19、そは恐ろしき業なれば
心無い一言というものは色々と失われる物である。互いの関係といい、周りの評価といい、財布の中身といい。
勇者(笑)は妹分におばちゃん発言したことに総すかんを食ってしまい、誤り倒す羽目となる。そうして許しを請う条件として彼が若返って彼女を街に遊びに連れて行くことである。
若返るのは疲れるが何とかなる、街に連れて行くのも………だが、女性を連れて歩くとなるとどうしても出費が………これは彼の自縄自縛である。
そして悲しかったのが彼の奥さん達はにこやかに彼を送り出した事である。連れ添って結構な年月がたっているのにほかの女性と出かけるのに嫉妬の一つや二つ、焼かれたらそれはそれで困るのだが…………
「はいはい、かわいい妹分の機嫌とってらっしゃい!」
「姐さん……」
「勿論、後で私たちも個別にかわいがってもらえるわよね。」
「浮草……」
「じゃぁ、おにーちゃん借りてくね!」
菓子作る神官こと勇者(笑)18歳バージョンをつれて、死霊っ子(元)こと遅き約束は街に繰り出すのである。なんかその後で奥さん達にも同じ待遇で奉仕しなければならない羽目になっているのはなぜだろう?
そりゃ、奥さん達の間で優劣つけると後が大変だからだよ。そもそも一夫多妻制度において夫の責務というものは妻子を恙無く養い率いる事であって家長として誰一人理不尽に合わせることは宜しくないのだ。事実婚であれ契約婚であれ複数いる妻に条件に優劣をつけるのは互いの嫉妬と優劣間から家庭を崩壊する原因となるだろう。婚姻順位とかその他諸々で順番をつけるのは仕方ない面があるのかもしれないけど待遇で差をつけてはいけないのである。最近になるとそれをめんどくさがって一夫一妻で済ませるヘタレが多くなってきているんだが……それ以前に女の方が強くなってあんたは私の物とばかりに一夫一妻契約を……(byどこぞの唯一神)
えっと、異世界からしゃしゃり出ないでください。
「俺は物かっ!」
とは言え、死霊っ子(元)に腕を捉まれては苦笑する他なくご機嫌取りに終始するのである。
町を歩いていると町の名物神官さんであることを理解されてなくて死霊っ子(元)ちゃんに彼氏という話をしてくるおばちゃん連中の多いこと多いこと。
これは火に油ですわね(by恋愛神)
「ねーねー、おにーちゃん!あれが欲しい!」
「そんな無駄遣いは………」
「やっぱりあたしがおばちゃ……」
勇者(笑)は戦いに負けた。何の戦いなのかよくわからないけど……
そんな二人の様子を街の連中はほほえましく見ているのである。
そんなこんなで大好きだったおにーちゃん(過去形)に散々奢らせて溜飲を下げた死霊っ子(元)は満足げに彼にまとわりついている。でもなんで過去形?
「だって、おにーちゃん年取っているしデブデブだし禿げているし………お金持ちでもちょっとねぇ……」
そ、それは色々ひどいと思うのだが……それはともかく、地の文に(略)
「そういえばおにーちゃん仕事は大丈夫なの?」
「悪相卿も少しくらいならば仕事できるくらいには復帰しているし、各国の外交官も使えば楽になる。それにうちには遊学に来ている唄鶯がいるだろう。あれも王族だから後学の為に色々経験させておくのは悪くないだろう。縁もつなげることができるし……」
「おにーちゃんなんだかんだ言って仕事から逃げてる?あっ、あれも欲しい。」
「欲しいのを紛れ込ませるなよ。実際の話し悪相卿に復帰して欲しいという声が多くてな、少しずつ慣らしている。後継を見つければ楽なのであろうが誰がなるのやら、【狭間】からも彼の縁者が来るそうだし……」
「おにーちゃん【狭間】は生まれつきの怠け者集団だよ。おにーちゃんだって知っているでしょう。」
「【狭間】の官僚団の芸術的なまでの省力は彼等自身の怠惰願望をこれでもかと体現しているな、それでもっと仕事ができるはずだと仕事が増えていたりしているのは笑い話としては質の悪い話だよな。」
「孤児っ子文官集団が仕事を受け持ってきているから官僚団自体はそれほど業務過多にはなっていないんだけど暇になれば宴会ばかりしているだろう………そっちで見た目が悪いって宴会する暇がないくらいに仕事させてやれとなったら今度は仕事を押し付ける宰相府と王族に終わらせた仕事が大量に…………国家としての仕事が早く的確なのは良いのだが、そのうち内乱とか生きないか心配だ。」
「どっちかと言うとさぼりと抗議行動じゃない?冥界の受付していた時に『ぶはははははっ!王族の化粧費を俺の小遣い準拠にしてやったぜ………って一日銀貨一枚って俺伯爵だったよなぁ……』ってぼやいてた元官僚の死霊がいたし。銀貨一枚って普通に働き手が稼ぐ金額だよねぇ……」
「それ以前の伯爵の小遣いが一日銀貨一枚だけっという方が………悲しみを誘う。ちょっと飲みに行くだけでも銀貨10枚位消えるからなあの階級は………」
「【酒盛市場】で飲んでいたのってもしかして………」
「言ってくれるな、銅貨30枚もあれば存分に飲み食いできるからあそこはあそこで良い物だ。神々だって認めてる。」
貴族様の懐事情を知ると少々悲しくなってくる。寧ろ王族の化粧費をそれで押さえるっていうのもなんだかなと思えてくる。
因みに勇者(笑)のお小遣いは一日銀貨2枚以上である。最も彼はそんなに無駄遣いしないので懐にはそこそこの金額が……
正確には個人支出であって伯爵家にはそれなりに蓄えがあります。(by狭間地方担当地方神)
「おや、遅き約束嬢ではないか。隣りにいるのは君の良い人かね?」
「おにーちゃん、じゃなくて菓子作る神官ですわ。」
ぼわぼわ
その瞬間、いたずらっ子が見せるようないい笑顔で勇者(笑)が本性(デブ親父バージョン)を露わにする。
「一度くらいは妹分に当時の姿で付き合ってやるのも礼儀かなと……」
「知っておるぞ神官殿、この愛らしいお嬢さんに対して年増扱いして激おこぷんぷん丸ムカチャッカファイアー状態にしたと言うのは聞いておるぞ。」
「その情報の出どころと言うよりもその表現の出どころが問題な気がするのですが……」
「情報についてはお前さんの所のチビ共が笑いながら話していたな、赤巻髪、青巻髪、黄巻髪の三つ子とか……」
「あの三馬鹿か!」
「まぁ表現は『名前を出してはいけないあの聖女』とかあの取り巻きの持ってきてくれた娯楽小説から面白そうだなと思った表現を……」
「それギャル語だから、おっさんが使っても可愛くないから……」
「な、なんだと!あの面々が使っても」
「うん、可愛くないし年を考えろ婆と……」
「うむ、我も無理してそんな言葉を使ってしまって一寸恥ずかしいといったところか。」
「まぁ、笑い話の範疇で」
「そういうことで」
お互いになかったことにした。
「そういえば神官殿、【啓蟄】からあの団子鼻の若者………なんて名であったかな?彼の婚約者が国元から彼に助力せんと向かっておるぞ。あの若者は若いが危うい所なく諸々を回しているのは見事である、母国なくば我が王に推挙したいと思う傑物なのであるが………」
「彼は王になり件の婚約者嬢にふさわしくありたいと願う正しく間違える愚か者であるからそれはやめておいてほしい。今縁を結んでおけば彼が王になった時に………」
「おおっ!神官殿それは先を見越しての縁結び!【啓蟄】を軸にして外交網を作るとは………神官殿は何年先を見越して行動を………」
「なに、私が生きてられるのはせいぜい20年ほどだからその辺まで何とかなれば………あとは子供たちに任せますよ。」
「……………」
「何か言いたそうであるな。遅き約束嬢。」
「なんていうかおにーちゃんが20年かそこらでくたばるのが想像できない。なんか神様脅して千年でも生きていそう。」
「ぷっ!」
「ふむ、そうかならば可愛い妹分のためにその期待に応じないといけないな。」
応じなくて結構です。
貴族と神官の姿を見ていたの方の貴族たちもわらわらと寄ってくる。この時点で死霊っ子【元】の甘い一時(棒)は終わった。
「桃笑王族の善き若者の愛しき人か。」
「我が功は得られずにいる事は幸いである。と嘯いているのに愛しき人のために相応しくありたいと功を得んとしている若者か。あれは善き者ぞ。己の才を知っていて振るわれぬ事を喜んでいる【抜かれぬ神剣】の逸話を思い出す。戦術の才を語り合った際見事であったぞ、そしてそれが振るえぬ事を悔しがるもそれによる害を知って悔し涙を流しながらも自分の活躍の場がないことを喜んでいるふりをしている優しき馬鹿だ。儂は彼が好戦的な人物でなくて安心したぞ。戦略的にはともかく戦術的には敵対したくない。戦術をして戦略をひっくり返す逸材ぞ。これで好戦的ならば暗き手を使わねばならぬであろうぞ。」
「その婚約者である夜鳴鳥であってもそこらの娘っ子と同じと考えないほうがよろしかろう。」
「何か知っておるのか神官殿!」
「かのご令嬢は優しき御仁よ。国にある道の子(孤児の別称)を己が屋敷に迎え入れては慈しむ優しき乙女よ。【啓蟄戦役】の時より数十年、国は変わりつつあるが零れ落ちるものがある。その零れ落ちた子を弟妹を慈しむが如く、否、己が子と同じように慈しみ愛する優しき乙女ぞ。私は彼女と敵対するというならば義無きとあれば敵対する気が起らん。少々子供等に対する愛情が強い気がしない気もしないでもないが………」
「おにーちゃんがそれを言うことできるの?」
「かのご令嬢は兎も角、神官殿も人の事を言えるのかな?」
某貴族の突込みは正論である。勇者(笑)こと菓子作る神官の教えは『善き飯、善き友、善き寝床』である。彼はその教えは自分のみならず他者にも押し付ける節がある。
「おにーちゃんは知り合いも含めて人の事言えないね。」
死霊っ子(元)の言う事は正しい、【聖徒】においては理不尽を行う孤児院の職員を前にして大理不尽を行い、旅路の途中においては一つの涙を掬い取って現地の不正を…………これは前【神殿協会顧問団】の一員であった『殴り光明』と呼ばれし【光明神】の愛しき神官がやったことであるから違うとして、【極北】にては数多の子供たちの師として有用なる教えを垂れ、【狭間】においては【荒野】の子供達に幸いを教え、禍にあった子供達を弟妹を慈しむが如くに保護する。
彼が言うには
「不幸なガキを前にしてうまい飯が食えるか!」
彼のその行動は世界各地で露わになる。【西方平原国】では弟分の勝負事を疎かにして道の子を保護し、時の王から彼等に対する恩赦を得ている。その保護された孤児っ子たちの大半は幸いなる道を進んでいる。その子孫の一つは神々ですら唸らせんと父母と同じ境涯の孤児っ子に対して慈善活動をしている。
彼の言う事は最底辺の孤児っ子ですらこんな旨い物を食えているんだ神々羨ましいだろうと悪役めいた笑いをしているのでその地の人々は『はいはい、ツンツン』と笑っているのであるが。
菓子作る神官といわれる者は子供を飢えさせる馬鹿に対して世界の壁も構わず拉致して幸いというものをはこう言うものだと叩き込んだり、道すがら保護した子供達が悲惨な目にあっていたら原因に対して全力で教え諭すのである。抑えるべき奥さん達は火に油を注ぐ勢いで………
奥さんその一は自ら剛腕を振るい馬鹿に対して子供は慈しむ物という教えを叩き込むのである。奥さんその二は子供に無体する愚か者を紅色の汚泥に変える作業を自ら課すのである。
奥さん達に感銘を受けたとされる集団は力にて正義を教え込むという粗野な価値観でか弱い女性達(文学的表現)の願いを受けて子供達の保護と正当なる報い(自己評価)を存分に与える簡単な肉体労働(彼ら基準)をするのである。
奥さんその一(姐さんとか金色の呻りとかと後世に記されている)は【極北】の戦士達を拳で従えて子供等に馬鹿をする愚か者に鉄拳制裁をする。因みに自ら拳を振るうことは数例しかない『あたしはか弱い女だよ………』それに対して突っ込みを入れた某神官の不幸は内臓が損傷するほどであったという。
奥さんその二(浮草の君とか)は苛烈であった。現地の騎士団に対して民の守り手なるかと問いかけた上で自らの騎士爵位を前に出して【聖域保護法】を宣言して敵対戦力を叩きのめす。
旦那としては子供が大丈夫ならばなぁなぁとと済ませようとしていたのだがあまりに血の気が多い奥さん達と面子を潰されて色々激昂している面々を前にしてやらざるを得ない部分がある。
粗野な【極北戦士団】が素朴な正義感を基にした暴力で子供を守ることを教え込んだり、偏屈な【荒野騎馬戦士団】が眷属に対して守るのは長たる彼らの責務ということを物理経済という両面で教え込んだり、子煩悩な【魔王領】使節団が自重せずに子供の大切さを教え諭したり、世界の理不尽を前にして憤りを隠せない【砂塵の民】の探索者は現地の王侯に対して拳を振るう。義士好漢が数多ある世界で尻拭いする羽目となっている異世界人は自重せよとかうまくやれと言いながら嬉々ととして後始末に奔走する。因みに見つけて理不尽に対して死体蹴りをしようとしている馬鹿に対しては恩を売った連中をけしかける。むしろ自分が出て行こうとしている。
神々をも唸らせる美味、それを庇護すべき者達と彼等の力強い擁護者達に存分に振舞い与える。ただ、それが彼等と信条を異なる者の前である。
相手からしてみれば激高する敵が十重二十重に連なる陣からこれでもかと美味なると主張する匂いが送り込まれる。士気は上々で凶悪ともいえる相手に自陣の士気は消沈する。異世界からの援軍を用意してもその美味の前には抗う事出来ず降ってしまう。下級の兵やらかき集められている平民徴集兵あたりも美味を求めて降ってしまい美味を前にした愛ある説法で洗脳されてしまうのである。
嗚呼、恐ろしき異世界の神官!その特殊能力『飯洗脳(大嘘)』と飢えたる者(敵)を前にして美味なる物を食べる姿を見せつける極悪な嫌がらせ。彼に敵対した者は生きながら餓鬼道の苦痛を味わい、それを知った者は恐怖して彼をこう呼ぶ。【飯テロリスト】と………
「飯テロ言うな!」
「神官殿如何された?」
「大丈夫、いつもの抗議発言ですから。」
「まぁ、飯テロと言うのは間違いではありませんですからな。以前私も旅している神官殿が食事を拵えているところを見ていたのですかが、あの匂いは間違いなく保存食で済ましていた私にとって嫌がらせでしたよ。」
「うむ、判るぞ。私なんて旅の同道を断られて永い間人間の食事という物に飢える羽目に………」
「何で旅路の料理人育てないの?【極北海】だって【旅客船団】には専属料理人居るのに?」
「「あっ!」」
「そうでもおにーちゃんが育てた子達って、野外の食事とかって………」
「一緒に旅した子達ならば野営の仕方とか美味しいご飯を一緒に作ったりとかしていたから覚えていると思うけど、死霊っ子(元)が旅立つ前に一緒にいた雪崩で壊滅した村の子達とか、【極北】の孤児っ子とか……」
「今いる子だと?」
「基本菓子屋と料理修行、読み書きそろばんは基本として………後は興味に合わせて……野営料理も教えておくかと言うか軍とかでもそういうのやっていないの?進軍時の食事情景とか?」
「ふむ、軍に問い合わせて………それよりもそこの遅き約束嬢を旅路を共にしてもらえる方が今現状の埋め合わせとして……」
「この子は預かりものですから駄目ですよ。」
「キャ、抱きしめるならば若い姿にしてよ!」
その後適当な会話を交わして貴族達と別れて家路へと向かう。
すっかり彼女の家ともなっている気がしないでもない神官こと勇者(笑)の『お菓子の家(仮称)』
「なんか色々と需要があるんだねぇ………旅路の料理人って、あんたの真似をする者が出てきてもおかしくないと思ってたけど。」
「旅のごはんって貴族様でも美味しくないの?」
「明日の朝試してみればよいですわ。姐様、明日の朝は彼のごはんだけ旅路の保存食で……」
「何言っているんだい浮草、一人だけだと手間だからみんなの分それにしようじゃない。」
「……姐さん、私は普通のごはんでよろしく。」
「それは自分で作りな、ついでにあたしの分もね。」
「姐さんそれ酷いと思うよ!おにーちゃん、あたしの分もよろしく。」
「おいおい!お前ら酷いだろう!」
「私は子供達に付き合いますわ。」
「優しいなぁ、浮草。私は付き合わないが……」
「おにーちゃん野営料理の説法でもしたら?」
「それは悪くないな、私の教えは『良き飯、良き友、良き寝床』だからな。それに便利な道具の紹介と鍛冶の親方ん所に儲け話を持ち掛けて………」
後日、街の郊外の牧草地(休耕畑)を借りての野営料理教室は意外と好評であった。野営に便利な道具や基本的な道具の使い方ののみならずに出来上がった物と保存食を食べ比べると言った事とか保存食でも一手間かけると美味になると言ったこと………
ただ、彼が憤慨したのは、菓子づくる神官考案の【軍用菓子(檄堅)】をそのまま食べて固くて食えないとしゃぶる飴玉代わりにしていることである。あんななので貴族連中も馬を馴致させる時のご褒美代わりとしか思っていなかったという事実。
神をも屠る彼を前にして彼考案の渾身の作を間違った使い方をして不味いと言う。なんという手の込んだ自殺であろうか?馴致の時のご褒美代わりの事は自身も騎獣へのご褒美として結構な頻度で与えているので人の事は言えない。唯、そのまま食べて固いと食べないのは許せない!
「くけけけけけけけっ!きみたぁち!おいしいたべかたをちゃんとおしえてあげぇぇるぅぅぅねぇぇぇぇぇ!」
ぼくしゃ!どかっ!
「あんた、わざとやっているんだろ。趣味の悪い事するんじゃないよ。」
「我が君、おふざけは程々に……」
「奥さん達が私を大事にしてくれない………」
「おにーちゃんの悪人面は子供がひきつけおこして泣くからやめて!」
「死霊っ子(元)まで………」
へこんで項垂れている異世界人を尻目に彼の大事な女性達は孤児っ子達を使っててきぱきと正しい食べ方を指導するのである。彼と旅していた時は大量に用意があり、嗜好品として、非常食として重宝されているのである。炊き出しにも便利だったり………
そして用意された粥を見て……旅人たちは己の無知を後悔するのであった。
その後、彼の野営食講座(説法)は人気を得て多数の野営料理の心得を持つ者が育つのである。
彼等は多くを旅して多くの料理を作り旅する者達の心身を癒すのである。【旅人神殿】や【商業神殿】、【厨房神殿】【療養神殿】の助力を得て旅人の為の美味しい食事と健康管理の法が教え広められる。彼等は神の教えを説くだけではない実利を以て人々に安寧を齎すのである。
「それ以前に旅路のご飯が美味しいのは助かりますね。」(by旅人神殿の神職にして道先案内人)
「隊商団の損耗が減らしたり士気高揚は大事な事ですね。軍みたいに金食い虫の場合は飯代から減らしたがるけどうちは必要経費ですし。そして現地の商材見つけ出すいい材料です。」(by商業神殿巡回市場監視員)
「旅先で行き倒れられても治療費とかなくて踏み倒し状態になるのは良くある事ですから、予防してもらうのも良い事です。少しは暇になって休みが欲しい。」(by療養神殿の癒し手)
彼等の料理は様々な喜びと騒動を引き起こし、ありつけなかった哀れな者達からは【飯テロリスト】等と呼ばれる事になる。そしてこの街の神官さんの説法場所が【飯テロリスト養成所】なんて笑っていいのかわからぬ別名をつけられるのである。
「飯テロリストって………」
死霊少女(元)は愕然とした。だけどね死霊少女(元)、地の文に対してツッコミを入れるのは宜しくないんだよと言うか君自体【飯テロリスト】じゃない。




