派遣されることになったらしい。ある日の夕食の席で、二人の間にそんな会話が交わされていたのを僕も覚えている。
「貴史、くれぐれも相手のお嬢さんを刺激しないようにな。意識が戻ったとは言うものの、まだ面会謝絶だそうだし。事故の説明をする時は十分注意するように」
「判っています、お父さん。しかし……」
「先ほども言ったが、あいつのことはたぶん大丈夫だ。うちとの関係はまだ漏れていないし、今後マスコミに嗅ぎつけたられとしても、その時は甘んじて認めよう。その程度のことで屋台骨が揺らぐほど、秋本は脆弱ではない」
「…………」
「だから、そんなことをそのお嬢さんに頼む必要はないよ。何といっても、ご両親を亡くした直後なんだ。不用意に動揺を与えるようなことは命にも関わる」
父の強い言葉に、兄は不満そうに黙り込んだ。あいつ、というのはたぶん、事故を起こしたドラ息子のことだろう。兄としては、マスコミに関係が漏れる前に相手の娘を口止めしたいところだろうが、大怪我の直後に聞かせる話ではない、という父の言い分ももっともだ。口を挟むのは慎んだが、僕も父の意見には全面的に賛成だった。
「とにかくお前は、今後の彼女の治療や、生活の補償についてはこちらが全責任を持つ、ということだけ伝えて来ればいい。判ったな?」
「……はい、お父さん。そのようにお伝えします」
二人の会話はそこで終わりだった。僕はその時点で、初めて疑問を口に出す。
「その、入院してる女の子っていくつくらいの子なの?」
「確か、十五歳ということだった。中学を卒業したばかりだそうだ」
「この春に? じゃあ、高校は最初から行けなくなっちゃったんだね、気の毒に。行く学校は決まってたんだろ? 四月初めの事故なら」
「ああ。調べたところでは何でも、非常に優秀な子で、県内一の進学校へ入学する予定になってたらしいよ。その点でも、うちの責任はかなり重大だな。復学できる時期や本人の希望にもよるが、場合によってはこちらで別の進学先を紹介してやる必要があるかも知れない」
そこまでするのか、と僕はいささか驚いた。彼女の両親というのは、父にとっていったいどんな友人だったんだろう。
「お父さんの知り合いの娘さん、だっけ。どんな知り合いだったの?」
「知り合いというか、うちの社員だよ。昔、私が自分で他社から引き抜いてきた」
「え、そうだったの。僕はてっきり、大学の友達かなんかだと思ってた」
そう言うと、父はいつもの穏やかな顔で苦笑を漏らした。
「いや、そうじゃない。十年ほど前、東海地方にうちの情報部門を集積した新会社を設立したのは知ってるだろう? ご夫婦とも、あの会社のシニアSEだ。優秀な人たちで、二人揃って将来を期待されていたのに……残念だよ」
「へえ、そうだったのか……」
人の運命はわからない。ようやくショックが癒えたらしい母も、無言で僕たちのやり取りに聞き入っている。
「娘さんの入学祝いで、家族旅行に出かけるところだったらしい。自宅から高速に乗って間もなく事故に巻き込まれたそうだ。地元からさほど離れる前だったから、たまたま自宅のある町に近い病院へ運び込まれた、と聞いている」
「そう。運が悪かったね」
「そう言って片付けるには辛すぎるな。不運の極みだよ」
沈痛な表情でワイングラスを傾ける父。僕はそれ以上、何も言えず、その話題はそこでいったん打ち切りとなった。
だが、翌日の夜。
「何ということをしてくれたんだ、お前は! あれだけ注意しただろう?」
父の書斎の前を通りかかった時、いつもの温厚な父には似合わぬ大声の叱責が、僅かに開いた扉の隙間から漏れ聞こえて来た。僕は驚いて足を止める。
「申し訳ありません、お父さん。しかしあれは、完全に彼女の誤解です。私は別に『金をやるからマスコミには漏らすな』などという言い方はしていません。あの子が私の言葉を曲解して、そう受け取ってしまっただけなんです」
「話す順序が違うだろう。まず最初に、補償のことを伝えれば良かったんだ。行く前に、お前にはそう指示したはずだが?」
「それは……」
兄の黙り込む気配。しばしの間、書斎では不穏な静寂が続く。
不器用で心配性な兄さんのことだ。おそらく、不安のあまりマスコミ対策のことを先に口にしてしまったんだろう。事故後の神経が高ぶった状態で、相手の少女がそれを歪曲して受け取った、ということだろうか。
やがて父は気を取り直したのか、二人の間で交わされた具体的な言葉を、兄から詳細に聞き出した。
「まったくもう、お前という奴は……。それで、これからどうするつもりなんだ」
ひと通り報告させた後、深い溜息とともに父は兄に問いかける。
「明日、もう一度病院へ行って来ます。会ってもらえるかどうかは判りませんが、とにかくあの誤解だけは早急に解かないと」
「いや、お前はもう行くな。明後日にはこちらも一段落するから、今度は私が自分で行って、彼女に謝って来よう」
「お父さんが? わざわざ本人に謝りに行くんですか?」
「当然だろう。お前の不首尾は、行かせた私の責任だ。このままにはできない」
「お父さん……」
「貴史、この失態は不問にするわけにはいかないぞ。私の指示を明確に無視したんだからな。罰として減俸三カ月────いや、それくらいでは示しが付かないか。その上でさらに、今月の分は無給とする。いいな」
厳しい処分に兄は息を呑んでいる。だが、それ以上は何も逆らわず、おとなしく納得したようだ。
「それで、貴史。相手のお嬢さんはどんな子だった? お前の印象でいいから聞かせてくれ」
ようやく気を鎮めた父が再び兄に尋ねると、兄は考え込みながらポツリポツリと話し始めた。
「そうですね……私が話した限りでは、なかなか賢そうな女の子でした。今どきの高校生らしくなく礼儀正しいですし、言葉遣いもとてもきれいで大人びています。こちらのちょっとした表現にも注意を払っていて、その後に私が食い違ったことを言うと、すぐさまそこを追求して来るんです。事故で心身共に痛めつけられた直後の少女とは、とても思えませんでした」
「…………」
「それにこう言っては何ですが、非常によく頭が回ると言いますか。あの誤解も、私が『マスコミ』『補償』という言葉を出したとたん、たちどころに『お金で黙らせるつもりなのか?』と言い返して来たんです。普通、あの年頃の少女が、一瞬にしてああいう結論に達するでしょうか。初めは単なる早合点かとも思いましたが、今考えるとそれほど単純な話ではないような気もします」
「……なるほど」
頭が良く、口が達者な少女。二人の話から僕が受けた印象は、簡単に言えばそういったところだった。高校一年生なら僕の一つ歳下ということになるが、クラスの女の子たちの顔を思い浮かべてみても、あまり該当する存在はいない。もっとも、僕が知っている女の子はみな、いわゆる上流階級に属する娘たちだ。今回、事故に遭った少女とはおそらく、育った環境がまるで違うのだろう。
それから一週間ほどが経った頃、父が久々に満面の笑みを浮かべて帰ってきた。
あの事故被害者の少女を東京へ呼び寄せ、父が全面的に支援して治療に当たらせることが決まったらしい。そして退院後は、僕が通っている星城学園へ編入できるよう取り計らうつもりだ、とも。どうやら父は彼女と無事に和解し、しかも相手を相当気に入ってしまったようだ。
「あそこなら秋からでも入学できる。もともと頭のいい子だから、試験も問題なく通るだろう」
「星城に入れるつもりなの? 本気で?」
僕は最初、耳を疑った。相手は一般家庭の女の子だ。それをうちの父が支援している、なんて噂が流れれば、あの学園ではまず、無事には済まない。学校中からの好奇の視線はもちろん、下手をすればいろいろとちょっかいを出されて、潰されてしまうことだってあり得る。
「和樹、お前の言いたいことは解るよ。だが、夏希さんならたぶん大丈夫だ。あの子なら、たとえ何があっても自力で切り抜けられるだろう。それだけの心の強さを持った娘さんだと思う」
「ずいぶんとまた気に入ったもんだね。そんなにいい子なの?」
「普通の意味での『いい子』とはちょっと違うが、なかなか面白いお嬢さんだよ。私とも堂々と渡り合っていたしな」
そりゃお父さんなら、どんな人だって自然に喋ってくれるだろう。社会的な立場とは裏腹に、うちの父はとにかく人当たりがいい。見た目の良さ、穏やかで誠実な人柄、明るく人懐っこい笑顔。あれでよく大企業グループの会長が務まるもんだ、と常々不思議に思うが………うちの父を嫌いだと言う人に、僕は未だかつて一度も会ったことがない。
五月末のある快晴の日、彼女はついに東京の病院へと転院してきた。
その直後、僕は父から一つの依頼を受ける。病院で暇を持て余した彼女が、編入試験のための勉強を始めたそうで、僕に去年のノートを貸せ、というのだ。驚いたことに、どうやらその子は秋クラスではなく、春クラスへの中途編入を狙っているらしい。
「無理だよ、そんなの。だって、高校の授業は全然受けてないんだろう?」
「私もそうは思うんだがな。それでも夏希さんは、やれるところまで自力でやってみたい、と言っている。あの意気込みなら……もしかすると判らんぞ」
「そんな甘いもんじゃないと思うけどね。一応、星城は進学校で有名なんだし」
セレブ校にしては珍しく、うちの学園はカリキュラムがかなり厳しい。寄付金の額によって点数や順位を考慮してくれるような、エセ有名校とはわけが違うのだ。名家出身者の中でも優秀な奴らばかりが集まっていて、男子ほどではないが、女子だってそれなりに学業に励まなければ、とてもやっていけない。
「さすがに教科書だけでは辛いだろうから、お前のノートを貸してあげると言ったんだが……和樹、お前まだ持ってるよな、去年のノート」
「まあ一応、あることはあるよ。それだけでいいの?」
「ああ。お前に即席の家庭教師を頼むかとも思ったが、それは本人から断られた。そこまで迷惑をかけたくないそうだ」
「へえ……何だか変わった子だね。僕と顔を繋ぐ絶好のチャンスなのに」
自惚れるわけではないが、秋本という社会的地位が高い家の息子として生まれた僕には、それなりに女の子たちが群がってくる。いわゆる「お近づきになりたい」というやつだ。そういった鬱陶しい発想からはまるで無縁の少女。
僕は初めて、彼女に対していささかの興味を覚えた。
「判ったよ。それじゃすぐに出しておこう。他に要望は?」
「特にないが……ああ、一学期の分がどこまでなのか、ノートに印をつけておいてやってくれるか? 試験範囲が判らないだろうからね」
「それもそうだね。了解」
僕は早速、去年の全教科のノートを引っ張り出し、ちょっとしたイタズラ心から範囲を示す書き込みをした後で父に渡した。
そのまま、特に何ごともなく梅雨の季節が過ぎて、盛夏が訪れた。
今年の夏は暑い。梅雨入り、梅雨明け共に平年より早かったせいか、ジリジリと続く暑さがよけい身に堪える。病院の少女はギプスも取れてようやく歩けるようになった、とのこと。この酷暑の中、連日厳しいリハビリに挑んでいるらしい。
少し前に、貸したノートはすべて父を通して返却されてきた。丁寧な手紙が添えられ、ノートの記述が判り易くてとても参考になったこと、内容はすべて書き写したので早めに返すことにしたこと、そして────「ご忠告の通り頑張りました、適当に。ありがとうございました!」という言葉を最後に結ばれている。
なかなか面白そうな子だ。できれば、学校が始まる前に一度会ってみたい。
一月後に、図らずもそんな機会が巡ってきた。
八月二十二日は彼女の誕生日だという。東京へ来てまだ間がなく、家と病院しか知らない彼女のために、父と母がささやかな誕生祝いの集まりを催すことになったのだ。僕にもぜひ参加するように、とは母からの圧力である。
誕生日当日、夕方家に戻ってみると、噂の少女が居間で両親と談笑していた。
「初めまして、八木沢です」
はきはきとした明るい声。動作こそまだぎこちないが、右腕を覆う広範囲の包帯を除けば、事故の痕跡は少なくとも見た目には判らない。思っていたより背の高い女の子だった。百六十二、三センチ、といったところだろうか。涼しげで仕立ての良いワンピースに細い身体を包み、化粧やアクセサリ類は一切身につけていない。このあたりも、僕の良く知る娘たちとはかなり違う。
にこやかな笑顔は、人好きのする雰囲気に溢れていた。髪の毛を中途半端に長くしているが、おそらくは退院してからまだ切りに行ってないんだろう。大きな目ときめ細やかな白い肌。なかなかの……いや、かなりの美少女だ。
だが、そんなことよりも────僕を驚かせたのは彼女の目だった。
明らかに、僕を冷静に観察している。こいつどんな奴なんだろう────そんな言葉が聞こえてきそうな目つきなのだ。これも自惚れと言われればそれまでだが、普通、僕に初めて会った女の子たちはみな、とたんに目を輝かせ、嬉しそうな顔をする。俗に言う、『恋する乙女』の表情。父と母の顔を見てくれれば、その理由は明白だと思う。いくら友達連中から贅沢だと言われようと、見た目だけでポーッとなられたって、それがたび重なれば嬉しくも何ともなくなるものだ。
夏希さんはまったく違った。なぜか解らないが、僕に見とれるどころか、むしろ警戒するような気配が強く漂っている。────僕、初対面の君に何かした?
食堂に移動する際にそのことを本人に言ってみたのだが、
「それは大変失礼しました、秋本先輩」
ニコリと微笑み、バッサリ切り捨てられておしまいだった。
食事中の話題は主に、夏希さんの編入試験のこと。秋クラスに入りたくない理由を尋ねると、両親の前だから言葉を濁してはいたが、資産や家柄ばかりを気にする連中に嫌悪感を抱いていることは明らかだった。だがもう、その理由は通らない。秋からの君は、まさにその一員として見られることになるんだよ。
実際、その日の昼に会った学友たちの間では、彼女の噂で持ちきりだった。あの秋本聡一郎が、孤児の女の子を支援してるんだって? どんな子なんだよ。お前、まだ会ってないのか? 星城に来る予定なんだろ? 秋本からの援助を受けるってことは、いずれは養女にでもなるんじゃねーの。お前んとこは男だけだから、そうなったら政略的にはすごく有利になるよな。それとも秋本氏がそんなに気に入ったんなら、もしかしてお前の婚約者にでもする気なんじゃねえ?
はっきり言って、うちは国内の資産家の中でもかなり有力な家の一つに数えられている。家格や血筋以上に、父個人の人望と、それに秋本という大企業グループを順調に発展させて行っていることが大きい。だからこそ、その権力や財力を恐れてひれ伏す者もあれば、こういった根も葉もない噂話が一人歩きしてしまうことにもなる。友人の遺児に対する単なる厚意だとか、そんなお綺麗なたわごとが通る世界ではないのだ。
「でも君はもう、その『金持ち』側の人間じゃないか。うちの父がバックに付いてるんだからね」
だが。僕のその一言に、彼女が示した反応は激烈だった。
隣の席に座った僕をまっすぐに睨みつけている。その目の中にあるのは、先ほどまでの社交的な快活さからはほど遠い、すさまじいまでの怒り。僕は一瞬あっけに取られ、その目の光に気おされて押し黙る。
「私はあなたの言うような『金持ち側の人間』ではありません。今もただの一庶民です」
────いや、本人がいくらそう思っても、周りの連中がそうは見ないんだよ。
僕としてはただ、そのことを忠告しただけのつもりだった。決して彼女が欲張りだとか、つけ上がっているとか思ったわけではない。何でいきなり、そこまで飛躍するのか。僕にとってはまさに、青天の霹靂みたいなものだ。
そのことを言おうとしたとたん、黙って聞いていた父に止められた。忘れていたけど、今日は彼女の誕生パーティーなのだ。確かに、その場で当の本人を怒らせるようなことは、礼儀に外れた行為だっただろう。
僕は素直に謝ったが、どうも上手く通じたとは思えない。
それ以降、夏希さんの僕に対する態度はすっかり変わってしまった。両親に対しては変わらぬにこやかさなのに、僕には非常に冷たい。相変わらず言葉遣いだけは礼儀正しいが、妙に他人行儀なのだ。だいたい、『秋本先輩』ってのは何なんだ。まだ学園への編入が正式に決まったわけでもないのに、ひとつしか違わない女の子から先輩呼ばわりされる理由がわからない。何も、社交界に出入りする少女たちのように『和樹様』なんぞと呼んでくれ、とは言わないが……もうちょっとは親しみのある呼び方をしてくれたっていいじゃないか。
得体の知れぬかすかな不満が積もり積もってゆく。それらすべては行き場のないまま、玄関先で僕は再び、彼女から冷たく切り捨てられてその夜は終わった。
「では失礼します、秋本先輩」
最後に向けられたひと睨み。雷の如く鮮烈な瞳の光。
顔だけは綺麗に笑っているのがまた恐ろしい。
その夜を境に、僕は八木沢夏希という少女のことが頭から離れなくなった。