表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/38

6,残された者

『菓子作る神官』『祭りの神官さん』等の異名を持つ勇者(笑)、楽隠居状態でこの地に根付いているけど色々と柵があって体が開くということはない。もっとも誰かしら彼の周りにいるのであるのは彼の人徳か監視目的か?

「おにーちゃん、今日はどうするの?」

「神官さん店に出す菓子の確認お願いします。」

「しんかんさーん、これなんてよむの?」


『神官さんの菓子教室(通称)』を開店する準備を整えあとは弟子や養い子達に丸投げする。彼等の食い扶持は自分で稼がせる。

教師であり父親であり・・・・・・・・・・・・・・・雇い主だったり色々な立場であるから呼ばれ方も

「師匠!」

だの

「親父!」

だの

「店長!」

だの

「神官さん」

だの

「ぱぱー!」

店員達(子供達)は色々な呼び方している。


一つの存在であっても様々な面があるということか。今日から暫くは「おにーちゃん」が加わるわけであるが。長い年月が過ぎてそんな呼ばれ方をするというのは照れくさくもあり嬉しくもあり表に出さないが懐かしさもある。思わず若い時を思い出してしまう。

思わず目を細めて笑みを浮かべているとかまってほしいのか三毛猫が


うなぁ?


と一声鳴く。

すり寄ってくる猫を抱き上げながら子供達の仕事っぷりを見る。幼い子も年長の子もそれぞれに自分のやるべきことをしていて、彼の出番はない。そろそろ表舞台を譲るのも悪くないかなと思っていたりいなかったり。

一から教えながら子供たちを仕込んできた正しく『神官さんの菓子教室』

「俺としては『創菓学会』とか『腰回りの御伴』とかの店名が・・・・・・・・・」

そこ、危険な店名はやめろ!って言うか地の文に茶々入れするのは礼儀に反すると何年言い続ければ理解するのだ!


「地の文ってかまってチャンじゃなかったの?」

「地の文に突っ込みいれられるようになって一人前とか」

「突っ込みいれないとかわいそうだって文芸神様が言ってたね。」

「「「うんうん。」」」


おいっ!勇者(笑)お前子供等にどんな教育施しているんだ!後、文芸神、おめーは神域から出てくるな!


地の文、少し落ち着け。(by分岐神)


失礼いたしました。

勇者(笑)の店名の命名は色々な意味でひどすぎる。態々定期的に気が向いた看板を作成依頼しているから余計に悪い。それだけの収入も財産も持ち合わせているのが厭らしい。『腰回りの御伴』なんて看板を立てた途端に客足が激減、それ以前にその部分が気になり始めている女性陣から本気の殺意を向けられて子供等涙目。看板職人もご婦人達の八つ当たり対象になったのは避けられぬ結末であった。思い切り菓子を手に秤に乗って悩んでいる女性の姿を描いたのだから当然と言えば当然かもしれないけど。その看板はと会えう好事家の手にわたって収集物の一つとなる。出来は良かったらしい、出来は(笑)


「あの時は店の入り口のそばにはかりおいていたりしたのが余計に悪かったんじゃない?」

「あれは仕入れの粉を計るためにものでしょう。ちょっと作業場におけなかったからそこに置いといただけなのに。」

「お前か!あれ人一人分の重さも量れるから余計に殺意向けられるだろうが!『あたしが肥ったとでも(略)』」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・置いといたのが一日だけだったんだけど・・・・・・・・・・」

「その日に某男爵夫人と某伯爵令嬢達が来なければよかったんだが・・・・・・・・・・・」


お前ら地の文に(略)!

補足するために記すとその時は淑女に対する侮蔑的行為ということで勇者(笑)平謝りである。男性陣はその辺の単純な理由は理解しているのだが怖くて手を出せなかった。いや、ここは手を出さないのが正しい。その怒りに姐さんとかも混じったのであるから彼に勝ち目はない。むしろ生きているのが不思議である。


「実際の話、お詫びに作った菓子で女性陣が軒並み増量したのは看板に偽りなしと言ったところうか?」

「ぼく達太らないよねー。」

「そりゃ、、動いているし働いているから。女騎士ママなんかバクバク食べているのに細いままじゃないか。」

「成程、そうなると神官さんは?」

「味見のせいじゃない?」

「ぼくらも気を付けないと・・・・・・・」

「所で『減量殺し』と名付けている菓子があるんだけど・・・・・・・・・」

「日持ちはしないんだが一番の売れ筋なんだ・・・・・・・・・・他で食べられないとか・・・・・・・」

「その減量をぶち壊す!」

「壊さなくていいから、そんなことしようとしたのがばれたら命に係わるよ!某騎士爵令嬢とか某伯爵令嬢とか・・・・・・・・・・ここに来るたびに親の仇を見るような眼で睨んで悩んで食べるときだけ綻んでその後で後悔した様な顔をしているんだから・・・・・・」


子供達、解説風に暴露しなくていいから。


本当に肉の身という物は不便な物だな(by冥界の案内人)


猫を抱いたままの勇者(笑)この分ならば大丈夫だなと出かける準備をする。彼は菓子店の経営者ではなく神官なのである。誰も彼も彼を町の名物菓子店の店主としてみているが本業は神官なのである。店主の合間に神官をしているわけではないのである。収入が菓子店が大半だとしても彼は神官なのである。

奥さん達も姐さんが麦酒を醸して生計を立てているし、女騎士も国からの年金に加えて令嬢向けの剣術や礼法の講師として身を立てている。


「おにーちゃんどこ行くの?」

死霊っ子(元)こと遅き約束が尋ねる。

「今日は町をぶらついて巣立った子達の様子を見ておこうかなと・・・・・・・・・・・・・」

「仕事は大丈夫なの?」

「子供達に任せておけば大丈夫だろう。独り立ちしている通いの店員()もいるし。」


くどい様だが彼は神官なのである。楽隠居状態の菓子屋の親方ではないのだ。

「ちょっと、町に行っているよ。」

「あいよ、帰りに芋が切れているから芋と玉葱を買っといてちょうだい。」


神官の役割を果たそうとしているのに散歩に行くと思われている。ついでに買い物を頼まれる、もう一人の奥さんからも同様のお願いをされる、彼の家庭内階級は・・・・・・・・・・・・・奥さん達より下らしい。

財布の紐までは握られていないのは幸いか・・・・・・・・・・・・




神官こと勇者(笑)移動中・・・・・・・・




「おにーちゃん、市の神様のところだね。」

「たぶん今頃は俺の養い子の一人が買い出しに来ているだろう。」


昨夕神官様のありがたい説法(笑)が広げられた市に向かう一行。死霊っ子(元)やら玉章庶子を初めとする手の空いた孤児っ子なんかもついてきている。荷物持ちやら雑用をして小遣い稼ぎをしようとしたところだろう。社会的地位もあるのでお付を一人くらい雇うものである。これは雇用の創出に富の循環・・・・・・・・・という意味合いもあるのだが見栄えの問題である。玉章少年や死霊っ子(元)ならそうなのだろうがどう見ても子供の引率・・・・・・・・・・・・・・面子の増減変動はあれども町でもおなじみの光景となっているのでほほえましく見守られている。


「ねぇ、おにーちゃん。どうせならば昔の姿に戻ってよ。」

「あれ疲れるから勘弁してほしいんだけど。」

「えー、かっこいいじゃない。今の老けて剥げて太った姿より。」

「ぐはっ!」


勇者(笑)の言葉の刃が突き刺さる。


「神官様しっかり!傷は深いよ!」

「それを言うならば傷は浅いぞしっかりしろ!だろうが弟分。」

「上の兄者、この場合は安心しろ姐さんママと女騎士ママは俺が面倒見てやるぞ。じゃない?」

「そっちは普通に老後の面倒見る羽目になるからいうことじゃないと思うけど・・・・・・・・・」

「おにーちゃんたち、パパの心配しないとだめじゃない!いくら太って足が臭くってママたちに頭が上がらなくても神官パパは世界で一番素敵な人だわ。あたしパパのお嫁さんになってもいいかも、若返って痩せて髪の毛があれば・・・・・・・・・・財産もあるし地位もあるでしょ、若い時の姿だったら少々頼りない外見だけど許容範囲だし・・・・・・・・それにしても死霊っ子(元)おねーちゃんはひどいよ!人を見かけで判断しちゃいけないと教わってないの?年取るのは仕方ないじゃない、はげるのだってちゃんと髪を整えて見苦しくしていないじゃない!太ってしまっているのは・・・・・・・・・・・うん、あたしの作ったものの味見もあるから強く言えないけど・・・・・・・・神官パパはおねーちゃんに見てくれをどうこう言われる筋合いはないの!」

「くっ!」


死霊っ子(元)にも言葉の刃が刺さる。

「確かに神官パパの見てくれがというのはひどいよなぁ・・・・・・・・・」

「師匠は行いは立派な方ですから非難される筋合いは・・・・・・・ないと思いますが。」

「ぐっ!」


「俺それよりも妹のさり気に神官パパにもひどいこと言っている事実のほうと玉の輿発言のほうが怖い・・・・・・・・・・・・・」

孤児っ子のおにーちゃん(荷物持ち予定)は聞き流しておけばよいものを聞きとめてしまったようだ。女性不信にならなければよいけど・・・・・・・・


女性がだめならば男だって・・・・・・・(by芸術神)


それは違うだろ!

そんな子供たちがぎゃんぎゃん言っているうちに勇者(笑)は

「ひどいなぁ、私はそんな風に思われていたなんて・・・・・・・・・・・・・・年老いた姿は厭かい?」

「ううっ・・・・・・・・・・・おにーちゃんは年とってもおにーちゃんなのはわかるんだけど、できれば昔の姿のほうがいいかなぁ・・・・・・・・・・昔に戻ってみたいなぁ・・・・・・・・って・・・・・・・」

死霊っ子(元)も自分でひどいことを言った自覚はあるのか言葉が詰まっている。それを見てくすりと笑った勇者(笑)は


しゃらららん★


見せ掛けだけの若返り呪法をつかうのである。見た目は若返っても節々の痛みとか糖尿まで治るわけないのであしからず。

「やっぱりおにーちゃんはこの姿でないと!」

「神官パパ、お嫁さんにして!」


年頃の娘さんたちが飛びつくのははしたないですよ。

若返った姿を見た死霊っ子(元)や孤児っ子娘が勇者(笑)に飛びついたのだがその様子を見ていた市に野菜を売りに来た地主のおっちゃんが


「あれまぁ、神官さん飲み屋のねーちゃん落すために若返る魔法完成したんかい?」


その一言を聞いた死霊っ子(元)は愛しい『おにーちゃん』を台所にいる黒いあいつを見る目で見る。

「そういう地主さんも習得してたじゃないか!」

「はははっ!おらよりも嫁に出た上の娘が食いついてきてよぉ。教えないと叩きのめすって・・・・・・・親に向かってやることかよ。」

「あの南の麦農家に嫁いだ娘さんか・・・・・・・・・・・・・・・・・・気が強いからなぁ・・・・・」

「旦那に披露するんだとさ、あれにもかわいいところあったんだなぁ。」


苦笑しながら娘夫婦の内情を暴露する地主に苦笑せざる得ない勇者(笑)。

「そういえば神官さんのほうはどうだったんかい?飲み屋のねーちゃん。」

「ああ、キャーキャー言われて調子に乗って教えたら酒場のねーちゃん達意地でもモノにしてさ、実年齢がわからない恐ろしい魔境が一つ出来上がった・・・・・・・・・・・・・・・・もう、あの店いけないかも。」


ちょっと考えてみよう、きれいなねーちゃん口説いてみたら自分の祖母と同じ年だったとか孫までいるとか言われたら立つだろうか?


何が立つのだろう?(by文芸神)

ナニだろうね。(by性愛神)


神様たち下品です。

余談となるが若返りの冗談魔法を習得した飲み屋のねーちゃん達、普段もと気合を入れて使い続けたところ個人保有魔力が増大し国から勧誘を受けたなんて冗談みたいな状況になるまであと数年。

そのころには口説いたのがばあさんだったと枕を濡らした男性諸氏の数がそこそこの数となるのは業の深いことであるといっておこう。この冗談魔法を広めた事で妙齢の女性達が魔力増大を目指し始めるのはどうでもよいことである。勇者(笑)は騙されて男性諸氏から微妙に恨めしい視線を受けたりするのだが

「綺麗な女の子は嫌ですか?」

という問いに沈黙せざるを得ないのだった。

因みにこの魔法の作成者は【聖徒王国】の某宮廷魔術師である。彼は後に

「あの魔法は世に出すべきではなかったのかもしれない・・・・・・・・・・」

と漏らしている。



それはさて置き、市にて頼まれたものを手に入れると家の方に配達まで頼む勇者(笑)。単純に荷車を持っている連中にそのまま配達まで頼んだ方が楽だからである。手ぶらで街を散策する彼が向かうのは彼の養い子達が独り立ちして生活している彼等の戦場である。


死霊っ子(元)は飛びついたままで嬉しそうに摺り寄せている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ